教室にはもうクラスメイトが大勢来て、夏休みの思い出を語り合っていた。クラスに話せる相手のいないフユミは一人静かに席に着く。席は窓がある方の端の真ん中。ちなみにクラスは全員で35人、男子、女子の2人ペアで並んで座っている。フユミの横も男子だが、一度も話していない。その子は机の上にランドセルを放って、ほかのこと会話を楽しんでいる。
椅子に座って、ランドセルを置くと再び足の裏を椅子の下から足を出して、見てみた。相変わらず、埃がくっついている。
(一人だけ裸足なんて・・・。恥ずかしい・・・。)
みると、自分以外の子は誰もが夏休みに持って帰り、洗ってきたのか、真っ白な上履きを履いていた。誰一人として、靴下のままの子はいなかった。
(お願いだから、気づかないで・・・。)
足元に注目されないよう、あしをいすの下で組んで、小っちゃくした。
しばらくそうしていると、先生が入ってきた。大急ぎでみんな自分の席へ着く。隣の子もフユミによっかかってくるほどの勢いで席に飛んできた。
「ああ、ごめん。」
「え?ううん・・・。」
「あれ、おまえ、上履きどうしたの?」
「いや・・・。」
「あ、あれか、忘れたのか!」
(もう、そんな大声で言わないで・・・。)
にらんでみたが、気にせず、さらに話しかけてきた。そういえばこの子、名前なんだっけ・・・。
「そういや、話すの初めてだよな・・・。いつも下向いてじっとしてるから・・・。えと、おまえ、名前なんだったっけ?」
「あ、あの・・・、松崎フユミです・・・。」
「あ、そうか、松崎だったな!」
「こら、そこ!前田!うるさい!」
「あ、すんませ~n!」
クラスから笑いが沸き起こる。この子、こんな面白かったっけ・・・。でも、初めてクラスの子と話せた。自分はあまりしゃべれてないけど・・・。
つづく