「おねがいします!」

「よし、まずは、通知表、出してください。ハンコはもらってるな?じゃあ、後ろから、集めてきて。」

「じゃあ、次は夏休みの宿題。これも、後ろから前に回して。」

フユミは、提出物はきちんと出す。夏休みの宿題はすべてぬかりなく持ってきていた。なぜ、上履きだけ忘れたんだろう。上履きを忘れるくらいなら、国語の宿題、忘れた方がよかった。それほど、きつい忘れ物だった。

 宿題の提出が終わると、先生が急に黙った。教室内がざわざわしだす。すると、少しして、

「ウ~、ウ~、ウ~・・・」

「火事です、火事です。給食室から、火災が発生しました。火事です、火事です・・・」

「え?なんだ、なんだ?」

(これ、避難訓練?これ、グラウンドに、上履きのままで行くんだよね・・・?私は・・・?)

「これは訓練です。ただいま、給食室から、火災が発生しました。生徒と教師の皆さんは、速やかに、身の安全を確保して、上靴のままグラウンドに避難してください。速やかに、グラウンドに避難してください。繰り返します、これは訓練です。」

「始まったぞ。よし、いいか?ハンカチ口に当てて、廊下に並んで。番号順。早く!」

「いくぞ!いそげ!」

(どうしよう、みんな言っちゃう・・・。ああ・・・。)

フユミはふらふらと廊下の、自分の番号の所に並んだ。誰も、自分に話しかけてくれない。私、上履き、ないんだよ・・・。裸足で行くしかないの・・・?

「じゃあ、いきます。」

先生も気づくことなく、歩き出した。フユミの靴箱とは正反対の方向に進んでいる。グラウンドに向かっているのだから、当然だ。階段を下りて、とうとう靴箱まで来てしまった。グラウンドは、最近雨は降っていないから、どろどろということはないだろうが、靴下でで行くのは恥ずかしすぎる・・・。

 靴箱は混雑していた。幾度となく、ほかの人の上履きで裸足の足を踏まれてしまった。痛い・・・。流されに流され、いつの間にか、足元の感じが変わっている。サラサラ・・・。

つづく