生き返りゲーム -2ページ目

5人です それと近況報告です

みなさんこんにちは

策羅です


今日の更新は小説ではありません


みなさま常日頃より


「時代転換者」の愛読をありがとうございます


わたしとしてもうれしい限りです



さて、本日は

皆様も知っているであろう


セロ、イギリ、ポプール、クラナ、ガデイン

の5人



挿絵も時々書いておりますが

あまり出てきておりませんし


特にセロなど主人公なのに

まったく絵にはなっていないです


ポプールあたりが

結構出ているかもしれません


皆様の中にも

イメージとしては

浮かんでいるかもしれません


それを一括して確定のようなものに変えるために


今日は5人の絵を用意しました



及ばずながら自分で書いたため

見るに耐えないかもしれません


画質もそれほどよくないですし



これから変わる可能性まであります(笑



ですのでひとまずこれは

一時段階のようなものとして

考えてくださると幸いです




セロ



なかなかうまく書けたセロ






イギリ



イギリ=メデュール





クラナ



クラナ・マーキ







ポプール



ポプール=ローゼリック






ガデイン


ガデイン・サンズ






いかがでしょうか


不満の声が聞こえてきそうです(笑



画質が悪いこと

さらに即興で書いたため

線もばらついています


そしてなにより

僕の画力が追いついてくれません(笑



この画像を基にした感じで

どうぞよろしくおねがいします



そしてこれからも

「時代転換者」をどうぞよろしくおねがいします



                                  策羅







追伸

「時代転換者」というタイトルを

かえるかもしれません


第二十一話 逃走劇とイギリのコロシ

人は変わることができる

 変わることは進化でもあるし

退化でもあるかもしれない


どちらにもいえるのが

 今までの自分と違うってこと


自分を捨てる

 昔の自分を


今の自分を誇るために

 昔の自分が情けないから


だから俺は変わりたいんだ





小さき勇者を

真の男を


気を失った最高の男を

セロは抱きかかえていた


「ポプール」

ついつぶやいたその言葉には

尊敬の気持ちが入っていた


後ろをちらりと見て

ガデインが卑弥呼を抱きかかえ

セロをみて頷くのを確認してから

セロは走り出した


ひとまず外に運ぶ

今は逃げる!


それが最善の道だ



セロも足が遅いほうではないと思っている

しかし大の男ひとりを持った状態では

そう早く走れない


「いてっ」

ポプールのなにかがセロの背中あたりに当たる

ポプールの武器だった

さっき見たときと変形している


どうやらミコト戦で

トリガーをひいたのだろう


こうも変化するものなのか

ポプールの武器は荒々しくなっていた


今にもセロに襲い掛かってきそうなくらい


ガデインは力があるようで

そう変わりは内容だが

もともと遅いので

ちょうどスピードはセロと同じくらいだった


横をクラナが走る


このペースならついてこれるだろう


(あれ?イギリは・・・?)


イギリがいない


と思った瞬間

イギリがセロの右側から追い抜いていった


「おい!おまえ・・・」


イギリは答えずにセロたちのちょうど10mくらい前を走る


「なに考えてんだ・・・?」

相変わらずこいつの考えていることはわけがわからない

しかしなにかがある。それがこの男イギリだった


セロはいろいろと勘繰っていたが


「セ・セロ!今からどっどこいくのっ!?」

クラナは息が上がったのか

途中途中 くぎれながら話した


「そうだなぁ・・・さっ最初の木のとこ!」

セロは疲れを悟られないように話そうとしたが

やはりわかってしまったようだ


そんなセロをみて、

「ポプール あたしがもってあげよーか?」

と、意地悪そうに笑った


「お・・・クラナさんだって疲れてるじゃん」


お前―――といいそうになるのを

ギリギリで止めたが

いきなり

クラナ――と呼び捨てにするのもなんだか

と思ってつい「さん」付けしてしまったのだった


「あははは。クラナさんって何よ  

 クラナ様でいいわ」


「はは」



この建物はなかなか広い

迷路みたいでもあって なかなか下まで降りれない

曲がり角がとにかく多いし


廊下を進んでいくと いきどまりになっているところさえある


ナゼこんなつくりにしてあるのだろうか


やはり戦のとき城まで侵入され場合

城の内情をよく知っている邪馬台国側が

有利になるためだろうか



だとしたら


今まさにその状況なのだ


敵のわなにおちかけている?

