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なんとな~く  思いつきで  好き勝手に  (=゚ρ゚=) ボヘー  っとやってます。


今年も梅雨時は調子悪いです、ハィ。
んな事言ってる内に、すぐ暑さでガッツリやられちゃう夏が来るんだろうけど・・・。

さて、気付いたら映画レビューの下書きが溜まってまして、今回はUPしたつもりでいた数ヶ月前からのレビューを出しとこうかなと。
なんだかんだ、画像作ったりすんのが時間掛かるんで先延ばしにしちゃってたんだよね。
ってか、いざ手直しだの画像作りし始めると数時間ぐらいフツーに掛かっちゃうんで、今回は見送った下書きも幾つかあったりなんかして。

つー訳で、例によってネタバレ上等な映画レビューでございまする。


ザ・ベイ
ザ・ベイ
原題:The Bay
製作国:2012年 アメリカ
監督:バリー・レヴィンソン
評価: 9点 (10点満点)

『レインマン』 でアカデミー監督賞を受賞した、名匠・バリー・レヴィンソン監督によるパニックホラーのPOV作品。
この監督さんはちっとも知らなかったんだけど、『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』 『グッドモーニング, ベトナム』 『バグジー』 辺りのタイトルを聞くと、しっかり作品観てるじゃないかと我ながらアレで・・・。
ともあれ、一昔前の名作や話題作を撮った大物監督がPOVホラーを手掛けるのは珍しい事なので、それだけでも試みとして面白い・・・っていうか、これはかなり面白かった。



2009年7月4日、メリーランド州の小さな港町・クラリッジでは、アメリカ独立記念日の記念行事が執り行われていたのだが、集まった人々に次々と異変が起き出した。
たまたま記念行事の現場リポートに当たっていたドナ・トンプソンは、事態の原因解明に乗り出すのだが・・・。


という訳で、まず設定の部分なんだけど、ハッキリ言ってこの手の作品としては非常にベタと言えるものでしかないものの、監督次第でこうも完成度が変わるものなんだなと感心してしまう。
比較的狭い舞台、パニックの原因、経緯・・・と、どれもありきたりで特に変化球がある訳じゃないんだが、ツボをしっかり押さえて展開するから解り易く、パニック映画ならではのドキドキ感も味わえる。

POVにありがちな安っぽさを感じさせないのは、恐らくカット割りの巧みさだろう。
大抵のPOV作品だと、本編を登場人物の手持ちカメラ映像ばかりで構成させていたりするが、この作品の場合は、舞台である小さな町のあちこちにある映像(監視カメラ等)を効果的に織り交ぜ、1つのドキュメンタリー映像としての完成形を本編にしてる。
つまり、素人のホームビデオ映像を闇雲に繋ぎ合わせた風のモキュメンタリーではない為、POVでありながらも無駄の無い 『退屈しない映像』 として仕上がっている。
そういった意味では近年のPOV作品とはアプローチが少し違うんだが、本来のPOV作品とはむしろこういったものが基本のはず。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』 のヒット以降、亜種作品が次々作られ、POVと言えば 「現場で発見されたホームビデオ映像を基に作られた」 という様な設定の方が主流になってしまったが、本来はファンタジーな世界観のものを、さも現実である様に見せる手法がPOVであり、ドキュメント番組の様にしっかりと構成された映像であるべきが映画だろう。
言わば、ブレアウィッチの様な設定というのが、そもそもは変化球なんじゃないかと思う。

この作品で個人的に配慮深いと思ったのは、事件発生日を独立記念日にしていた事。
POVあるあるかも知れないが、どうもこの手の作品というのは日時の設定が飛び飛びで解り辛いので、観ているこちら側で時系列をしっかり把握していないといけない事が多い。
その点、この作品は7月4日が軸だと冒頭から触れられているので、時系列が非常に解り易い
細かい事だけど、この配慮はPOVにおいてわりと重要だと思う。

