「ゴジラ−1.0(2023年)」 監督:山崎貴





 生きて、抗え





 ※ネタバレ注意





 「ゴジラvsメカゴジラ」の記事を掲載した数カ月後(確か)に制作が発表された、新作の国産ゴジラ。公開が近づくにつれ詳細が明らかになり、その内容は


「第2次世界大戦で敗戦し全てを失った日本を、0から−(マイナス)に叩き落とす」


というものでした。



なにそれ、どんだけ無慈悲なの



と思った方も多かったのではないでしょうか。
 実際、ネットニュース等に載せられていた本作のワンシーン、
「小型船舶の真後ろを、海面から顔だけ出したゴジラが追いかけている」画像にはなかなかのインパクトがありました。


絶対に4歳の長女を連れて行くのはやめようと思いましたね。怖いですよあれ。


 ですがこのストーリー、第一作目「ゴジラ」で既に扱っているものなんですよね。


 記事でも触れましたが、「ゴジラ」は当時の敗戦直後の観客には、戦争を思い起こさせるには十分な内容だったと思います。「原子怪獣現わる」では描き切れなかった、日本人ならではの「失われる者の立場」



 この作品は1作目のリメイクなのか。それとも二番煎じなのか…。



 敵艦への特攻を命じられた敷島浩一(神木隆之介)は、死への恐怖から大戸島の地に足をつけた。彼や整備兵達を襲ったのは、島に伝わる伝説の生物「呉爾羅」だった。


 開始10分もしないうちにゴジラの全身像が映ったときは、流石に勿体無くないか?と思いましたが、作品を進めていくうえで、上記のプロローグは絶対必要なものでした。


 御国のために命を投げ出さなければならない時代に、自分の身を優先して逃亡。更には、突如現れた巨大な悪魔に怖気づき、銃もとれずに味方も壊滅。


 「皆、帰りたい場所があった。また会いたい大切な人たちがいた。逃げ出した自分に、生きていく資格など無い。」
これが、敷島が戦争で負った唯一の、そして大きな傷でした。


この敷島のバックボーンが強烈なため、人間ドラマに引き込まれてしまいます。


 今年で70年を迎えるゴジラシリーズですが、ここまで登場人物の内面を深く描写することはありませんでした。
 「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」では主人公がゴジラに同僚を殺され、「ゴジラVSビオランテ」では科学の在り方を巡って桐島や白神博士の人間ドラマが描かれましたが、それは作品のスパイスに留まるものでした。
 「シンゴジラ」でも打倒ゴジラのために見事なポリティカル・サスペンスが展開されましたが、没個性的な作風のため、登場人物の内面を深く描写はしませんでした。

「生き残った人間は生きていくべき」
 押しかけ女房のような始まりだった大石典子(浜辺美波)が彼の支えとなり、戦争孤児の明子(永谷咲笑)と3人で生きていく。

 俳優陣の演技力もあり、戦後を描いたドラマがしっかりしているので、このまま人間ドラマを追っていきたい気持ちになるんですよね。


だからこそ、それが奪われるのが怖いんです。


 復興した銀座を、無情にも瓦礫の山に戻していく黒い巨影。
 疲弊、戦う力を失った日本に、人々に追い討ちをかける破壊の権化。
 逃げ惑う群衆の中、働きに出た典子を見つけ出す敷島。
 しかし、迎撃する戦車隊に向けてゴジラから青白い閃光が放たれ…


 「シンゴジラ」で鎌倉の海から10年以上ぶりにゴジラが帰ってきたとき。「ゴジラ キングオブモンスターズ」でゴジラとキングギドラの戦いが時代を超え世界中の人々に伝えられたとき。そして、「ゴジラVSデストロイア」で「疲れたよ…」とでも言いたそうに崩れていくデスゴジを見たとき。


 ゴジラ愛のために涙を流したことはありますが、登場人物に入れ込んで号泣することになるとは思いませんでした。



 是非、劇場で鑑賞いただきたいと思います。





 以下かなりのネタバレ




 ゴジラについて

 愛称が固まっているのかはわかりませんが、マイナスゴジラとでも呼びましょうか。

 比較的ステレオタイプなゴジラ像で、どちらかといえばVSシリーズのゴジラに近い印象を受けます。

 ですが、やってることは「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」のGMKゴジラさえもその白目を剥く程の暴れぶり。

 冒頭から水爆実験を受ける前の姿(ゴジラサウルス?)を披露、恐竜のような動きで整備兵達を嬲り殺し、敷島に消えない傷を追わせました。
 銀座襲撃シーンは「ゴジラ」、「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」等でも見受けられた破壊描写を「白組」が手掛けるCGがブラッシュアップ。熱線により発生したキノコ雲は、ゴジラと同じ画面に映す事でよりその迫力を増すことに成功しています。



 このマイナスゴジラですが、ゴジラファンには受け入れられない部分もあったのではないかと思います。


 口の中にぶち込まれたとは言え、まさか爆弾で死ぬとは。


 GHQによる武装解除で力を失った日本だから大変だったけど、いつもの集中砲火を加えていれば簡単に倒せそうですよね。
 もしかしたらシリーズ中でも最弱レベルのゴジラかもしれません。

 ゴジラである必要があったのか?
と思われる方もいるのではないでしょうか。
 ミサイルでやられたエメゴジも「ゴジラではなくイグアナの化物」と言われてますし、なんだったらバランでもいいよねってなっちゃいそうです。


 ですが、このゴジラの弱さは「ゴジラ−1.0」の作風上、仕方のなかったことではないかと思います。


 未来のために立ち上がった人々が、自分の戦争に決着をつけなければならなかった敷島が倒せなければ、本作は成り立たなくなってしまいますよね。
 オキシジェン・デストロイヤーに頼る形では、新しいドラマは生まれません。


 2つのアニメシリーズが作られ、そしてハリウッドの舞台にゴジラをとられて。


 ここで、「シンゴジラ」で庵野監督が投げかけた言葉を引用したいと思います。



「私は好きにした、君らも好きにしろ。」


 いろんなゴジラがあってもいいのかもしれません。



その他、気になったことなど

 「ゴジラ」や「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」からのオマージュは多かったですが、頭を吹き飛ばされ、熱線を漏らしながら崩れゆくゴジラ「ゴジラVSデストロイア」のデスゴジ、「ガメラ大怪獣空中決戦」のギャオスを思い出しました。

 「シンゴジラ」とは違う視点でリアルな作風で、「ゴジ泣き」させてくれる名作だと思いますが、2点だけ。

 銀座襲撃シーンはなかなかの迫力でしたが、欲を言えば主人公家族以外からの視点も描いて欲しかったと思います。
安藤サクラさん演じる太田澄子の家族は、銀座で全滅するほうが良かったかもしれません。


 あとは、本当に犠牲者0で成功する対ゴジラ作戦。敷島の戦闘機に一発も熱線を撃たずに追いかけ続けるのは、御都合主義と言われちゃうのかな。反動ダメージがあるから、という理由付けはされてましたけどね。
 あれだけの衝撃波に巻き込まれて、包帯ぐるぐる巻きとはいえ典子が生還出来ていたのも驚き。
やっぱり最弱のゴジラなのかな…?(笑)


 以上、2年ぶりの更新になりました。

 長期間更新をサボり、しかも「シリーズを順に扱っていく」というルールすら破ると、自己満足とは言え節操無いなと自分でも思ってます。

 家庭や仕事の都合で以前までの更新スピードは維持できそうにありませんが、たまに思い出したときにでも当ブログを覗いてみてください。