いやもうすでに落ちているのかもしれない


最初の木のところと約束したから

多少はぐれてもそこで落ち合えるだろう


どれくらい走っただろう

相当疲れた


息も上がる

ポプール分の体重と

走りにくいのとでセロの体は軋んで音でも出そうだ


そしてこの迷路みたいな道

ただでさえ疲れるのに 疲れは倍増である


道でも間違えたらいっかんの終わり

敵のわなにはまって一網打尽 という可能性もある

袋の中のねずみか


しかしその心配はなかった

イギリが先導してくれるおかげで

道について考える必要もなかったし


なぜか迷わない


まるでイギリも邪馬台国の衛兵の一員であったかのように

なぜわかるんだろうか


それは今、知る必要はない

今大切なのは とにかく逃げ切ること


いくつめかの角を曲がったとき

イギリが前を走った理由がわかった



ものすごい数の敵だ


衛兵が待ち伏せていたのか

全員が武装し

今から始まる戦いへの準備をしている


嵐の前の静けさとでも言うのか

妙に静かだった



「ちきしょう!てめぇら!」


セロは剣に手をかけようとした

しかしその必要はなかった


イギリがほとんどすべての敵をなぎ倒す


とんでもない

とんでもないスピード


ヴァリの武器を使っているようだ

みんな胸の辺りを引き裂かれたり

生きている可能性は皆無だった



横たわる衛兵たち




「あのやろ・・・またころし・・・」


クラナは呆然とするかのように

青い顔を引きつらせていた

まるでこの世の終わりでも見てしまったかのように


イギリは確かにすごかった

鬼のよう――


とたとえるのもすこし違うが

はやすぎる


何十人もいた衛兵が

イギリの手にかかればあっという間

本当にあっという間に血を出し横たわる


誰一人とイギリに傷をつけることはできなかった

というより


誰一人 イギリに対し剣を突き出すこともできていない


イギリは汗をかく様子もなく

ただただ 大量の敵の脇をすり抜けながら

急所を突き、斬り、ひきさいて

走っていく



今までセロが見た中で一番強いのかもしれない


認めたくはないが そうなのかもしれない

セロ自身

こいつとたたかって勝てるのかわからない



バシュ

パシュ


というイギリの肉を裂く音が聞こえる


地獄絵図だ


誰一人叫び声をあげることすら許されず

イギリという鬼にやられていく


ゾクッ

セロの背中に嫌な汗が流れた


いつか自分もあのようにイギリに殺されるのか

俺は反撃できるのか

反応すらできずに

無残に死ぬのか



あれだけいた衛兵も

イギリのおかげで

気にすることなく 修羅場をすりぬけることができた


確かにイギリのおかげで

どうもやりきれないが

それは認めざるを得ない事実


イギリなしであそこを容易に通り抜けることができたか

答えは否

不可能だ



気がつくともう外に出る扉ににたどりついていた

セロはふとイギリの顔を見る


笑っていた


笑うイギリ



なぜ笑える

なんで笑えるんだ

イギリメデュール


セロも確かに生前殺し屋で

世に不用な人物らを闇に葬ってきた


しかし笑えたことなどなかったと思う


たいていは欝な気分になり

軽く酒をあおり

銃の手入れをして


ゆっくりと気分を鎮めてきた


なのにこいつは・・・

笑ってられるのか


ちょっとこいつにはわからせてやらなきゃ


「イギリ」


「なんだよ」

セロの方も見ずに答える

あれだけ動いたのに

息も乱れていない


「お前、またあんなに殺しやがって」


「ん?」

イギリが涼しい顔で答えた

やはり何も気にしちゃいないのか


「あいつら特になんもしてねぇじゃねぇかよ

 ミコトとかならともかく・・・」


「だから殺してねーんだろ

 お前はいつもうっせーな」


は?セロは耳を疑う

聞き間違いか

ハッタリか


「だってあんなに・・・血・・・」

いいたいことが言葉に出ない


なんだこのもどかしさ

動揺している

声も震えている


「ちょっとは考えろよ殺し屋」


そういうとイギリはちらりとナイフをみせた

最初にヴァリからもらったときと

形が変わっていない


変形してないということは・・・


「それじゃ・・・殺せない・・・」


「ん」


セロはイギリをまじまじと見た


「なんだよ」


「お前・・・」


セロはそれ以上何もいわなかった

イギリが変わりつつある?


わからない

変わっていないのかもしれない


でも

今イギリが殺しをしなかった


それだけは信じていい事実なんだ

第二十話 姉弟という名の無駄な絆

神が存在するとするならば

 私はそれを激しく嫌うでしょう


なぜ人と同じにしてくれなかったの

 特別なんて 寂しいだけ


神が存在するとするならば

 私はそれに激しく感謝するでしょう


この世に生まれさせてくれてありがとう

 私はやっと人になれた







人が三人もいる部屋なのに

その空間はしんと静まり返っていた

空気そのものが凍ってしまっているようにも見えた


唯一、ポプールのかすかな息遣いだけが聞こえるだけで

その声が ここには人がいる ということを教えた



ミコトは興奮していたのがうそみたいに落ち着いている

いや、我を忘れている


というほうが正しいかもしれない

目はうつろで、瞳孔が開いている

微動だにもせず、大刀を構え


獲物を待つライオンのように

目はしっかりとポプールを捉えていた


目だけで小動物くらいなら殺せるくらいの迫力


「こちらからいくぞ」確かにさっきミコトはそういった

しかし、一向にかかってくる気配がない


「どうした!かかってくるんじゃなかったのか!!」

ポプールは声を荒げる


ミコトはそれに答えようという素振りすら見せず動かない


(こいつはいったい何を考えてんだよ・・・)


ポプールが睨んでも、ミコトは

心臓だけを持った石像のように動かないのだ


しびれを切らせてポプールは走り出した

ミコトのところまであと10m!!


ポプールが走り出してもミコトは動かない


(よし!あと2m!!くらえ・・・!)


