トランプ氏への期待はずれな現実


トランプ前大統領の最近の発言には、失望せざるを得ない。ロシアの軍事侵攻に関してプーチンを擁護するかのような言動を繰り返し、力による現状変更を容認する姿勢を見せている。これは到底許されるものではない。



ウクライナ侵攻に関しては、ロシア側にも言い分があるという意見は理解できる。NATOの東方拡大に対する警戒感や、アメリカを中心とする西側諸国の外交戦略に対する反発が、ロシアの行動を誘発した部分もあるだろう。筆者自身も、すべての責任をロシアに押し付ける単純な見方には賛同しない。しかし、それでもなお、武力によって国境を変更する行為をアメリカが黙認するようになれば、世界の秩序もモラルも崩壊してしまう。


アメリカはこれまで、少なくとも建前上は「自由と民主主義の擁護者」として振る舞ってきた。だが、トランプ氏の最近の発言を聞く限り、その理念すらも揺らいでいるように思えてならない。


直近では、台湾有事についてのコメントを避けつつ、中国の習近平に対してアメリカへの投資を促すなど、単なる損得勘定で動いているように見える。中国を批判することもあれば、融和的な態度を取ることもあり、一貫性がない。結局のところ、彼にとって最優先なのは「アメリカの利益」ではなく、「自分の利益」なのではないか。


期待されていたトランプ像


2020年の大統領選挙では、バイデン陣営に敗れたものの、不正選挙疑惑が取り沙汰され、「バイデンジャンプ」などの言葉が広まった。その後の民主党政権下での混乱を目の当たりにすれば、否が応でもトランプ氏への期待が再燃したのは当然だろう。


「トランプなら何とかしてくれる」

「ディープステート(DS)に立ち向かう光の戦士」


そんな勇ましい陰謀論が囁かれ、本人もそれに呼応するかのように支持者を煽った。


「DSをぶち壊す」

「ケネディ暗殺の真相を明かす」


しかし、彼が実際に何かを暴露したことがあっただろうか。


 裏切られた期待


ケネディ暗殺の真相は、いつ明らかになるのか。


安倍元総理の事件についても、アメリカが握っているかもしれない情報を公開してくれるのではないかと期待したが、それも期待はずれに終わりそうだ。


そして何よりも、トランプ氏が本当に「世界の秩序を守る側の政治家」であるならば、ロシアの侵攻を擁護するような発言をするはずがない。


彼は今、アメリカ国内の支持を得るために、ウクライナ支援に批判的な層に迎合している。しかし、それが結果としてどのような影響を及ぼすかを考えているのだろうか。アメリカが世界の警察をやめ、力による現状変更を容認し続ければ、次に標的となるのは台湾、そして日本かもしれない。


仮にロシアが北海道に侵攻したとしても、おそらくトランプ氏は黙認するだろう。彼の関心は、アメリカの国内事情と自身の支持率にしかない。


 日本はどうするべきか


かつて、日本はアメリカの庇護のもとで国を発展させてきた。しかし、国際社会が混乱し、アメリカが内向きになっている今、日本はもはや「アメリカに頼れば大丈夫」という時代ではなくなっている。


では、日本はどうするべきなのか。


まず、現実を直視しなければならない。トランプ氏であれバイデン氏であれ、アメリカが日本のために無条件で動くことはない。日本自身が独自の外交・安全保障戦略を構築し、自国の防衛を真剣に考えるべき時が来ている。


また、情報戦にも敏感になる必要がある。トランプ氏を英雄視しすぎることも、逆にバイデン政権に無条件で期待することも、どちらも危険だ。どの国も最終的には自国の利益を優先する。その冷徹な現実を忘れたとき、日本は取り返しのつかない状況に追い込まれるかもしれない。


世界は今、混沌としている。日本の未来も不透明だ。しかし、少なくとも私たちにできることは、他国のリーダーに過度な期待を抱くのをやめ、冷静に現実を見つめることだろう。