まずは体育の先生に従って、捨てるものを外に運び出す。流れ作業がいいということで、倉庫から体育館の入口まで等間隔に並ぶ。自然と並んだのだか、フユミは倉庫内で、移動距離も長い役割を担うことになっていた。砂や埃がたまった倉庫内をいったりきたりしなくてはならない。
まずは壊れた机から。5年間整理しておらず、数はそれなりにあった。天板がないのや、脚が折れたり、穴が空いたり、劣化していたりと、どれもひどいものだ。先生が机を取り、男の子2人の手を通り、フユミの手に渡る。フユミは机を受けとると、5歩ほど歩いて、階段の手前にいる女の子に渡す。そこからは大分間隔がつまり、歩かなくても渡せる距離になる。どうして私だけこんなに歩かなければならないのか、腹立たしかったが、誰にも訴えられない。机を受けとり、歩いて渡す、また戻る。はい、とか掛け声はくれるが、会話はしなかった。
机の運び出しが終わると、倉庫のなかが大分広くなった。これからは箒で床を掃除する。みんな、友達同士でしゃべりながら楽しくやっているが、フユミは一人で黙々と作業をした。奥の方は埃が1センチほどたまっていたようで、靴下で踏み込むと、ふんわりとして、そのごみが靴下をますます汚していった。靴履いてもいいんじゃないのかな。と思った。
倉庫はあまりに汚なく、時間いっぱいになってもきれいにはならなかった。しかし、前よりは見違えるほどだった。フユミの靴下は逆に、避難訓練のときよりさらに見違えるほど汚なくなっていた。もうこれ以上汚れないのではないか、と思うほど、全体が真っ黒だった。こんな汚ないの履いているの、見られたくない…。かといって、裸足っていうのも…。
「ちょっと、松崎さん、靴下それ、汚な過ぎるでしょ。見てていやだよ。」
「あ、ごめんなさい…。」じゃあ上履き貸してよ、と思った。
「それ、脱いだら?なんか、ねえ…。」
「う、うん…。」
確かに、自分でも気持ち悪くなるほどの汚なさだった。足の裏は全体が黒く、埃がついていた。表も、箒で掃いたときにかかった砂などがついていた。
大掃除まで終わったら、後は帰るだけ。こんな靴下で靴を履けるわけもなく、教室についたら、自分のせきにつき、靴下をそろりと脱いだ。それは埃の塊という表現ができた。臭いもきつく、思わず鼻をつまんだ。靴下はゴミ箱に捨てた。持って帰っても、どうにもならない。そうして、フユミは完全に裸足の状態になった。はじめてだった。教室の木の床は柔らかい感じがした。でもやはりみんなの目が気になった。一人裸足は恥ずかしい…。
席について、足を椅子の下で組み、じっとしていると、隣の子が帰ってきた。
「お疲れ様。大変だったな。あ、裸足になってる。いいじゃん。」
「でも、恥ずかしい…。」
「そう?あまりきにすんな。このクラスの奴ら、思ってるほど、気にしないよ。そんなの。」
「もっと自信もてよ。そんなずっとじっとしてたら、楽しくないよ。俺が紹介してやるからさ。」
「ありがとう…。」
「やっと笑ったな。良かった。」
なんか、体が熱くなってきた。なんだろう、このきもち。ドキドキする。なんで…。
「おい、大丈夫か! 」
「うん、ちょっとくらっとしただけ。」
「疲れたんだな。今日はゆっくり寝とけ。」
「うん、そうする。」
先生が来て、さようならをして、一日終わった。今日は恥ずかしかったけど、出逢いもあった。バイバイも言えた。明日はおはようって、言えるかな。他の子、後ろの子にも話しかけてみようかな。ああ、明日が楽しみだなんて、おかしいな。
靴箱につくと、裸足であることを再認識した。明日は絶対に上履き持ってこないと。また恥ずかしい思いをしてしまう。裸足の足を見てみる。裏はやはり全体が黒くなっていた。ちょっとはらっただけではとれなさそうな汚れだ。こんな足で靴履くなんて…。でも仕方ない。履いてきた靴に裸足のまま足を入れる。ぶかぶかだ。それに、歩くとこすれて痛い。でも我慢するしかない。
家につくと母親が飛んできた。
「フユミ、今日上履き忘れてったでしょ?」
「うん、だから靴下だめになっちゃった。」