「うりゃあ!」

ポプールはトンファーを思いっきり後ろに下げる


その瞬間ミコトが動いた


(ここでくるのか!?)


ポプールが右腕を開いて

一瞬だけガードするものがなくなったとき

ミコトの鋭い一撃が

ポプールの右胸のあたりに走った


血は出ていない

大刀の裏側の硬い部分でみねうちをしたのか


ポプールは叫ぶ声も出せず

その場に倒れこんだ


「やみくもに攻めることだけが

 強いとは限らないんだよ

 このザコ」


叫び声もあげられないポプールに

ミコトは冷たく言い放った


ミコトが大刀をもう一度振りかぶる

間違いなく止めを刺すつもりだった


みねうちをしたときに

普通に切って殺さなかったのは

冷たい男に残された最後の武士の情けなのかもしれない


一瞬時が止まった


(最初にゲームオーバーかよ

 セロたちに合わす顔がねぇよ・・・)


ポプールは目を閉じた

最後はゆっくりと死にたかった


しかしいっこうに目の前が真っ暗になることもなかった

死んで・・ない?


ポプールは目を開けた


ミコトが倒れていた

わけがわからない


ポプールは頭に1つの可能性が浮かぶ

振り返って卑弥呼をみた


卑弥呼は右手を前に出し

怯えた表情でミコトをみていた


「ふぁ・・・」


骨がなくなってしまったかのように

その場に座り込む卑弥呼


間違いない


卑弥呼が幻覚を使ったのだ


「初めて・・・初めてミコトにコレを使った・・・」


そういいながら卑弥呼は両手を

信じられない

とでも言う目で見た


「ふにゃあ・・・」

くだけたようにそういうと

後ろにぱたりと倒れた


ミコトは目を見開いたまま倒れている


しかし顔もまだ生き生きとしているし

脈もあった


少なくとも生きている


ポプールの脳裏にひとつだけ

ひとつだけ浮かんだこと


「逃げなきゃ」


ズキズキを通り越して

ガンガンと響くように痛む身体


逃げないとまずい


ポプールはこれしか考えられなかった


しかしその疲れた頭でも

いざ逃げようとしたとき

卑弥呼のことに気づいた


気絶しているので

急いで起こすのは難しい


ポプールは痛んだ体をいじめるように

卑弥呼を両手で抱えた


そして急いで部屋を出る


卑弥呼のことなんてなんで思いついたのかさえ

不思議だった


最初は敵だと思ってた

卑弥呼を倒せばクリアだと思ってた

下手すれば卑弥呼を

殺していたんだ


そのお詫びの念もあったかもしれない

とにかく今俺は

卑弥呼を守っている


あの忌まわしい

鬼のような弟の ミコトから


絶対救ってやるんだ!


「セロ・・・クラナ・・・ガデイン・・・・イギリ・・・どこだ・・・」


ポプールは呟いていた


階段を降りる 降りる 降りる 降りる


「どこなんだよぉ・・・」

ポプールの目に涙がにじむ


悲しくもないのに涙が出てきた

体がおかしい

こんなの俺じゃない


なんで涙なんて・・・


「うああああああああああああ!!!!」


もう動けなかった

その場にへたれこんだ

ひざを突き できる限りの力を振り絞って

卑弥呼にけががないように


熱い・・・

体が・・・燃える・・・あちぃよぉ・・・


体ががたがた震えだした


本気でもう・・・だめかもしれない・・・

ゆっくりと目を閉じた


(俺意外とよくやったよ

 あっちではみんなに会えるよな・・・

 あ。天国いけねえんじゃん

 はは。

 でも死んでからみんなにあえて

 ちょっとだけ希望も持てた


 でも十分だ 

 これで死んでも

 誰かを守れて死んだんだ

 すげぇ本望だ・・・本望・・・だ・・・

 

  

 本望じゃ・・・・・

 ねぇえ!!!!!)



ポプールは目を見開いた


なぜこんな力が出るのか

自分でもわからない


よろよろと歩きだし

つんのめりながら走り出す


マラソンでいうところの

ランナーズハイ


だったらもう限界は超えているんだ


もういいんだよポプール

お前はよくやった


なのに足が止まらない


「みんなっ・・・」


「俺・・・」



もう本気でだめだった


目の前に人影が見えた

足音も聞こえる


(これが敵ならもう終わりだ・・・)



「ポプール!!!」

「すごい熱よ!早く!急いで運ばないと!」

「よくやったな・・・お前・・・」

「いくぜ!せーの!」


何が起きているのか

誰がどうしゃべっているのか


わからない


しかし最後に抱えてくれたのが

セロだと


それだけははっきりわかった


ポプールは力なく、にっこりと笑った

第十九話 右手に進化した武器 左手に命

うちの大将は策略家

 数多の作戦駆使して

  数多の兵隊つかって


敵をたくさん鎮めたよ

 

