今度はノルウェー | weblog -α-

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なんとな~く  思いつきで  好き勝手に  (=゚ρ゚=) ボヘー  っとやってます。


前回のレビューはキューバ産ゾンビコメディー映画でしたが、今回の産地はノルウェーです。
北欧ゾンビかって? いえいえ、今回はゾンビ映画じゃこざいません。

今回は、『トロール・ハンター』 という作品。
トロールって聞いた事ある人も少なくはないはず。
RPGなんかではお馴染みのモンスターで、ファンタジー世界ではメジャーどころ。
いわゆる、土着的な妖精の一種ですな。

指輪物語で知られるトールキン作品は勿論、ハリーポッターなんかでも描かれてる醜悪な姿の巨人族がトロールなんだけど、日本ではトトロとかムーミンのイメージが比較的強い様子。
基本的にトロールは凶暴で獰猛、夜行性で山や森に住んでるって事になってます。
悪や不吉の象徴として認知されてるもんで、日本で言うみたいな存在として考えたら解り易いかなと。

さて、作品の方なんだけども、これまたモキュメンタリー作品なんですねぇ。
いわゆる、ホームビデオで素人が撮影したのをそのまま使ってます!っていう演出。
当然、作品冒頭ではその旨が解説されてます。
要するに、この映画は粗が目立ってても当たり前だからね? という逃げ口上ですねw
まぁ、その辺りがモキュメンタリーの醍醐味でもあるんだけど。

内容はどんなもんなのかって言うと・・・

ノルウェー西部、ヴォルダ大学の学生三人組、トマス、カッレ、ハンナ。
彼らはノルウェー国内で問題視されている 『熊の密猟』 について取材していた。
そんな時、密猟者を疑わせる怪しげな男・ハンスの存在を知り、直接インタビューしようと試みたが、にべもなくあしらわれてしまう。
それでも諦めずにハンスの動向を嗅ぎ回っていたある夜、三人はついにハンスが密猟していると思わしき現場に遭遇するのだった。
暗く静かな森の中、突然得体の知れない叫び声が響き、木々の向こうからは激しい閃光。
「トロールだ!!!」
そう叫びながら現れたのは、あのハンス。
「トロール!? 絵本や童話に出て来るあのトロールの事か!?」
ハンスに促され逃げる三人だが、逃げ遅れたトマスが肩を負傷してしまう。
そう、北欧に伝わるモンスター、トロールは実在していたのだ。
ハンスとは一体何者なのか。
トロールの存在が隠されているのは何故なのか。
三人はハンスに同行し、取材を続けて行く。


・・・というお話。

さて、ここからは例によってネタバレ上等です。
詳しく知りたくないなら閉じちゃって下さいな・・・っと。


まず、トロールを主題にしてる時点で日本では伝わり辛いんですよ。
モンスターとしてのトロールの知識って、普通の人達はまず無いもんね。
それに、一応はファンタジー好きとしてどんなモンスターかを知ってる俺からしても、トロールってのはパンチが弱い。
なんというか・・・それほど怖い存在っていうイメージが無い。
勿論、凶暴で人を襲ったり食ったりする事も知ってるけど、ファンタジー世界にはそんなモンスターだらけなんでね、その程度はちっとも珍しくない訳ですよ。
むしろ、知的じゃない部類のモンスターだからザコ扱いされてる事が多くて、単にデカいからパワーがハンパないって事だけフィーチャーされてる感じなんですな。
そんなトロールを、この作品では脅威として描こうとしてる訳です。
「なんだあの化け物! すげぇ怖いよ! マジでヤバいよ!」 みたいに扱ってはいるんだけど、そこがあんまりしっくり来ない・・・伝わって来ない。
いや、実際に遭遇したら、そりゃ怖いんだろうなってのは解る。
それぐらいの想像は出来るんだけど・・・いかんせん弱い。
出来が悪いとかでは全然ないんだけどね。

トロールに関して、リアリティーを出す為にそこそこの解説が劇中でされてます。
夜行性なのは光に対する耐性が極端に低い為で、紫外線を浴びると血中にガスが溜まって云々。
光を浴びたトロールはガスによって破裂、あるいは石化するという話。
破裂はまだ良いとして、石化に関しては無理あるだろ~ってフツーに思っちゃうよね。

トロールには山トロールと森トロールの二種類があって、細かく分類すると更に・・・みたいなのもこだわりがあって良いと思えたけど、そんな現実味のある設定を作っときながら、キリスト教徒の臭いにだけは過敏に反応するとかってトンデモ設定まで入れ込んでるのは意味が解らない。
要る? 必要ですか? そんな宗教観持ち出した設定。
エクソシスト的なね、悪魔が黒幕っていう典型的なアレなら解るけどもさ、トロールは別に悪魔どうのって無関係じゃんね。
いや、悪魔が作り出した生物だとかって言いたいのかも知れんけどさ、妖精として語り継がれて来たトロールが実在して、その生態を現実的に演出したいんであれば、下手な宗教観は持ち出さないに限るでしょうよと。
無駄としか言い様が無いってか、その設定一つで一気にげんなりですよ。
そこだけ斗出して非現実的だけにね、勿体無い事するもんだと・・・。

