今回は少々シリアスなお話をさせて頂きます… と言つても私のこと、何処で脱線するかは分かりませんが…。
近ごろ私の周囲に「鬱(うつ)病」を患ふ方がとても増えました。
それが、年齢でも性格でも「この人に限つて左様なことは無いだらう」といふ人に、なぜか多いのです。
まず、お一人は年齢50半ば、宅配便の班長です。一定の地域を8名くらひで担当するのですが、班内では「親分」と呼ばれ、豪胆な性格でした。と言ふより「豪胆」を装つてをられたのやもしれません。少々のトラブルでもさらりとこなす人でしたが、去年のお歳暮期、余りに配達荷物が多過ぎるのと、配達先不在で持ち帰る荷物が多いのに加へ、配達車が故障したりで頭がパニックに陥つたのでせう。挙動がおかしくなつてしまひ、会社から指定病院に入院、そのまま今も復帰されてをりません。
次は、拳法の町道場の先生で、会社勤めをされてゐる方でした。この方も武道の師範をされてゐるほどですから、実に男性的で豪放な方でしたが、勤め先が現場から内勤になつた途端、鬱病を患はれ、それから一年程で亡くなられました。どのやうな亡くなり方をされたのかは、ご家族の寡黙さから周囲の人々も知りません。
他にも、地質調査の工事中に5mの穴の中へ落下、全く怪我もなく、一時は周囲から「不死身の男」と称へられてゐましたが、体はピンピンしてゐるにも拘はらず、そのまま家庭から出られなくなり、現在に至つてをられます。
素人ゆへ詳しいことは存じませんが、今の複雑な社会環境の中では、鬱病はいつどこで誰が陥るか判らない、厄介な現代病だといふことは確かなやうです。
現在、大きな会社では「企業内カウンセラー」が設置されてゐるところが多うございます。
これは4、5年前のことですが、面白い出来事がございました。私が副業で勤めてをります営業所(運送会社)の掲示板に「悩みを持ち続けないで」「いつでも相談を」「個人の秘密は絶対に守ります」と謳はれたA1サイズの大きなポスターが貼られてをり、電話番号も大書してありました。
それを見た私よりも年長の同僚Mさんが、よせばいいのに「よっしゃ!体がきついのに給料が少ないから、訴へてきてやらう」と、電話をかけたのです。あくまで目的は精神的なものだからと、我々は説得しましたが、彼は聞く耳を持ちません。
すると翌日、本社からスーツを着た3人くらひの地位の高さうな男性が来て「Mさんを呼んでください」といふのです。Mさんは、ものものしい雰囲気の中、ビルの中にある会議室へ連れて行かれました。Mさんはそれでも、言ひたい事は言つたやうでした。
次の日、何といふことでせう。このMさんの相談内容が、営業所長以下、副支店長、主任、事務員に至るまで全員にあまねく知られてゐたのです。
Mさんは、営業所長に詰め寄り「秘密厳守ぢやなかつたんですか!?」と真赤になつて訴へましたが、所長は「昨日あれから、管理職全員集められて緊急会議があつてなー。名前は伏せとるけど、そんなん皆あんたやて知つとるがなー」
Mさんは、恥ずかしさの余り翌日から仕事場に来なくなりました。
この出来事で解ることは、その当時(と言つても5年程前ですが)まだ世間一般にカウンセリングといふものが理解されてゐなかつたことです。一般の勤労者はもちろん、大手企業の担当部署でさへ何も解つてゐなかつたゆへの悲劇といふことが出来ると思ひます。
いまや建物内の「禁煙」は当たり前のことですが、ひと昔前は映画館のスクリーンが霞むほど煙草の煙がたゆたつてゐたものです。今でこそ「セクハラ厳禁」なんて小学生でも知つてをりますが、ひと昔前は居酒屋へ行けば「おかはり自由、おさはり自由!」などと言つて店のお姐ちやんのお尻を触つてくるオヤジが放し飼ひになつてゐたものです。私が住んでゐる地域だけかも知れませんが(汗)
予想通り話が脱線してしまひましたが、常識は時代と共に変はつてまいります。それに従いてゆくことが出来ない人が出てくるのは当然のことです。でも職場が老弱男女で構成されてゐる以上、全従業員にとつて居心地良いものにしてゆくことは、わが国産業にとつて最重要課題と言へるでせう。


