バイト先の頼れる先輩から唐突に言われた一言に自分は驚きが隠せなかった。
「俺、バツイチなんだけどさ」
彼女がいない自分を面白そうにいじっていた先輩が、サラッと口にした言葉が自分の胸になぜか刺さった。
生きてきた中で、2ヶ月ほどしか誰かと愛しあっていた期間がない自分にとっては、永遠の愛の誓いを白紙にすることを想像することさえできなかった。
こんなロマンチックのようなことを考えているのは、なんとロマンチックなクリスマスイブだ。クリスマスにラーメンを食べに来る人なんていないだろうと心の中で静かに怒りながら、茶色く光っている煮卵を睨んでいた
そんなクリスマスの店内にある子連れの女性が訪れた。
魚介醤油つけ麺をひとつ頼み、子どもに少しずつ分けながら食べていた。クリスマスの日にラーメンなんて物好きな人もいたもんだ。と心の中で思いながら自分は接客した。
すると、バイト先の先輩が近づいていく。小さな子どもに笑顔で挨拶している。女性とも何かを話している。自分の知らない常連さんなのであろうと思いながら自分は流していた。
しかし、話しは続き、長々と話した先輩が帰ってきた。先輩の手にはプレゼントであろう紙袋があった。
その時、自分の頭の中で自分だけが見れるドラマが始まっていた。
あの女性が前の奥さんだったのだ。
元奥さんをバイト先に呼んだのだ。
自分はそう考えたが、先輩に聞けなかったので、推測にしかならなかった。
彼女らはつけ麺を食べ終わり、すぐに店を出て行った。お店の外から子どもが先輩を見て手を振っているのを自分は少し眺め、目をそらした。
あの2人は先輩とはどんな関係だったのかは知らないが、なんとなく愛を感じた。
ああ、誰かを愛したい。そして誰かに愛されたい。
自分の中にはこの想いだけが残っていた。
それは誰でも良いわけでなく、本当に本気で愛することの人に出会いたいという気持ちからだろう。
その恋が実っても、枯れ果てても自分は構わない。
そこに確かな愛があれば、それでいい。
ああ、愛したい。愛されたい。