まぁ、残念な設定はあるにしろ、トロールの描写は物凄く良い出来です。
しょぼくれジジィみたいな面構えも、動きなんかもリアルに描かれてる方ですよ。
ただ、やっぱり怖くはないんだな。
登場人物達が怯えてたりするのを完全な客観視で見てるもんだから、イマイチ面白いと感じられない。
その原因は恐らく、出て来るモンスターがトロール限定だからなんだよね。
例えば、ジュラシックパークみたいに色々な恐竜が登場して、その最も脅威となる存在としてTレックスが出て来る・・・みたいだったら見方も違ったんだろうけど、この作品では種類こそ違っても全部トロール。
ビジュアル的に怖くないサブキャラみたいなのが絶対的脅威として描かれてるから、インパクトとしての抑揚が無いんだな。
モキュメンタリーだけに、いかにもな映画的演出で脅かす様なシーンも無いし、ひたすらトロールの生態観察をしてるだけって感じ。

設定の話で言えば、トロールに限らずストーリー的にも色々と無理があったなぁと。
まがりなりにも巨人族なトロールがどうして国民にバレてないのかって辺りとか、もっとしっかりした理屈で納得させないとシラケるよね。
「政府が隠蔽してるんだ」 の一言で納得させようってのは乱暴すぎる。
それに、その肝心の政府の手先として登場する自然動物保護局のお偉いさん・フィン、正体はTST(トロール保安機関)の幹部らしいんだけど、彼の言動も呆気ないほどあっさりし過ぎてる。
政府が隠蔽してるって事は、トロールの存在は国家機密ですよね。
その国家機密を、個人的判断で民間人に・・・しかも、知り合ったばかりで得体の知れない学生達なんかに教えちゃって、取材までさせちゃってるハンスさんをちっとも責めない。
その場ですぐに手を打って学生達を始末しようってんならまだしも、ハンスが勝手な事してるって認識した後も放置状態ですからね、フィンのおっさん。
映像なり音声なりが外部に漏れたら一大事のはずなのに、猶予を平気で与えちゃうエージェントなんてちっともリアリティーが無い。
国家機密を守るプロなら、事実判明と同時にその場で殺しますよ、フツーに考えりゃ。
ハンスさんは唯一のトロールハンターらしいから叱られるぐらいだろうけどさ。

そうそう、そのハンスが取材を許した理由ってのも強引過ぎたね。
「危険手当も夜勤手当も無い。さすがに疲れたのさ。」 とか。
「取材した映像をマスコミに流して公表してくれ。」 とか。
言ってる事はほとんど裏切ったテロリストですよねw
ってか、そんな薄っぺらな理由で国家機密を・・・それも、今までずっと請け負って来た事なのに、そんな簡単に投げ出しちゃうか?フツー・・・っていう。
そういう部分の踏み込み方がいちいち足りないもんで、どうも話として上手くまとまってない印象になっちゃうんだよね。
良い部分も結構ある作品だと思うのに。


さて、粗は色々あるけども、物語としてはなかなか良い感じに進行するんですねぇ。
トロールの異常行動、海外からの旅行者を巻き込んだ事件、原因不明の送電線破壊、等。
ハンスさんの口から語られるトロールハントエピソードもなかなか面白い。
「トンネルを掘るプロジェクトが強行されたせいで、その地区のトロールを全滅させなきゃならなかった。 生まれたばかりの子供まで全部だ。 文字通りの大虐殺さ。」 とか。
「トロールに知性は無い。 昔、自分の尻尾に喰いつこうとして、股の間に頭を突っ込んでる奴が居たぐらいだしな。 そいつは結局、バランスを崩して丘を転げ落ちてったさ。」 とか。
実際にトロールハンターが居たら、そんなエピソードを聞かせてくれそうだなぁと思う良いシーンですよ。
リアリティー重視のモキュメンタリーとしては、そういった見事な部分もわりとある作品です。

映像としては単調で退屈なシーンも多いんだけど・・・ノルウェーの大自然はとても美しいw
環境ビデオかと思うぐらい景色はいちいち良いんだよね、まったく。
んで、トロールとのバトルシーンで個人的に一番良かったのは、ハンスさんが一瞬でボコられちゃうシーンw
長年やってるプロとは思えない手際の悪さと計画性の無さでw、そりゃそうだろと思わせるやられ方をするんですねぇw
なにげに一番リアルだったのはそこじゃないかと俺は思いますよw

