「マサミ!マサミ!遅刻するよ!」
「ふえ…?」
「ほら、もう15分過ぎてる!」
「・・・・・、帰ってきたの?」
「なにいってるの?まだ家じゃないよ。」
あれは、夢?でも、やけにしっかりした夢だった・・・。でもあんなこと、あるわけないっか・・・。
マサミはいま普通に布団に寝ていた。しっかり掛け布団をかぶって。
体を起こす。あちこち痛い。筋肉痛?布団に立ってのびをする。
「うーん…。」
そしてトイレにいこうとすると、
「ちょっとマサミ、なによその靴下!」
「え?」
「真っ黒じゃない!土まみれよ。」
「うそ…。」
ふと見下ろすと、自分の靴下が目に入る。靴下履いて寝ることないのに、今は靴下を履いてる・・・。しかもそれはところどころ、茶色く汚れがついている。裏は全体が土で真っ黒。
「ちょっとちょっと!布団に汚れついちゃったよ!あーあー、どうすんの、これ。」
「ちょっとマサミー!」
友達の非難を受け流し、マサミは自分に起きたことを思い出していた。やっぱり私は夜、森に行った。アオイと遊んだ。間違いない。あれは夢じゃない。この靴下の汚れ。思わず微笑んでしまう。マサミは確かにあそこに行った。布団についた足跡を消そうとバタバタしている友達は気にならず、マサミは暖かな気持ちに浸っていた・・・。
また明日からは普通の生活に戻る。塾に行き、学校に行く。友達と付き合っていく。そんな日常。でもこの森の出合いを思い出すと、いつでも心が安らぐかもしれない。布団についた足跡は、学校の先生が許してくれた。靴下はもちろん、代えた。真っ黒になった方はバッグのなか。これが私とアオイとの出合いを裏付ける。とっておこうか・・・。いや、だめだな。
バスは学校の駐車場を出発した。ふと森の方を見る。いた。木々の合間に白い人影。顔はよく見えなかったが、確かに手を振っていた。足元は・・・、昨日は履いていなかった、白い短めの靴下を履いていた。でも靴は履いてない。そのまま見ていると片足の裏を私に見せるように足を挙げた。黒く土で汚れていた。私のカバンに入っているそれのように。私の真似かな?ほほえましく思った。
「きっと、また来るね。」
バスは山道を駆け降りる。さあ、また明日から頑張るぞ。
おわり