(どうしよう、どうしよう・・・。)

フユミは困っていた。とても困っていた。


 (あうっ、ないっ!)

夏休み明けの始業式の日、フユミは心の中で叫んだ。

(上履き家に忘れた・・・。)

呆然と立ちすくす。

(今から取りに帰るのは、ちょっと厳しい・・・。)

フユミの家は学校まで徒歩で30分という距離にある。毎日、登下校するだけで疲れる。

(どうしよう、早くいかないと、遅刻しちゃう・・・。)

周りでは生徒たちがバタバタと靴を履きかえている。中には靴下のままで行く子もいる。上履き、忘れたのかな?しかしフユミにはそんな勇気はない。内気な性格のため、話せる相手はごくわずかで、クラス替えがあった結果、誰とも話せなくなってしまった。

(どうしよう、どうしよう、でも、でも、行かないと・・・。)

そう思って、フユミは靴を脱いで靴箱に入れ、そろり、そろりと靴下で廊下をあがりだした。

(うう…、ザラザラする)

夏休み中一度も掃除していないので、校舎内は目に見えるほど、埃や砂がたまっていた。

(靴下・・・。)

階段の前に来ると、気になるのか、靴下の裏を、膝を曲げて、見てみた。今日のフユミの格好は、どこにでもあるような青色のTシャツにチェック模様のスカート、黒いレギンスにレース地の白い、短めの靴下、靴は黒いストラップシューズだ。靴下のレース地は穴が大きいため、靴下の裏だけでなく、素足の裏もすぐに汚れてしまう。フユミの足裏も、すでに埃がついて黒く汚れていた。

(うう・・・。これ、買ったばかりだったのに・・・。汚い・・・。)

階段を一歩一歩上る。いつになくつかれる。フユミは今小学5年生。5年生の教室は校舎の4階にある。階段が毎朝きつい。こっそりと自分のクラスの教室に入った。

つづく