うちの大将 策に飲まれたよ

 数多の兵の反乱に

  いとも簡単にやられたよ





「お前・・・卑弥呼・・・なにやってやがる・・・」


ミコト自身なにが起こっているかわからない状況なのだ


セロとの戦いで現れた第2の男

それがイギリなわけだが


その男にやられみっともばくも敗走し

その直後、卑弥呼の部屋にまで見知らぬ男がいるのだ



「てめぇ・・・裏切りやがったな・・・」


「ミコト!違うの!これは!」


「黙れ!」


「その男は今殺してやるよ

 その次はお前だ・・・


 安心しろ死ぬときはお前の大好きな

 農民たちと一緒に逝かせてやるぜ


 そこまで俺に感謝し―――――



バキッ


大型のハンマーで倉庫を殴りつけたような

低く、轟く音がなった



ポップVSミコト





ミコトの体が宙に浮き


3,4mとんだ後地にたたきつけられる

「はぁ・・・はぁ・・・」

ポプールの呼吸が乱れる



「お前は・・・


 家族を!人を 何だと思ってんだよ!!!

 

 人はな・・・お前の駒でもおもちゃでもねえんだよ!

 お前はいったい何様なんだよ・・・

 だからお前が勝手に操ることは許さない


 みんなのために俺は・・・お前を・・・お前を殺す




ポプールはほとんど我を忘れていた

目の前にミコトが現れ、たまっていた思いが爆発してしまった


そしてそれは簡単にさめることはなかった


「お前は・・・許さない・・・絶対」




バチッ


ポプールはトンファーのトリガーをひいた



「うぐっ・・・」

トンファーの形が変わる


刺々しくなり荒々しい

そして妙なマークが浮かび上がった


盾のような形に羽がついていて

その模様に顔がついている


これはいったい何なのだろうか


明らかに制度が変わっている


これが殺せる武器殺せない武器の違いなのだろうか



一方ミコトも落ち着いていた

長年の戦で身につけている集中力と実力は伊達ではない


「ふん 威勢よくなぐったわりにはきかねぇなぁあ

 俺をころすだと?おもしれぇ。

 逃げなかったことを絶対に後悔させてやるからな」



「あぁ。でもこの一発は・・・

 さっきのとは比べ物にならないくらい重いからな

 覚悟しとけ」



2人の間に火花のようなものが散る

卑弥呼はヘタヘタと座り込んでしっかりとしていない


ミコトとポプールの戦いを目の当たりにして

平然としていられる人間も多くはないだろうが



「うああああああああああ!」

ポプールは瞬発力を生かし猛スピードでミコトにせまる

そしてトンファーを振る


ミコトはいとも簡単にそれをよけた


「ははっお前それで俺を殺すってか

 とんだ笑いもんだ

 どうやらスピード自慢のようだが

 それだけでもさっきのイカレタやつのほうが速かったぜ

 お前は・・・お前も・・・雑魚だ」


「んだとぉ・・・」


「イギリとかいってたっけな

 その前のセロってやつもそこそこだったけど


 お前は―――

 よえぇんだよ」



バチィィ


トンファーに妙な感触がした


「これは・・・撃てる気がする・・・」


「なに?」


「うりゃあああああああ!」

ポプールは正拳突きの要領で

トンファーをつきだした


ビーム?というよりも 空気の塊のようなものが走る

ミコトは腹を押さえて倒れうずくまった


「て・・・てめ・・・なにし・・・」


一番驚いたのはポプールだった

こんなことができるなんて予想外である


トンファーに変な気配がしたとき

何かが出来る気がしたがまさかこんなこととは・・・



右手のトンファーはなぜかうなっているようにも見えた


(倒せる・・・俺でもミコトを・・・倒せる!)



「どいつもこいつも俺をなめやがって・・・」

ミコトの口の端からは血が出ている

歯を食いしばりすぎたのだろうか


「みんな・・・俺の前にひれ伏すべきなんだ

 俺は・・・王なんだ」


ミコトはそうつぶやくと立ち上がり

ポプールを見た


さきほどとは明らかに雰囲気が違う

落ち着いていてオーラがあった


まるっきりの別人だった


雰囲気に飲まれそうになりポプールは目をつぶった



―これが・・・最強国家 邪馬台国のトップってわけか・・・

  なるほどな・・・これがこいつの本気・・・―

ミコトは剣を構えようとした


(いまだ!)


ポプールはさっきの要領でビームを飛ばす

1発2発3発


ミコトはその全てを大きな動きもせずに避けた


「ちくしょぉ・・・」


「もう終わりか?なら俺からいくぞ」


カチャ


ミコトが剣を大きく振りかぶった

第十八話 救世主は殺人鬼

その気持ちがわかるって

 お前 本気でそういってるのか?


俺になったことがないくせに

 俺の気持ちがわかるのか?


