■満州での溥儀暗殺(『ジパング』7巻)
話は前後してしまいますが、11巻のヒトラー暗殺未遂前には満州国皇帝・溥儀(ふぎ)を草加は自ら暗殺しています。
これは溥儀暗殺によって満州国軍と関東軍の間に疑心を生じさせ、軍事的混乱をはかり日中戦争を早く収束させて早期講和を謀るのが目的でした。
溥儀を捕捉した草加は、最初に11巻の津田の時と同じように溥儀に銃を持たせ、自ら自殺するか、草加を撃って生き延びるかの選択を迫ります。
そして彼はここでも殺害する相手に最初に選択肢を与えています。
決断の末、溥儀は自殺しようとするがそれもできず、今度は銃口を草加に向け発砲しますが震えてうまく撃てず、弾は草加をかすめただけでした。
溥儀(右)は生き延びるチャンスがあったものの結局生かせず・・・
弾が外れると、草加は溥儀に
「閣下ご自身の自由な選択に・・心より敬意を表します。」
と語り、やおら銃を溥儀に向け発射します。現実世界では溥儀は戦後まで生き延びますが、『ジパング』内ではこれが彼の最期でした。
■スバス・チャンドラ・ボーズとの会談(『ジパング』17巻)
草加は日本に渡航してきたインド独立運動の革命家、スバス・チャンドラ・ボーズと会談をします。ボーズはイギリスからのインド独立をめざし、「敵の敵は味方」という観点から、イギリスの敵国日本に接近してきました。
その時のボーズと草加との会話です。
草加:「私があなた(ボーズ)と違う点はひとつ・・・(革命に)成功すればあなたは民族の英雄となれる・・」
草加:「私はたとえ私の意とする世界が現出したとしても・・・」
スバス・チャンドラ・ボーズ
草加:「歴史と言う激流の海で・・・一抹の泡と消えていくでしょう。」
ここで草加は自分がヒーローになりたいとか、戦後の日本で活躍したいという意図はさらさら持っていないことが見て取れます。
■滝中佐に原爆計画を打ち明ける(『ジパング』20巻)
「みらい」の梅津艦長が草加の原爆製造計画を阻止して死んだため、草加と同期の滝中佐はその秘密裏の計画を嗅ぎつけます。
滝は「みらい」の資料室で、草加に日本の原爆投下の未来を見せられ驚愕します。草加はこの戦争を一刻も早く終わらせるために原爆を作るのだと滝に語り、他に惨劇を止める手段は無いと説得します。
草加:「この『みらい』に救われ、このこと(日本の敗戦)を知ったとすれば、(滝も)私と同じ結論に至ったと思う。
帝国陸海軍政府ともに(原爆に)関与は無い。あくまで草加拓海個人として、(原爆を)完成させ、使用するものだ。」
草加:「滝・・・すべて知ったうえで・・・あなたには無関係なままでいてほしい・・・それが何を意味するか、あなたなら分かるはずだ。」
その告白に息をのむ滝中佐。
草加は原爆も個人所有とし、原爆投下計画もあくまで一個人の意志として遂行し、政府や軍が関与することを望みませんでした。
彼は名声を求めず、私腹を肥やすことも無く、最期には本人の望み通り、一抹の泡となってマリアナ沖の海へ消えていきます。(iДi)
それにしても昨今の政治を見るにつけ、こんな人物が中央に一人でもいないものだろうかと嘆息する日々です。(-_-;)