去年の今頃、親父の体験した実話怪談を1つだけ記事にしました。
その時に他の怪談ネタは無い様なニュアンスの事を書いたんですが、別に無い訳じゃないんです。
ただ、ネタとしてちゃんとした話になるかどうかの問題で、わざわざ記事にする程の話はもう無いかなという判断でした。
・・・が、今回はあえてその記事にする程のもんでもない話を書いてみようかなと。
最近まともに記事も上げてなかった事だしね。
で、まぁ、今回はですね、俺が実際に体験した話を書いてみます。
予め言っておくと、幽霊だなんだは出て来ません。
何か得体の知れないものを見たとかって話じゃないんですよ、これが。
そういう意味では怪談と言うより怪異譚って分類になるかも知れないけども、とにかく怖い思いはした訳です。
え~、その体験をしたのは、俺が中学3年生の頃。
当時、俺の家は中学校のすぐ近くにある借家で、学校の敷地に入ろうと思えばほんの数十秒で入れてしまう距離の場所にあったんです。
そして、当時の俺はいわゆる登校拒否の常習でして、2年、3年と出席日数は合わせても半年に満たない程度しか登校してなかったんです。
登校拒否の理由は、それまでの過去の事が絡んでたり、自分という存在について必要以上に考え込む様になったり・・・と、なかなかその年頃ならではの苦悩が多かったからなんですが、決していじめられてたとかでは無かったし、クラスに馴染めなかったとかでも無く、ホントに自分の中の問題として毎日通う事を良しとしなかっただけなんです。
そんな訳で、学校へはほとんど顔を出さずにいたんだけども、ふと思いついて登校してみたりはしてました。
だから、その日もふとした思いつきで動いただけだったんですよ。
とある金曜の夜、「明日ガッコ行くかな~・・・」 と思ったんです。
理由なんて特に無く、ただ単にそう思ったからそうしようと決めただけ。
その次に思ったのは、「明日って時間割なんだったっけな~」 でした。
通学カバンに一週間の時間割表は入れてあったんだけども、それを調べて準備するのは気が乗らなかったというか・・・そこまで行く気満々じゃないのにそれもどうよ?と。
まぁ、呆れるほどのヘソ曲がりと言うか、我ながら面倒臭い奴ではあったと思うけども、その時はそう思っちゃったんだから仕方無い、とにかく時間割表を調べて用意するのは嫌という事に。
ところが、当然ながら時間割が解らない事には何を持って行けば良いかも解らない訳で、それはそれで困る訳ですよね。
行く以上は調べる必要があるけど、カバンの時間割表は見たくない・・・じゃあどうすんの?と。
そこでふと思いついたのは、「だったら直接学校に行って時間割見て来りゃ良いじゃん」 という頭のおかしい着地点w
その頃にはもうおかしな発想ばっかりしてたもんでね、むしろ手間だろって事でも自分の中で筋が通る事の方が重要だったんです。
ってな訳で、夜中1時を回り、そもそも人通りの多くない近隣が更に静まり返った頃、俺は家を出て学校に向かいました。
ここからちょっと画像も交えて説明します。

これが学校周辺の地図。
左の赤丸が当時の自宅のあった場所。
学校の敷地まで数十秒ってのが大袈裟じゃないのは一目瞭然で解るはず。
ちなみに、水色の部分が学校の正門。
俺の自宅側には裏門みたいなのは無くて、校庭と非常用貯水池を兼ねたテニスコートがあり、その周りはフェンスとネットで普通には入れない様になってました。

これは航空写真で見た様子。
こうして写真で見ると解ると思うんだけども、ウチの学校の周りは雑木林に覆われてるんですよ。
と言うのも、この学校のある場所は山と山のちょうど谷間に位置してて、両側の山の麓部分を切り崩した形で学校を建ててるんですな。
だから、校舎の前後はすぐ山の急斜面で、学校にしては昼間でもわりと薄暗い場所なんです。
まぁ、山と言ってもそれほど高い山ではないんだけどもね。