簡単にわかるとかいうんじゃねぇ

 俺の痛みは俺にしかわからない


俺だけのものであるべきだ


優しそうな言葉で固めたうそを

 俺にぶつけるんじゃねぇよ





「いつまで突っ立ってんだよ殺し屋ぁ」


イギリが表情も変えずにいった

イギリの放った一撃はミコトの腕にあたり

そしてミコトは少しばかり怒っているようにも見える


まさに形勢逆転だった


「てめぇ・・・今何しやがった・・・」

ミコトがようやく物事を理解しだした


無理もないだろう

見たこともない筒状のものから音がして

とんでもない激痛が走ったのだから


現代人には一目にだとわかるのだが

古代人であるミコトには

それがまったくわからない



「うっせぇテメェもさっさとたて。

 こんな楽しいことから逃げ出すのかよ」


楽しいこと・・・

やはりイギリにとって

生死をかけた戦いは楽しいことなのであろうか


いかれているともいえる イギリの発言に

ミコトはすっかり言葉を失ったようだった



「ふん・・・お前はなかなか・・・」


そういいながらミコトは大検を杖のようにして

立ち上がった


額には血管が浮き出ている


今までにはない ミコトの表情だった



「そうだ・・・かかってこいよ・・・

 もっと楽しませてみろよ ああ!?」


イギリは本当に楽しんでいるようだった


さすがのミコトもたじろいているのがわかる


そんなイギリの背中がかつてないほど

セロには大きく見えた


「イギリ・・・」


セロの問いかけにイギリが反応を示さない

聞こえていなかったのかもしれない


イギリの表情はこれだけ近くにいてもわからない


口元はきつく結ばれているようだったが

目元が見えないせいでわからないのだ


帽子のつばで影ができているために目元が暗い

イギリの長い髪も顔を隠すためのようにすら感じた



ミコトの唇がキュっと結ばれた気がした

相当に起こっている

その唇の端には血がにじんでいた


「うあああああああああああああああ」

不意にミコトが雄たけびを上げた


と、同時に刀を構えこちらに突進してくるのを感じた



(はえぇ・・・!)


ヒュン



一閃された刀は

イギリの帽子を回せた


フワフワと地面に落ちた


イギリの表情を初めて見ることになった




イギリの素顔





はっきりいうと怖かった


人間はここまで冷たい表情をすることができるとも

思っていなかった


蛇のように すさんだ目

アートともいえるボディペイント



そのすべてがイギリメデュール 

という人間をあらわしていた



「お前・・・いい加減にしねぇと・・・」


イギリの眼がいっそうこわばる


「殺すぞ?」



ゾクッとした寒気がした

本気で殺されると思った


自分が言われているわけではないのに

頭に銃を突きつけられているような妙な気分


蛇ににらまれた蛙・・・


息までもが荒くなった



それはミコトも同じようだった



「お前の不意打ちのせいで

 すっかりやる気がなくなったぜ

 またあとで・・・決着をつけてやる

 じゃあな」



これはいいわけくさかったが

今の状況でイギリにミコトが勝てるとは思えなかった



なにやらあたりが薄暗くなる

ヒミコと同じで妖術のようなものを使ったのだろうか

実の弟だ


ありえないことはない



それが普通に戻ったとき

ミコトはすでに消えていた


逃げた


といったほうが正しいかもしれない


イギリも追う気はないようだった


チラリとセロを見た後

さきほど地に落ちた帽子をひょいと拾い上げ


深くかぶりなおした


いつものイギリに戻った気がした





「上に・・・行こうぜ」


イギリにトロトロとついていくと

その先の階段のようなところで

クラナとガデインと落ち合った



「クラナ・・・ガデイン・・・」


「あっセロ! どこいってたのよ もう!」



「ちょ・・・まって ポプールは?」


あのポプールがいない

どうりで陽気な感じがしなかったはずだ


「ううん。一回も見てない」

「そうか・・・」


「でもあいつのことだ 絶対生きてまた会えるさ」

「だよね。すぐ帰ってきてまた冗談でもいってるよね」



元気がとりえのポプール

しかし今は暗かった


卑弥呼の部屋で例の話の続きを話していたのだ


「卑弥呼さん ゆっくりでいいよ・・・ 

 いいたくなかったら 大丈夫だから」


言葉としてはちゃんとなっていないようだったが

ポプールが精一杯気を利かして

出たのがこの言葉だったのだ


「うん・・・」


卑弥呼はゆっくりながらもその秘密を話そうとしていた



「私が今まで逃げなかったのはね・・・

 さっきいったわよね?

 この邪馬台国はまわりの国を攻めつぶして

 奴隷にして、捕虜にして、大きくなってきたの


 そんなことされて憎んでいない国なんていないわ

 そうよね?」


ポプールは言葉にはせずゆっくりとうなずいた


「だから私が逃げても隠れるところなんてない

 どこの国に言っても 私は嫌われ者だから」


そう冗談っぽくいったが卑弥呼の目は笑っていないことに気づいた



「それがひとつの理由・・・

 もうひとつはね・・・


 私を殺してから村人を皆殺し・・・

 それは知ってる


 そうじゃないと村人を殺せないもの

 墓の人柱

っていう公正の名目でね


 だから私が死なない限り、ある程度

 あの人たちは生き残れるわ

 それが・・・・逃げない理由よ」


ポプールはそれをきいても何もいえなかった

かける言葉が見当たらなかったのだ


心のこもってない言葉なんて

いわないほうがいい



それを察してか卑弥呼が言葉を続けた


「私は・・・もうきっと殺される

 きっと明日・・・いえ

 今日

 それが・・・私と村人たちの最後かもね・・・

 

 ミコトたちは大喜びするでしょうね

 やっと自分たちの国を手に入れたって

 今までは私の国のようなものだったから

 それが気に食わなかったんでしょうね」



「ちょっとまって・・・

 ミコト・・・たち・・・?

