フリオ君の友人、恋人、親類らと交友を重ねるうちに、ビザ関連以外にも様々な世話をやくやうになりました。それらの大半は、日々の生活のたわいもない事ばかりです。
私は未だ海外旅行に行つたことがありませんが、おそらく行くことができた暁には、その国の人から「かういふことを助けてもらふと嬉しいだらうなあ」と想像することは出来ます。私の時間が許す限り、さういつた彼らの便宜に応ゑてやることは、楽しいことでもありました。
●カルロスの場合
カルロスはマリアの妹の夫で、残念ながら先年若くして癌で亡くなりました。
初来日の時には、当時まだ国際空港だつた伊丹空港へ、車に親類を乗せて出迎へに参りました。彼が東洋ゴム伊丹工場で働くうちに、シリコンアレルギーで自慢の色白顔が赤くなつてしまひ、皮膚科へ同行してやつたこともございました。
彼からの少し変はつた頼まれ事がございました。ボリビア人の彼はスペイン語を話しますが、意外と申しますか、英語が全く読めないのです。
彼はカラオケでスタイリスティックスの Only You を歌ひたいが、歌詞の英語が読めないのでローマ字で書き直してくれと、私に頼むのでした。Only you を彼に読ませると「オンリジョウ」と発音してしまひ、同僚から「お前、外人のくせに英語が読めんのか」と笑はれたといふ次第。スペイン語も同じアルファベットを使用するのですから、日本人からすれば若干読み方が変はるだけだと思ふのですが、一寸した発音の違ひは、むしろ難しいのやもしれません。
已む無く私は、onli-iu といつた具合に、全部の歌詞を日本語ローマ字風に書き直すのでしたが、これは思つたより難しい作業です。言はば「英語をスペイン語で発音できるやうに日本語(ローマ字)に直す」といふのですから。その後カルロスが皆に笑はれずに歌へたのかどうか、その首尾は聞いてをりません。
●ジーナの場合
オリビア・ニュートン・ジョン似の彼女はまだ20歳そこそこの女性。夜はスナック、昼間は食堂で働く彼女は、誰もが振り向く可憐な美女でした。彼女は日本での食事が体に適はなかつたのか、強い便秘を患つてしまひました。
強い便秘の行き着く処は「痔」にほかなりません。悩みを打ち明けられた私は、日本語が少しできるボリビア女性カルメンを伴つて、私自身も通つたことのある、JR立花駅前のT肛門科へ同行することになりました。残念ながら男性が診療室へ入る訳にいかないので、カルメンに立会ひを頼みました。診療後しばらくすると便通があつたので、取り敢へづ所期の目的を果たすことが出来ました。
待合室で私は「ジーナはどうしてヂーナんだらう」と親父ギャグを飛ばしてをりましたが、残念ながらボリビア人たちには理解不能だつたやうです。
このジーナが10日前、突然仕事場に電話をかけて参りました。私には言葉は殆ど理解できませんでしたが、今では子どもも居り、幸せさうな家族写真をスカイプに送つてきてくれたのは嬉しい出来事です。

