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古稀を過ぎたトリトンのブログ

団塊世代よりも年下で、
でも新人類より年上で…
昭和30年代生まれの価値観にこだはります

 

 質屋ではお金を貸す一方で、質流品や安価な仕入れ商品(合皮ベルト、財布など)を店頭で販売する店が大多数かと存じます。

 

 過日「蔵の在る家〈5〉」へのコメントで “Colin” 様も仰せになつてをりますやうに、質屋の店頭の古い置物やアンティークを見て回ることを趣味にされてゐる方も多いでせうし、高価な宝石や時計など価値の変動の少ない品物を買つて財産の保護に努める方もいらつしやいます。

 

 

 「親父さん、あのロレックス見せてえな」と頼んで陳列品の時計を出させ、詳しく見る振りをしながら、「その隣のラドーも見せて」と言ひつつ隙を窺ひ、父が顔を引つ込めた瞬間、ロレックスを持ち逃げするといふ悪徳の輩も居りました。父が「こらっ!」と大声で叫ぶ声と、靴を突っかけて外へ追跡に飛び出す兄(小学校高学年)の後ろ姿は、サスペンスドラマのやうに私の記憶に残つてをります。

 この時は、兄の機転が功を奏しました。悪党はまさか子供に尾行されてをるとはつゆ知らず、自宅の玄関に帰つた処を兄に見られ、その30分後、見事お巡りさんに御用となりました。

 失敗談もあります。同じやうに手柄を立てむと母が家を飛び出さうとした…そこまでは良かつたのですが、ガラス戸に鍵がかかつてゐたのに気付かず激突したため、母がガラスで顔を切り怪我をしたこともありました。

 

 人様に金を貸すくらひですから、質屋には常時数十万円ほどの現金が置いてあります。世の中には、それを狙ふ不逞の輩も居ります。

 

 或る日、たまたま父が昼食のため席を外した時のことでした。私どもの店では、カウンターと、天井から埋め込んだ強化ガラスの仕切りとの間に20㎝強ほどの隙間が有りました。並の大人では、この隙間は通れまいと高を括つてゐたのです。

 

 

 15分ほどで食事を済ませた父が店に来て、引出しの中を見たところ、不思議なことに100円・50円・10円の小銭が全て無くなつてゐたのです。(当時はまだ500円玉は発行されてをりませんでした。)そのくせ、何と1万円をはじめ札束は手つかずで残つてをりました。店を荒らした形跡もなく、一体何が起きたのか… 家の者は首を傾げるばかりでした。

 報せを聞いて担当の警察官が訪ねてきました。その話を総合すれば、どうやら犯人は子供を使つて店の中に忍び込ませたのだらうといふ結論でした。恐らくいたいけな小さな子だつたのでせう。お金と言ふのは紙ではなく金属の丸いものだといふ、その程度の認識の小児だつたのではないか… そう思はれるのでした。不思議な話ですね。

 

 強盗でもなく被害額も少ないので、一応事件としては記録するが、今後はよく注意するやうにといふ結論でしたが、今も忘れられない、私の幼な心に残る出来事です。

 

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