 ミコトだけじゃない・・

 黒幕は・・・


 ほかにもいる・・・」





バーーンッ


激しく扉が開いたかと思うとそこには大きな男が立っていた

肩から血が出ていて息も荒い


「卑弥呼ぉお・・・そいつは・・・だれだ・・・」


「ミコト・・・」


ポプールの背中に冷や汗のようなものが流れた

第十七話 悪魔と呼ばれた王子

憎まれ口をたたいても

 ホントはずっと心配してる


喧嘩ばっかりしてるけど

 一番たよりになるお前のこと


それが本当の友情なのかもしれない


お前となら

なんだってやれるのかもしれない





その目からは輝きが失われていた

さっきまで


ほんの2分前までポプールと話していた卑弥呼

笑っていた卑弥呼


しかし、今は険しく、沈んだ表情

真夜中の海のような感じだった


その原因は


弟、ミコト


卑弥呼を殺し、その道連れに村人たちをも殺そうとしている


しかし、卑弥呼はそのことを知っていた

しかも逃げもしなかった


それがなぜなのか

それは今卑弥呼の心の中にしかない


「私・・・」


下を向いていた卑弥呼は唐突に話し始めた


ポプールは相槌も打たず卑弥呼を見つめた

その幼さの残る、きれいな顔には


今まで自分が歩んできた道のりよりも

ずっとずっと険しい人生だったのだな。と


そう思うとむやみな相槌などは

してはいけないと思った


「私が不思議な力を持ってること

 あれは本当よ

 人に幻覚を見せたり、そんなこと・・・」


卑弥呼の口元はすこし緩んで笑っているように見えたが

目は笑っていなかった


「弟は頭がよかったの

 私なんかよりずっと先のことを読んで

 計算して・・・

 だからこの国が戦になっても

 弟の言ったとおりに戦えば必ず勝ってた

 だからこんなに大きな国になった


 そして・・・私が女王となったの」


そこまで話すと卑弥呼は立ち上がり

部屋の隅にあるつぼから

水を少し飲んだ


「でも そうなって喜んだのは

 この国の住民とおと・・ミコトたちだけだったわ」


弟・・・といいかけてとっさにミコト。といいなおしていた

それには深い意味があるのかもしれない


もうミコトのことは弟とは、家族とは見ていない

そんな感じさえした



「私たちに攻めつぶされた国は数え切れないほどよ

 もちろん、私は憎まれている

 

 戦に負けた国は 廃れる以外 選択肢はないの

 負けたらどうなるか。

 それを知っているからこの国の人たちは強いの」


「負けたら・・・どうなるの?」


ポプールがはじめて口を開いた

卑弥呼の言うことをずっと聞いていて

耐え切れなくなって、口を開いた


「人生は破滅ものね

 この国の法は厳しいの

 なにか 悪いことをすれば99%

 牢にぶち込まれるでしょうね」


「牢・・・なんてあったっけ・・・」


「普通の人は知らないわね

 今 私たちが立ってるこの城のずっとした・・・


 地下室の方にとんでもない人数の人が

 つかまってるでしょうね

 

 ちょっと喧嘩でもすれば牢に入るんだから・・・

 そして・・・つかまればもう・・・」


「地下室に・・・牢屋・・・・」



そう・・・その牢屋こそが

今まさにセロの見ている地獄絵図だった


数え切れない牢に

それ以上の数の人が・・・


うめいたり、怒鳴ったり、ひしめきあっている


その人たちはセロの事を見つけると


「ここから出せ」

「助けてくれ」

と。なきながら懇願した


「お前ら・・・一体・・・」

セロが問いかけると近くの牢に入っていた

青年が答えた


「あいつにはめられたんだ

 あの悪魔に・・・

 ちくしょう・・・・」



「悪魔・・・あいつって誰だ・・・!?」


「ああ。それは



バシュ


その音が響くとほぼ同時に

セロの顔の4cmほど横の壁に

矢が突き刺さった



「おや・・・外れましたか・・・」


抑揚の効いたように聞こえるのは

ここがトンネルのようなところだからだろうか


「お前・・・まさか・・・」


「そうですね。今あなたの頭にある人物だと思いますよ」


「ミコト・・・」


「そうですね」


「おい もっとこっちへ来たらどうだよ

 かおもみせらんねーのかよ!」


「なんでワタシがわざわざあなたごときに顔を見せなければ

 いけないんですか」


「ふざけんなよ・・・」


「そんなに怒らなくてもいいじゃないですか

 どうせあなたに見せる意味はない」


「は?」


「どうせアナタはここで死ぬんだから

 そんなの意味はないでしょう」


「なんだと・・・」


「そんなに気になるなら

 そっちがかかってきたらどうですか?

