$「天使の弁護士 成瀬領」VS「天才鍵師 榎本径」
こちらはRyoの唇!?


次の月曜日、榎本開はいつものように大学へと足を運んだ

週末は、Ryoのもたらす数々の事件に心身ともに穏やかではいられない

彼にとって、月曜日から始まる平日は、読んで字のごとく平和で平穏な日々である


しかし、今日はいつもの平穏な月曜日ではなさそうだった

Ryoの話に出てきた未来と書いてミキと発音する名前のあの子に会う必要があるのだ


開が彼女に会って確認したいことは山ほどあった

そもそも、この週末にRyoと出会ったのは彼女なのだろうか?

そして、もし彼女がその本人だとして・・・

Ryoとは どんな接触があったのか?

(あいつのことだ、何もないわけがない!)

そして、彼女は自分のことをどんなふうに思っているのか?


先週、図書室で初めて熊田未来に出会った開は、

初めて会った気がしなかったのはなぜなんだろうと考えていた

あの長い黒髪と大きな瞳が印象的な熊田未来は何者なんだろうか

可憐で魅力的な人物の登場で、平日なのに週末のように心が揺れるのだった


~図書室~

図書室に足を踏み入れると、開の目はすぐに彼女を探し始めた

しかし、彼女の姿はどこにも見当たらなかった

ボランティアメンバーということは、毎日いるとは限らない

がっかりして、図書室から出ようとしたその時、背後から呼び止められた

「榎本さん」

振り返ると、そこにいたのは彼女だった

一瞬、時間が止まったような気がした

「あ、こんにちは」

挨拶だけで精一杯の開に対して

彼女は、屈託のない笑顔で話し始めた

「わたし、ず~とあなたのこと探していたんです」

なんと、彼女も開を探していたらしい

「実は僕もお聞きしたいことがあって探していました」

「そうなんですか、私も教えて欲しいことがあるんです!」

「熊田さんあなたからどうぞ」

「実は 先週の金曜日に・・・ある人に出会ったんです」

開は金曜日と聞いただけで鼓動が早まるのを感じた

そして、堪らず、切り出してしまった

「金曜日にRyoと会ったんですか?」

「なぜそれを?」

「共通の友人から聞いたのです」

「でもそれがあなただという確証はなかった」

「Ryoという人が榎本さんにソックリで私驚いたんです」

「でも、中身は全然違う正反対のような人でした」


「彼とはどんなことを話したんですか?」

「榎本さんのことをよく知っていて血が繋がっているとも言っていました」

「確かに血が繋がっていて、弟のような存在ではあります」

「そうだったんですね」

「それで、僕が聞きたいのは・・」

「ストレートに言います、彼と・・その・・何かありましたか?」

「なにかって?」

彼女の中で、鮮烈な記憶は、あれ以来何度もrepeatされていた

未来は無意識のうちに開から視線を外し鼓動の高鳴りを鎮めるしかなかった

不意にKISSされたなんて、言えるわけがなかった

「やっぱり、何かあったんですね・・・」 「あいつ~」 (←抜け駆けしやがってみたいな?)

「いいえ、特別なことはないです」咄嗟に彼女は嘘をついてしまった


「いずれにせよ、彼には気をつけてください」

「毒牙にかからないためには、近づかないことです」

「ええ、そうですねわかりました」

「ご忠告ありがとうございます」

そう言いながら

未来は、開の口元に目をやった

広角がキュット上に引き締まり微妙に反り返った上唇に見覚えがあった

そんなところまで似ているということがあるのだろうか?

まさか?そんなわけないわよね

でも、確かめる方法は・・・