「もう…。足、汚れてるでしょ?早くお風呂ないりなさい。」
「はーい。」
「おやつ、今日はメロンよ。」
「やったー!」
ああ、早く明日が来ないかな。
終わり
まずは壊れた机から。5年間整理しておらず、数はそれなりにあった。天板がないのや、脚が折れたり、穴が空いたり、劣化していたりと、どれもひどいものだ。先生が机を取り、男の子2人の手を通り、フユミの手に渡る。フユミは机を受けとると、5歩ほど歩いて、階段の手前にいる女の子に渡す。そこからは大分間隔がつまり、歩かなくても渡せる距離になる。どうして私だけこんなに歩かなければならないのか、腹立たしかったが、誰にも訴えられない。机を受けとり、歩いて渡す、また戻る。はい、とか掛け声はくれるが、会話はしなかった。
机の運び出しが終わると、倉庫のなかが大分広くなった。これからは箒で床を掃除する。みんな、友達同士でしゃべりながら楽しくやっているが、フユミは一人で黙々と作業をした。奥の方は埃が1センチほどたまっていたようで、靴下で踏み込むと、ふんわりとして、そのごみが靴下をますます汚していった。靴履いてもいいんじゃないのかな。と思った。
倉庫はあまりに汚なく、時間いっぱいになってもきれいにはならなかった。しかし、前よりは見違えるほどだった。フユミの靴下は逆に、避難訓練のときよりさらに見違えるほど汚なくなっていた。もうこれ以上汚れないのではないか、と思うほど、全体が真っ黒だった。こんな汚ないの履いているの、見られたくない…。かといって、裸足っていうのも…。
「ちょっと、松崎さん、靴下それ、汚な過ぎるでしょ。見てていやだよ。」
「あ、ごめんなさい…。」じゃあ上履き貸してよ、と思った。
「それ、脱いだら?なんか、ねえ…。」
「う、うん…。」
確かに、自分でも気持ち悪くなるほどの汚なさだった。足の裏は全体が黒く、埃がついていた。表も、箒で掃いたときにかかった砂などがついていた。
大掃除まで終わったら、後は帰るだけ。こんな靴下で靴を履けるわけもなく、教室についたら、自分のせきにつき、靴下をそろりと脱いだ。それは埃の塊という表現ができた。臭いもきつく、思わず鼻をつまんだ。靴下はゴミ箱に捨てた。持って帰っても、どうにもならない。そうして、フユミは完全に裸足の状態になった。はじめてだった。教室の木の床は柔らかい感じがした。でもやはりみんなの目が気になった。一人裸足は恥ずかしい…。
席について、足を椅子の下で組み、じっとしていると、隣の子が帰ってきた。
「お疲れ様。大変だったな。あ、裸足になってる。いいじゃん。」
「でも、恥ずかしい…。」
「そう?あまりきにすんな。このクラスの奴ら、思ってるほど、気にしないよ。そんなの。」
「もっと自信もてよ。そんなずっとじっとしてたら、楽しくないよ。俺が紹介してやるからさ。」
「ありがとう…。」
「やっと笑ったな。良かった。」
なんか、体が熱くなってきた。なんだろう、このきもち。ドキドキする。なんで…。
「おい、大丈夫か! 」
「うん、ちょっとくらっとしただけ。」
「疲れたんだな。今日はゆっくり寝とけ。」
「うん、そうする。」
先生が来て、さようならをして、一日終わった。今日は恥ずかしかったけど、出逢いもあった。バイバイも言えた。明日はおはようって、言えるかな。他の子、後ろの子にも話しかけてみようかな。ああ、明日が楽しみだなんて、おかしいな。
靴箱につくと、裸足であることを再認識した。明日は絶対に上履き持ってこないと。また恥ずかしい思いをしてしまう。裸足の足を見てみる。裏はやはり全体が黒くなっていた。ちょっとはらっただけではとれなさそうな汚れだ。こんな足で靴履くなんて…。でも仕方ない。履いてきた靴に裸足のまま足を入れる。ぶかぶかだ。それに、歩くとこすれて痛い。でも我慢するしかない。
家につくと母親が飛んできた。
「フユミ、今日上履き忘れてったでしょ?」
「うん、だから靴下だめになっちゃった。」
「もう…。足、汚れてるでしょ?早くお風呂ないりなさい。」
「はーい。」
「おやつ、今日はメロンよ。」
「やったー!」
ああ、早く明日が来ないかな。
終わり