 雑魚」


最後の言葉にだけは思い切り皮肉がかかっていた

ずっと丁寧語なのも腹立たしい



「死ぬのはテメェだよ!!!」


そういい終わると同時にセロは剣を右手に持ち

ミコトの声のもとへ突っ込んだ

大きな影が見える

ミコトはもうすぐそこにいた


「あんまり俺をなめんじゃねーぞ」

その言葉と同時に剣を振る


ガキュ


剣が何かに当たって止まる


当たった感触からすると剣のようだ


セロは自分よりはるかに背の高い男の顔を見上げる

冷たそうな顔だった



牢からはセロを応援するように

歓声がまきおこっていた


「うん。あなたはなかなか強い

 でもね・・・

 俺には全く勝てないよ?」


ミコトの一人称が”オレ”になる

冷静さが少し失われたのかもしれない


「てめーなんて余裕だっての!

 お前が卑弥呼殺そうとしてるんだろ!」


「ほう・・・そこまで知っているなら

 絶対・・・生きて返すことはできないね」


そういってミコトは力いっぱい剣を振り下ろす

セロはかろうじて剣で身を守るが

ミコトの力は強かった


少々曲がっているセロの剣は

その力で折れてしまいそうだった


「くは・・・」


思わず息が漏れる


容赦なくミコトは次の一撃を繰り出す


セロはただ耐えることで精一杯だった

一撃食らえば 間違いなく気を失う


悪ければ・・・

しぬ・・・


(ちくしょう・・・せっかく生き返れるかもしれないのに

 ノヴを助けないといけないのに

 オレは・・・

 

 負けちゃいけないのに)


「そろそろ死んでくださいよ」

ミコトはさらに剣を振った


セロはそれにも耐えた

しかし


もう体力も、腕も限界だった

力がこもったミコトの剣は一撃ごとに

腕の骨がきしむほどなのだ


(次は・・・もう耐えられないな)


「もう次は受けれないでしょう?

 あなたはまだまだ弱すぎますよ」


「もう終わりです

 サヨナラ」



パン


銃声


ミコトの剣が音を立てて地面に落ちる

腕からは血がでているようだった


「誰だ!」

ミコトはかなり怒っているようだった


もはや全く冷静ではなくなっていた



セロも誰なのかさっぱりわからなかった


だが次の一言で

それが誰だったのかすべてはっきりした


「殺し屋 お前弱すぎ」


セロのことをいまだに

殺し屋

と呼ぶのはひとりしかいない



「イギリ・・・お前・・・」



まさかイギリが助けに来てくれるとは・・・

夢にも思わなかった


ひとまず、今は死なないような

そんな気がした

第十六話 暗闇の中で  女王と癖毛のお調子者

嘘を嘘だと知りながら

 知らない振りをして

だまされた振りをして


あなたはそんなことが

できますか?





「くそ・・・暗いんだよ・・・」


セロの体は暗闇で覆われていた



記憶が正しければ現在の時刻は

朝の5:30から6:00の間


太陽は昇っていてもおかしくはない


つまり・・・



あたりは明るいはずなのだ



それなのに・・・

セロは周りが見えないほど真っ暗な中にいる


自分の体をうっすらと見ることくらいはできるのだが

1m前は見ることができない


それほどに暗いのだ



(こんなの・・・前にもあったっけ・・・)


そういうセロの頭に浮かんだのは

この世界に来て ヴァリにはじめてあった場所のことだった


あの時も暗く、霧みたいなものに覆われていて

どうしようもなかった


という記憶しかない



(俺・・・このままでれないのか・・・?)


そこまで考えるとセロは

ブルッと首を左右にふった

今考えていたことを捨て去るために

こんな暗いところでは悪いほうへ

ネガティブな考えになってしまう


もっと明るく物事を考えていかなければ・・・



セロはそっと両目をつぶる 耳を澄ます

目で見ずに心で感じるのだ


自分が自然に溶け込むように



その空間はシンと静まり返っているわけではなかった


時々 うっすらと遠くのほうで


ギィ や ワラワラと人の声のようなものが聞こえた


もっとも人かどうかは定かではないが


それでもここでじっとしているよりはまし

セロは先の見えない 道なき道を

転ばないように ゆっくりとゆっくりと


音を頼りに進んでいった



時々壁にぶつかることもあったから

早く動くことはできない



ガツッ


壁に当たる

これで14回目くらいだろうか


しかしその壁は今までのものとは違っていた


空洞がある


というより、壁そのものが 棒のようなものが

一定間隔に置かれて、つくられている


ちょうど 刑務所の檻を想像した感じである


なんでそんなものがここにあるのか

しかし、考えても答えはわからない


セロはその壁の左側のほうにぐっと力を入れた


あんがい軽い力で扉は開いた


その先にどうやら出口は見つかったようだ

曲がり角のようになっているところが見える


そこからは明かりが漏れているのだ


こうなるとセロの足取りは軽い


今までにないペースで明かりの見えるほうへ走っていく

しかし、そこにたどり着き


その先にあるものを見たとき

セロは信じられないものを見ていた


ある意味の地獄が・・・そこにあった









「にゃああああっわあああああ!!!」


ガンッゴロッロロロロロロロ

まるでドラム缶が転がるかのように

派手に大きな音を立ててころがる


頭で着地してから3回転、4回転・・・

すっかり自分のものとなったトンファーで体の回転を止める





叫び声の正体はポプールだった

ガデインのハンマーで勢いよく飛んで

そのあと、あいていた窓につっこみ


部屋の中に飛び込んで・・・・・



はじめに戻る


トンファーで体を支えるようにして

状態を浮かそうとしたとき

ふと上を見た


なにかが迫ってくる!





