人の視線が怖い。
笑われている気がする。
見下されているのではないかと考えてしまう。

この不安は、性格の弱さでも、被害妄想でもない。
心理学的には、ある“ごく一般的な思考の仕組み”が関係している。

そして重要なのは、
その仕組みを理解すれば、恐怖は確実に弱められるという事実だ。


他人は、あなたが思うほど他人を見ていない

まず押さえるべき事実がある。

社会心理学の研究では、
人は他人の行動や欠点を「実際よりも強く注目されている」と錯覚しやすいことが示されている。

これは「スポットライト効果」と呼ばれる。

実験では、
派手な服を着せた参加者に「周囲はどれくらい気づいたか」を尋ねたところ、
本人の予想は約40%。
実際に気づいていた人は20%未満だった。

つまり、人は
「見られている」と感じるほど、
実際には見られていない。

それでも恐怖が消えない人がいる。
その理由は、外側ではなく内側にある。


恐怖の正体は「他人」ではない

人は世界を、そのまま見ることはできない。
必ず「自分の物差し」を通して世界を解釈する。

心理学ではこれを「投影」と呼ぶ。

自分の中にある考えや価値観を、
無意識に他人も持っているはずだと思い込む現象だ。

例えば、
普段から他人を評価する癖がある人ほど、
「自分も評価されているはずだ」と感じやすい。

普段から見下す視点を持つ人ほど、
「見下される恐怖」を強く感じる。

これは道徳の話ではない。
脳の仕組みの話だ。


脳は「自分の基準」で世界を作る

脳は省エネ器官だ。
毎回ゼロから世界を分析しない。

その代わりに、
「自分の考え方」をテンプレートとして使う。

だから、
厳しい基準を持つ人ほど、
世界は厳しく見える。

攻撃的な思考を持つ人ほど、
世界は敵だらけに見える。

不安が強い人ほど、
不安を裏づける情報ばかり集めてしまう。

これは「確証バイアス」と呼ばれ、
誰にでも起こる。


なぜ「考えるほど」不安が強くなるのか

不安な人ほど、よく考える。
しかし、考えれば考えるほど苦しくなる。

理由は単純だ。

脳は「想像」と「現実」を区別しない。

ある研究では、
失敗を想像したときと、
実際に失敗したとき、
脳の扁桃体はほぼ同じように反応することが示されている。

つまり、
頭の中で何度も「バカにされる場面」を再生することは、
何度も実際に傷ついているのと同じ状態になる。


恐怖は「性格」ではなく「習慣」

ここで重要な結論が出る。

バカにされる恐怖は、