筑波海軍航空隊の運動会で、女装した海軍軍人。

　戦前の帝国陸海軍では、時折女装して写っている写真などを見かけることがあります。

　でも私自身は自衛隊では記念行事の際にも、女装した自衛隊員さんを普通見たことがありません。現在はどうなっているんでしょうか。自衛隊の方はよくわかりません。

戦前のこのような催しは、男性一色の世界が極端化して女性的な雰囲気への要望が高まり、その結果女装などの余興が始まったのではないかと思います。

女装した海軍軍人のアップ。

　逆もしかりで、女性ばかりが集まる世界では、今度は男装する宝塚が始まるのでしょう。極端へ走ると、ついには反対方向へ転落する現象はよく見られますね。

好きで入れ込んでいた人に裏切られ、「好き」が憎しみに変わるというのもよくあるパターンです。

もっとも「裏切られた」と思うのも本人がそう思い込んでいるだけで、「裏切った相手」には露ほども「裏切った」という自覚はないのでしょう。そこにはお互いの見解の相違があるだけだと思いますが。

　話が脇道にそれてしまいましたが、σ(^_^;) 映画「戦場にかける橋」でも、日本軍捕虜収容所で英米軍の捕虜が演芸会で女装する場面が見られます。

日本軍捕虜収容所の演芸会で。ステージで踊る女装した英米軍捕虜（映画）

　こうして見ると、国を問わず軍隊では女装など女性カラーを演出した余興が結構催されていたのかもしれません。

　大岡昇平の小説『俘虜記』にも、フィリピンの米軍捕虜収容所で「演芸大会」と称して、日本軍捕虜による女装劇が演じられていた場面が登場します。

ロマンティックコメディ（？）を演じる英米軍捕虜。（映画）

　「進藤の名が収容所に鳴り響いたのは、戦争も終りに近く、毎週各中隊で演芸大会が催されるようになってからである。

或る夜、わが中隊の俘虜達が、それぞれ流行歌やお国自慢の民謡などを聞かせた後、彼が飛び入りで『姑娘（クーニャン）の歌』を歌った。かなり音域の広い裏声で、俘虜には完全な女性と聞えた」

　こうして一部捕虜の「女性化」がエスカレートしていきました。

『俘虜記』の著者、大岡昇平

　「競争があり鞘当があった。わが特攻隊員が化粧し始めたのも無論競争の仲間入りするためである」

　「歌姫進藤の影響は俘虜の一部を必要以上に男性化すると同時に、他の一部を必要以上に女性化した。後演芸大会が進歩して芝居が演ぜられるに至って出現した女形は、いずれも進藤に倣って男子を誘惑するのを好んだ。

　進藤は普段でも夜は女子の服装を着用していたが、そういう女形達も出演によって得た様々の衣装をまとって、酒宴の席では嬌声を発して酒を注ぎ、隣人の膝に凭（もた）れかかった。

それほど女性化する容姿と才能を持たない者でも、志ある者は赤や黄に染めた布をタバンのように頭に巻き、この風習は復員列車の中まで持ち越された」

　『俘虜記』は小説なので、必ずしも史実を忠実に伝えているとは限らないかもしれません。

　しかし久しく見ない身内が、奇矯な風俗を纏った復員軍人として帰還したならば・・・、留守家族は一体何と思ったのでしょうか。(^_^;)

海軍軍人の女装。当時の女性のヘアスタイルはパッツンとしたボブ（おかっぱ）が主流だったのでしょうね。

女装する軍人