地図上の緑矢印の位置から見た風景。
校門を通り過ぎて武道館の裏手の辺りなんですが、右側に結構な雑木林が広がってるのが解ると思います。
通学路なのに昼間でもこんなんですからね、ちょっと日が傾けばホントに薄暗い道になっちゃう訳ですよ。
で、校舎裏はもっと急斜面の雑木林が校舎よりちょっと高いぐらいまでそびえてるんで、日が暮れずとも午後には薄暗いという。
まぁ、とにかく校舎周辺はどうしたってひっそりとした環境だったんです。
そんな場所なのにも関わらず、わざわざ真夜中に学校に忍び込もうってんだから全く頭がおかしいw
さて、話を戻しますが、それから夜中1時過ぎに学校へと向かった俺。
実は校舎1階のとある窓の鍵がちゃんと掛かってない事を俺は以前から知ってまして、そこがまだそのまま開いてたら入ろうという魂胆でした。
もしそこがダメならとっとと帰るつもりで・・・気味が悪いだけなんでw
校舎まで数十メーター、当然ながら、あっという間に到着です。
とある窓の鍵もちゃんと開いたままで、そうなるともう入るしかないというか、そこで怖いだのって引き返すのも間抜けな話なんで、とにかくは予定通りに進める事にしました。
窓から校舎内に侵入。
真っ暗ではあるものの、学校ってのは窓だらけなんで外からの光が入る分だけ明るいんですな。
校舎はベビーブームの時にでも建て増ししたのか、やたらと建物として横に長いんです。
つまり、それだけ廊下も長い訳で、廊下側に顔を覗かせると、遥か向こうまで100m以上も続く暗闇の一本道。
1つ2つ、屋内消火栓の赤いランプだけが光っている以外は人口の光は一切無し。
とにかく暗くて薄気味悪い。
俺の教室は確か3階で、階段を上ったら廊下に出てすぐ手前の教室でした。
暗い廊下を長々と歩く必要が無い分、気は楽だったものの、教室に着くまでは超ドキドキの心臓バクバク。
勿論、霊的なものに対する恐怖もあるにはあったんだけども、その時点で何よりも気掛かりだったのは、もし宿直で誰かしら居たり、警備員かなんかが見回りをしてたらどうしようって恐怖。
霊はビックリすれば済むだけかも知れないけども、相手が生身の人間だとなれば、見つかったら大目玉食らうのは必至。
下手すりゃ警察沙汰ですよ・・・そりゃ中学生にしたらリアルに怖い。
とにかく、見回りやら宿直の誰かが居るとしても、泥棒する訳じゃないから見つからなければ問題無い訳で、校内に入ってからは常に何かしら人為的な音がしないかに警戒してました。
勿論、こちらも出来るだけ音は立てない様に心掛けつつ。
階段を忍び足の急ぎ足で3階まで上り、廊下に顔を出して誰か居ないかを確認。
相変わらず廊下の奥の方は闇に溶け込んで見えなかったものの、とりあえず人が居る様な気配は無く、見回りなんかをしてるらしき音も無し。
という事で、そそくさと自分の教室へ。
前側のドアが開いたままになってたもんで、音を立てずに教室に滑り込むと、なんだか妙にホッとしたというか、とりあえず一息って感じの気分に。
ってのも、教室内は比較的明るかったんですよ、薄暗いながらも。
教室ってのは誰もが知る通り、窓側は大きめのサッシ窓が並んでるもんで、外からの光がダイレクトに入って来てるんですな。
んで、俺の教室はちょうど校門から直線状の位置にあったもんで、校門前の街路灯の光もわりと入って来てたんです。
そのおかげで廊下の倍ぐらいは明るくて、しかも教室は言わば自分のテリトリーなんでね、心理的にも随分と気が楽になったんだと思うんですよ。
やれやれと自分の席の机に腰掛けて、窓越しに校門の辺りなんかを眺めつつ再び聞き耳を立て、どうやら大丈夫そうだなと判断したところでタバコを一服w
いや、決して俺はベタなヤンキーの類じゃなかったんですがね、野蛮じゃない悪さはそこそこやってました・・・と言っても、酒とかタバコとか万引きぐらいのもんですが。
あれなんですよ、当時のウチの学校の不良連中ってのは、わざわざ目立つカッコまでしてワルぶってるクセに、タバコは休み時間にトイレでコソコソ吸ってたりしてたんですよ。
俺にしたら、それって 「はぁ?」 って感じで、不良の看板ぶら下げてんのに堂々と悪さも出来ないのって一番カッコ悪いと思ったんですな。
何と言うか・・・楽器だけは取り揃えてるのに一切演奏出来ないで自称・ミュージシャンを気取ってる的なね、そういうダサさが余りにもガキでアホで、そういうのと一緒にはされたくないんでベタにグレたりもしなかった訳ですよ。
まぁ、そもそも群れるのが嫌いな上に、アホにはアホと言っちゃうタイプだから無理なんですけどね。
とにかく、見回りにだけ警戒しつつタバコを2本吸って、肝心の時間割をチェックしたらやる事も無くなったもんで、とっとと帰る事にしました。
いくら教室が明るめだって言ったって、そもそもが薄暗いから長居する様な場所じゃない訳ですよ。
さて帰るかな・・・と、まずは入ってきたのと同じ教室の前側のドアまで行き、顔も出さずに耳を澄まして足音チェック。
見回りが居たとしても、静かな校内だから近場なら足音は絶対に聞こえるはずなんです。
もし聞こえたら身を隠す、聞こえなければ廊下をチェックして一気に階段へ移動・・・という計算でした。
ドアの前で耳を澄ますも、見回りらしき物音は一切無し。
少し風の強い日だったもんで、校舎裏の雑木がざわめく音が廊下のガラス越しに小さく聞こえる程度でした。
よし、大丈夫そうだな・・・と、予定通りに今度は廊下に顔を出し、足音が届いて来ない廊下の向こう側に誰か居ないか確認。
懐中電灯的な光は無く、廊下灯も当然暗いままで、見回りが居る様子も無い。
「よしよし、大丈夫だ。」 と小さく呟いて階段へ向かおうとした瞬間、少し離れた場所からの物音。
正直、その瞬間で一気に緊張しましたよ。
「やっぱり誰かしら見回りが居たんだ」 と思ったんです。
だから咄嗟に教室内に身体を戻し、開いてるドアからは死角になるであろう位置に移動して息を殺しました。
そのまま1、2分ぐらいはじっとしてたんですが、その間に思ったんですよ・・・いや、おかしいと。

