『シャドウズ・エッジ』を過日に鑑賞。

ジャッキー・チェン主演作であるのと同時に、レオン・カーフェイの主演作でもあります。

ジャッキー・チェンとレオン・カーフェイの共演は……2009年『建国大業』を別格とすれぱ、2006年『THE MYTH 神話』以来、それ以前には2004年『花都大戦 ツインズ・エフェクトⅡ』、1991年『炎の大捜査線』での共演がありました。加えて、レオン・カーフェイの姿を日本のスクリーンで見るのも10年ぶり位になります。

ジャッキー・チェンが演じるのは、日本で言う処の見当たり捜査を専門とした元ベテラン刑事。マカオを舞台としたサイバー犯罪グループ摘発の為に現役復帰し、若い捜査員を率いて追跡班を結成します。
レオン・カーフェイが演じるのは、そのサイバー犯罪グループの首領で影と呼ばれる男。伝説的かつ正体不明の男で、義理の息子達を率いて大胆不敵な犯罪を実行します。

本作は善悪の対決を描いていますから、一応ジャッキー・チェン視点ストーリーではありますが、レオン・カーフェイ視点のピカレスクなストーリーして見る事も出来ます。
レオン・カーフェイと言えば、個人的には………
清朝最後の皇帝 溥儀を演じた『火龍』
チョウ・ユンファ共演『アゲイン 明日への誓い』『ゴッド・ギャンブラー 完結編』
フランス・イギリス合作『愛人 ラマン』
ウォン・カーウァイ監督『楽園の瑕』 その副産物的作品『大英雄』
………等が印象に残っていますが、本作のレオン・カーフェイは其れ等の作品とは全く異なる一面を見せます。
正直な処、キャラクターの深みはジャッキー・チェン演じる刑事ホワンより、レオン・カーフェイの犯罪グループのボスのフーの方があります。
犯罪グループのメンバーを息子の様に可愛がる一方で、目的遂行の為には自ら手にかけるサイコパスぶりが目を引きます。

出色なのは、やはりクライマックスのジャッキーvsレオンの対決です。御年71歳のジャッキーと御年67歳のレオンに『ヤング・マスター 師弟出馬』や『スパルタンX』の様なアクションを求めるのは無理というものですが、本作では上下左右の空間を大きく使った格闘ではなく、とある状況を設定する事で左右の動きに特化した様なスタイルで、ダイナミックさではなくスリリングな要素を強調したアクションとなっています。それでも時折見せるジャッキー・チェンの目の表情が1980年代の主演作と同じになる瞬間があります。

この場面で描かれるのは、善と悪、刑事と犯罪者という構図も然ることながら、流儀を違えた者の対決というカラーが色濃く出ています。
同じ様にチームで行動しながら、最後の最後までチームを信用する情を持ったホワンと、事と次第によってはチームを切り捨てる非情さを持ったフー………故に、クライマックスでフーが街中の路地で、ホワン指揮下の追跡班に追いつめられていく様が見事なのです。

全盛期のジャッキー・チェン主演作と言えば、基本的にはジャッキーのワンマンショーでしたが、晩年に於いてスタイルを変えつつ、それでもアクション映画に主演を続ける其の姿勢は正にスーパースターです。そしてレオン・カーフェイのキャリアと年齢を重ねた其の姿は正に名優です。本作はスーパースターと名優の激突によって傑作に成りえた訳です。

※丁度40年前の1985年12月にもジャッキー・チェン主演作は日本のスクリーンに登場していました。
『ポリス・ストーリー 香港国際警察』
『コクーン』併映
1985年12月14日 公開前日の新聞広告(東海地区)

日本では、2025年1月17日より劇場公開された『トワイライト・ウォリアーズ  決戦!九龍城砦』で改めて注目された香港映画ですが、年末に『シャドウズ・エッジ』の劇場公開で、其の充実ぶりを知らしめました。


『シャドウズ・エッジ』
捕风追影
THE SHADOW'S EDGE
2025年 香港/中国
【出演】
ジャッキー・チェン
レオン・カーフェイ
チャン・ツイフォン
ツーシャー
ジュン
ジョウ・ジェンジエ
ワン・ジーイー
ラン・ユェティン
チェイニー・リン
リー・ジョークン
【監督】
ラリー・ヤン