カメムシが繁殖した年の寒さは厳しい  | 還暦を過ぎたトリトンのブログ

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団塊世代よりも年下で、
でも新人類より年上で…
昭和30年代生まれの価値観にこだはります

 

 表題の格言、と申しますかジンクスを、耳にされたことはございませんか?

 これが事実だとすると、今年の冬は「大氷河期」を迎へることになるやも知れません。

 

 読者の皆様の地方では如何でせうか。

 

 たとへば私が住まひする処は兵庫県伊丹市で、マンションの8階部分でございます。一般的に、この高さであれば、1、2階より蝿も蚊も少ないと言はれます。ところがどすこい、私の居住スペースや玄関のみならず、エレベーターホールの天井、照明器具、エレベーターそのもののドアにまで、明るい緑色のカメムシが群生してをるのでございます。

 

 

 カメムシは室の周囲の網戸にも駐まつてをりますゆへ、帰宅時や洗濯物を干す際の隙を狙つて、彼らは居住スペースに侵入することも辞さぬ勢ひです。

 

 妻は虫が大嫌ひですゆへ、カメムシを捕まへることができません。そこで、掃除機の長いスティックを用ひて遠いところからこれを吸い込んで捕獲致すのでありますが、皆様、これだけは断じて真似てはなりません。カメムシを掃除機本体の中に吸い込んでも、彼自身が死ぬわけではなく、むしろ捕獲されたショックも相まつて、自らの強烈な匂ひを存分に発するのでございます。

 

 掃除機に吸引された空気は、循環して再び機械の外へ排出されるのですから、何のことはない、カメムシ君の発した匂ひはまた部屋の中へ吐き出されるのであり、家中がこの匂ひに汚染される結果を招きます。過日、我が家はこのメカニズムにより、パニックに陥れられたことを此処にご報告申し上げます。

 

 

 さて、私がこの匂ひを逃れて仕事場へ通勤いたしをりますと、尼崎駅のエスカレーターで私のすぐ前に立つてをられた妙齢の若い女性が目に止まりました。と言ふより、その女性の背中に視線が止まつたのでございます。

 彼女のジャケットの背中には、先ほど別れてきたものと同種のカメムシが止まつてゐるではありませんか。やはり、カメムシの群生は私の住む街だけではなかつたことを確信した瞬間でもございました。

 私は彼女に、背中に止まつた虫の存在を知らしめたものかどうか、悩みました。無言で指パッチンをして虫を飛ばさうかとも考へましたが、この虫はその一瞬でさへ逃さず指に匂ひを付着させます。加へて、指先が誤つて彼女の背中に当たらうものなら、私に痴漢の疑ひが掛かりかねません。冷静な判断と苦悩の末、私はこれを放置することを決意しました。

 

 この時に思ひ出した風景がございます。

 50年も昔のこと、私が学ランを着込んで大学内を歩いてをりますと、隣に居た2人の学生が私の方をみてヒソヒソと言葉を交はしてゐるのです。初めは無視してをりましたが、今度はわずか後方から尚も指さして私の噂をしてゐるやうに感じました。

 私は遂に業を煮やして「ワレ、俺の顔に何か付いとんのかい!」とどやしつけますと、その2人。「い、いや顔ぢやなくて、袖です」と答へるので、ふと学ランの左袖口を見ますと、何と大きなスズメバチが止まつてゐるではありませんか(汗)。「ギョッ」と叫びさうになる自分を必死で抑へ、右手の中指でハチの横腹あたりをパッチンしました。それは恰度、近くのベンチに座る女学生の方へ飛ばされてゆき、彼女が「ギョエ~~ッ!」と声を発し地面にヘタリ込むのを後目に、私は平然を装つて足早にその場を立ち去るのでございました。         <完>