パニックムービーと言えば、『ポセイドン・アドベンチャー』 『タワーリング・インフェルノ』『デイ・アフター・トゥモロー』、などに代表される災害・震災モノから、『インデペンデンス・デイ』 『クローバーフィールド』 などのSFモノと多種多様。
俺の大好物なゾンビ映画だって立派にパニックムービーだったりする訳だけど、そんなゾンビ映画に似て非なるものと言えるのが、ウィルスなんかの感染拡大モノ
代表的なのは、ダスティン・ホフマン主演の 『アウトブレイク』 だろうけど、ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロが1973年に撮った 『ザ・クレイジーズ』 なんてのもある。
で、この作品はと言うと、動物パニック系という括りになる訳ですよ。
動物パニックって響きだけ聞くと、なんか可愛らしげな、アニメ的なイメージにもなっちゃったりするんだけど、『ジョーズ』 とか、『アナコンダ』 とか、『アリゲーター』 なんてタイトルを挙げると、一気にどういった内容なのか解り易くなるんじゃないかなと。

この作品、確かに動物パニック系ではあるんだけども、正確には動物というより、虫ワラワラ系です。
もうね、虫ワラワラってだけで絶対観たくないって人がむしろワラワラでしょうw
実際、人間的なグロ描写以外にも、この作品では虫のグロさが結構エグめです。
だって、そういう話なんだものw
まぁ、要するに、海洋性の寄生虫を原因としたパニック映画なんだけども・・・っていうか、その寄生虫自体はほぼワラジムシとかダンゴムシの形状なんで怖くは無いんだけど、なんせ寄生虫として登場するし、見せ方とか設定が巧みにキモいんですわ。

独立記念日のお祭り風景で始まったクラリッジの町は、最終的に死の町になります。
しかもこれ、感染モノなので、即死とかはしない訳ですよ。
何事も無い様に感染して、徐々に蝕まれて死んで行く町民たち・・・老若男女問わず、タイミングも選ばず。
病院は患者で溢れ返るし、助けを求めたCDCは全く以って無能だし、それで町を出る道は完全封鎖とかされて身動き取れないし・・・と、かなり散々。
まぁ、そういうのはまたベタと言えばベタなんだけど、この作品は町が滅び行く様を映し出していると同時に、序盤から原因と対応についての答えも示されてる訳です。
この部分の取り上げ方が実に上手い。

町には大規模な養鶏場があって、小さい町だからその養鶏場が町の財政を支えてる現実がまずある。
で、その養鶏場ではステロイド入りの餌を与えて、成長促進とか効率化を過度に行っている。
ところが、そこで出た何万トンという鶏糞を、事もあろうに海に垂れ流しているからタチが悪い。
そいでもって、町には海水淡水化装置なるものが設置されていて、町の住民も、養鶏場でも、そこで淡水化された海水を生活水として使ってたりする訳だ。
結果、太古の時代から生き残る海洋寄生生物汚染水の影響で巨大化&大量増殖し、その幼虫を含んだ海水が生活用水として使用され、大規模被害に繋がるという訳。
ちなみに、海中には超巨大化した寄生生物がサメみたいにウヨウヨ居るし、海水にも目に見えない幼虫がワラワラという救えない状況
その危機的状況にいち早く気付き、証拠や質問状を評議会や町長に送りつけてた海洋学者二人は、7月4日以前の段階で寄生生物の被害に遭って死亡
つまり、深刻な海洋汚染や寄生生物の異常を知りながら、町の大物連中がその事実を握り潰していた結果、町は壊滅的被害を受けたという事で、一連の流れはリアルさを出しつつ、非常に解り易く咀嚼されてて絶妙。
事件は人災であるというこの部分が、物語として一番のホラーな訳ですよ、つまり。