で、次のトロール退治に出掛けた先で、読み間違えから一行はトロールの巣を出られなくなります。
そこでとうとうカメラ担当のカッレ君が犠牲となってしまうのでありました。
彼はなんと、ずっと黙ってたけどキリシタンだったんですね~。
なので、身動き取れないトロールの巣で過剰なまでに怯え、動揺しすぎて墓穴を掘る訳です。
「神様!お助けを!」 の一言であの世行き。
信じる者が救われないどころか、神に祈ったせいで死んでしまうという皮肉。
海外ならではのブラックユーモアですな。
あ、念の為に言っとくと、生々しい咀嚼音はすれど、ホラーじゃないんで死に様は映りません。
まぁ、そんな事があった後で一番驚きなのは、仲間が殺された直後なのに、次のカメラマンをすぐ手配しちゃう手際の良さw
大して悲しんでる様子とかも無いし、むしろハンスさんの方が責任感じてる風に見えちゃうんだよね・・・見た目のせいだろうけどw

そして列車で到着する新カメラマンのマリカ嬢。
挨拶もそこそこ、「君、クリスチャン?」 と肝心なトコを尋ねる辺りもジョークですな。
「私? いや・・・私はムスリムだけど?」 とマリカ嬢。
この返答まで含めてジョークなんだろうけど、宗教観の薄い日本人にはサッパリだよね。

さてさて、物語はとうとう大詰め、超巨大トロールとのバトルになります。
俺は観た事無いからアレだけど、展開的には進撃のアレっぽいんじゃないかな、きっとw
という訳で、物語的に最終決戦。
その直前になって、トロール達の異常行動の原因が判明。
「トロールは狂犬病に感染してる! 広まってるんだ!」
そう、全ては狂犬病が原因だった訳で、そんなトロールに噛まれたトマス君も、当然ながら感染しちゃってるんです。
ちなみに、狂犬病は発症すると99%の致死率なので、ワクチン接種しないとほぼ確実に死んじゃいます。
「ちょっ! 今すぐ病院連れてってよ!!!」
トマス君は叫びますが、すぐそこまで超巨大トロールが来ちゃってるんで、ハンスさんはシカトw
つーか、この期に及んで足掻くぐらいなら、とっとと病院行っとけや、小僧!・・・と、俺も観てて思いましたw

さぁ、ハンスさんがどう戦うのか見物だった訳ですが、なんと、基本的には戦術が何も変わってねぇー!!!っていう驚きw
体長が100mはあろうかってほど巨大なトロール相手にでも、紫外線フラッシュ攻撃だけで挑む姿・・・。
それはもう、さながらヘミングウェイですよw
老人と海よろしく、歴然とした力の差に怯みもせず、ハンスさんは大音量の賛美歌をエサに、超巨大トロールと戦います。
やがて、死闘(?)の末、超巨大トロールは石と化し、英雄ハンスはその雪煙の中に姿を消すのでありましたとさ・・・パチパチパチ。

って事で、どうやらハンスは相討ちになったのか、引退する為に身を隠そうと思ったのか、とにかく一行の前から姿を消す訳です。
そして、そこに現れるのが、すっかり忘れかけていたTSTエージェントのフィン。
黒塗りの車を引き連れ、一行の口封じに参上したのです・・・って、えっらい対処遅いけどなw

『その後、彼らの消息は不明のままです。』

っていうお約束なテロップが出て物語はほぼ終わり。
最後の最後にオチが一応あるんだけども、それもまた日本人には解り辛いので・・・。
まぁ、基本的にはノルウェー人の為に作られた映画って事なんですよ、これ。

ところで、またダメ出しになっちゃうんだけどもさ、狂犬病発症後の典型と言えば、やっぱり恐水症状じゃないですか。
トロール達は異常行動してた訳だから、確実に発症しちゃってる訳よね。
だとしたら、なんで川のさ、橋の下に餌場なんか作っちゃってるトロール居たのよ・・・と。
大体、狂犬病だって判明したんだったら、わざわざ命懸けで倒す必要も無いんだよね。
足止めさえしといたら、発症後はそんなに長く持たない訳だしね。
知能も低いんだし、どんなにデカくたって落とし穴掘っとけば引っ掛かるっしょ。
それで身動き取れなくなったトコを攻撃するなり、日光が当たる様にすれば余裕で退治出来るよね。
もっと言うなら、ハンターとか要らんよね。
軍に紫外線ライトの強力なの用意させてさ、ヘリ部隊で一斉照射すりゃ済むよね、大体は。
・・・的確すぎ?w


といった訳で、見事さと稚拙さが混在しまくったノルウェー映画、トロール・ハンターでした。
ハリウッドリメイクも控えてるそうですが、ハリウッドの他人のフンドシ頼りも節操無さすぎですな。
もうアメコミの実写化だけやってたら良いんだよ、ハリウッドはさ。
評判良いのそんぐらいなんだから。
まぁ、地方色の強い作品をロンダリングしてくれるって意味では、お手本的なもんぐらい作れるだろうけどね。

トロールハンターじゃなく、モンスターハンターで作ったらウケそうだな、しかし。
モンハン実写化!!とかキャッチーだしね。
つーか、トロールより凶暴そうなモンスター出さなきゃね、パンチ弱すぎるよね、やっぱし。
サイクロプスとかキメラとか、ファンタジー界の重鎮モンスターを現代劇として登場させたら、絶対面白いの作れると俺は思うんですが、如何でしょうか。
無駄な宗教観は要らんけどね。