この見取り図で説明すると、物音は俺の教室から3つ4つ向こうの教室内から聞こえてきた感じだったんです。
勿論、そこは普通の教室で、宿直が寝泊りする様な場所でもない訳ですよ。
だから、俺が気付かなかっただけで、最初からそこに誰か居たと考えるのは無理がある。
第一、もし見回りならせめて懐中電灯の類ぐらいは持っててあちこち照らしてるはずだし、真っ暗な校内を真っ暗なまま歩く物好きの見回りなんか居ませんわな、常識的に。
それに気付いてしまうと・・・物音の正体が何だったのかですよね。

これは教室内から廊下に顔を出して見た光景を再現したCG。
こういった感じに廊下の突き当たりの方は暗すぎて全くの闇。
まぁ、これはあくまで絵として見易くしたもので、実際の廊下の雰囲気はというと・・・

こんな感じ。
まさしく真っ暗。
廊下にも窓が向こうまで並んでるものの、校舎裏が雑木林の急斜面なもんで光がほとんど入って来てない状況でした。
音が聞こえたのはこの暗闇の状況下。
さて、物音の正体が人じゃないとすれば何なのか。
そこですぐ霊の仕業にするのは簡単だけども、俺はその辺り冷静に考えられたりするもんで、まずは外がわりと強風な点を考えてみたんです。
もし、物音の聞こえた教室の窓が閉め忘れかなんかで少し開いてたとしたら、強風に煽られたカーテンが揺れて椅子でも巻き込んだのかな・・・とか。
実際、その聞こえた物音ってのをちょっと再現して作ってみました。
若干聴き易くしてあるものの、大体こんな感じの音でした。
いわゆる、学校の机や椅子を引き摺った時のあの独特の音ですよね。
あの音が何個か向こうの教室の辺りから聞こえてきたんです。
外の強風が何かしらの原因で教室に入り込んだとしても、椅子や机を動かす事はまず無い。
では、窓際のカーテンが強風によって帆の様に煽られ、そのカーテンが当たった事によって椅子や机が動いたのか。
それはあり得ないとは言い難いけども、そうだとしたら音の鳴り方が不自然過ぎるんですよ。
音は一度や二度だけ聞こえた訳じゃないし、数秒間隔ぐらいで不均等な鳴り方をしてたんです。
つまり、カーテンが煽られたとは考えづらい音。
じゃあ・・・他にどんな理由が考えられる? と行き詰まってしまったところで、ようやくこれはちょっとヤバいんじゃないかと焦ったんです。
再びドアの前から廊下に顔を出して息を殺すと、やっぱり時折同じ様な音が聞こえてきました。
勿論、その音の方向に目を向けても懐中電灯の光も足音も無く、ただただ椅子や机を少しずつ引き摺る様な音だけが続いてたんです。
あぁ、これはちょっと本気でヤバいな・・・と思ったもんで、極めて速やかに階段へと移動し、出来るだけ急ぎ足で1階へと逃亡。
息つく間も無く入って来た窓から外に脱出すると、一目散に家へと帰りました。
ハィ、これだけの話です。
何を見たって話でもないし、得体の知れない存在に何かされたって訳でもないんですが、あれはどう考えても説明が付けられない不気味な体験でした。
夜の学校・・・やっぱり何か得体の知れない存在が居るって事があるのかも知れませんな。
勿論、その後は二度と夜中の学校に忍び込む様な真似はしなかったし、この話は当時も含めて今まで同級生や先生には一切話してません。
怪談話にしては地味なんでそれほど語る機会も無いんですが、一応は夏の終わりの一怪談って事で書いてみました。