キモさ、グロさ、怖さ・・・と、色んな要素で面白い作品だったんだけど、前述した様に虫ワラワラだのがあるし、血まみれのゴア描写もあるし、汚染水問題っていう震災以降の日本人にとって現実味の濃い部分もあるもんで、アカデミー監督の撮った近年のハリウッド映画としては、かなり人を選ぶ作品と言えるかも知れない。
もっとも、ホラー畑の監督さんじゃないんで、いわゆる悪趣味系の作品ではないんだけど、じゃあ耐性の無い人にオススメ出来るかって言うと・・・さすがにちょっと躊躇うね、これは。

さて、ハリウッド作品と言えばお約束の 『ご都合主義』 な部分ですが、モチのロンでこの作品にも御座います。
ただ、この監督さんが巧いのは、その辺りもそれなりに応急処置というか、最低限の保険を掛けて作ってるんですよ。
例えば、カット割りが出来すぎているとか、恐怖を煽る様な音楽が付いてておかしいとか、そういうツッコミは当然する人も居るんだろうけど、冒頭からちゃんと観てたら解るはずなんです、その理由。
この作品、冒頭から 『事件の真相を生存者が語るドキュメント番組』 という位置付けで作られてて、ドナ・トンプソンの証言と、機密情報サイトによって漏らされた当時の証拠映像で構成されたドキュメントだと暗示されてる訳です。
つまり、本編の映像は、予めドキュメント番組風に編集されたものだという大前提がある訳で、バランス良くカット割りがされてても、効果的に音楽や効果音が流れても、そこに違和感を覚える方がおかしいって事。

個人的にちょっと引っ掛かったのは、事件発生のタイミング
海洋学者が被害に遭ったのは6月16日で、町が壊滅したのは7月4日
およそ二週間の間を置いて突然事件が起きたのは、普通に考えて不自然な訳だ。
海洋学者が死んだ段階で、既に近海には巨大寄生生物が大量に居たという事になる。
という事は、目に見えない幼虫の方も大量発生していただろうし、だとしたら事件当日まで何事も無かったのはおかしい
クルーザーで運悪く町を訪れた夫婦の旦那の方は、海水を飲んでおよそ8時間で死亡・・・という事も踏まえると、やっぱり二週間も町民が異変を感じなかったのはおかしいし、そもそも、海洋学者が原因を突き止める以前から、周辺で何かしら異変が起きていなければ辻褄が合わない事になる。
海沿いの町で観光客による収益をアテにしてると解説してる事からしても、二週間の間、地元住民や観光客が海に入らなかったとは考え辛いし、ボートやヨットなどで少し沖へ出る人間が居ても当然だろう。
無論、海洋産業に従事して、毎日海に入ったり、海水に触れる人達が大勢居るはず。
それでも事件当日まで表立った被害が無かったとすれば、「事件発生のスイッチはどこだ?」 という疑問がどうしても残ってしまう。
要するに、原因が明確になっているからこそ、事件が余りにも突発的で、被害拡大もピンポイント過ぎるという違和感を覚えてしまう訳だ。
比較的リアルに作られたパニックムービーだけに、その辺りでご都合主義が見えてしまうのは非常に勿体無い

まぁ、映画なんでそこまで厳密に追究する必然性なんか無いと言えば無いんだけど、総体的に出来が良い作品だけに、そんなところでボロが出るのは惜しいんですよ。
パニックムービーって、大抵がパニック自体に主軸を置いてて、原因とか対策はアホほどいい加減にしか描かれてなかったりするもんで、ワーキャー言うだけの薄っぺらい作品がほとんど。
そんな中、この作品みたいに理屈をそれなりに詰めて描いてるのは話として面白いし、単なる娯楽作品に止まらない作品としても貴重じゃないのかなと。
そういう意味でも、もうちょっとだけ詰めて欲しかった気はする。
とにかく、ちゃんと作り込まれたPOVってのは、やっぱり面白いって事ですね、ハィ。


其の弐へつづく。


※ 2016年02月 加筆・修正 及び、再編集の都合による記事分割