ポプールと・・・




「きゃああああああああああああああ!!!!!」


今、ポプールになにかが振り下ろされようとしてくる

ポプールの叫び声には動じず

棒のようなものが。いままさに・・・



ガキィンッ


鉄と鉄がぶち当たるような音を立てて

棒が吹き飛んだ


棒が当たる寸前 危機一髪で

ポプールの天性のものか動物的直感か


右手のトンファーをつきあげる

そこに棒が激しく当たり

吹き飛んだのだった・・・


あたったとき痛めたのか手首を押さえ

痛そうにしている その者は・・・


「卑弥呼!!」


そう。それはまさにあの卑弥呼であった


「え・・・」

まぜ名前を知っているのか・・・

とでも聞きたそうな顔で卑弥呼が言った


「俺のこと覚えてない?昨日一戦交えたんだけど・・・」


「あら!あのときの・・・・・・・

 


 だれでしたっけ・・・」


カクン

ひざがまがる


ずっこけた。

というアピールだった

大げさではあるが

ポリポリと頬を指で掻きながらポプールがいった

「覚えてないのかよ・・・」


「すいません・・・この頃物忘れが激しくて・・・」


「アンタ何歳だよ!?」


「18歳です」


「若すぎだよ!青春まっさかりだよ!」


「フフフ」


卑弥呼がわらった


(なんつーかわいい笑顔ですかっ)


と。心では思ったが口にはしないでおく


「もちろん覚えてるわよ あなた・・・えっと・・・

 名前は?」


「うん。俺ポプール  ポプール=ローゼリックっていうんだ

 どーぞよろしくぅ」


「ポプール・・・変な名前ね・・・」


「まぁそんなこといわないでさっ」


「でも・・・なんで急に部屋に飛び込んできたりして・・・」


「あぁああっっ!!」


すっかり忘れていた

卑弥呼がまさかのボケをかますもんだから

本題をスッカリ忘れていたのだ


「卑弥呼さんっ!逃げよう!あんたの弟のミコトってやつが

 悪いことたくらんでるんだよ!卑弥呼さんを殺してついでに

 村人たちも一緒にころ・・・



しってるわ


「え・・・」


急に卑弥呼の目がキリッとなった

人が真剣な顔をするときはだいたいこんな感じなんだろう


知っていて

・・・


なぜ逃げないのか


卑弥呼はそっと腰を下ろして

その理由を話し始めたのだった

第十五話 作戦D 名づけるならばフライングウィズハンマー

舞い上がれ

 高く高く


たとえ自分の力で飛び上がれなくても

 たとえ恐怖を抱いても


飛び上がれ 

 そして舞い上がれ


飛び上がれないより

 ずっとましだから





「ねみぃよ・・・」セロは誰に言うでもなくつぶやいていた


また寝れない・・・


こんなことつい最近にもあったっけ・・・

あれも、この場所にきてからだっけな・・・


眠くないわけではない

妙に興奮するわけでもない


自分でもなんで寝れないのかわからなかった


クルッと周りを見渡す


すぐ近くにポプールが大の字にねている

とても気持ちよさそうな寝顔だった


「ちくしょう。俺は寝られねーってのに

 気持ちよさそうに寝やがって・・・」


もちろんポプールは悪くないが

寝れない自分にイライラしてポプールにあたった



「寝れないの?」


「!?  え?」


左を見る

それはクラナだった


「なんだ・・・クラナか・・・」


「なんだ ってなによ」


「うあ・・・いや  まさか起きてるとは・・・」


意外だった クラナもなにか心配事があるのか

しかし 寝れないのが自分だけでなくて

少し安心した


「ん~なんか 寝れないの

 かなり走ったし・・・疲れてるはずなのに・・・」


確かにそうだった

セロは城に侵入したし イギリのことも・・・


いろんなことがあった日だった


「あのさ 明日が・・・遂に決行だよね。」


「正確には今日だけどね」

ニコッと笑ってクラナが答える


そうかもう12時を過ぎたから・・・

今日・・・なんだな



決行 


ほかでもなく、卑弥呼が殺されるのを阻止すること

そしてミコトたちを葬ること・・・


それを明日しようということに決まったのだった


「俺たちクリアできるよな?」


「そうね」

クラナの返事はそっけないものだった


「うん・・・」


会話が弾まない


空にはきれいな月と星が輝いている


今までこんなにたくさんの星を見たことがあるだろうか


ないだろう

何百年も何千年も月日が流れ

そらが汚れてしまったのだ


「私・・・寝るね」


「うん・・・おやすみ」


クラナもそろそろ寝てしまうとセロもバタッと

地面に仰向けに倒れる


そっと目を閉じると

暗い夢の中へ


ゆっくりと落ちてゆくのだった





「セロぉぉぉおおおお!起きなさ~~い!!!」


ポプールの声でセロは目覚めた


「早く起きないと朝ごはんは抜きよ」


「黙れ・・・死ね・・・」

目をこすりながら調子に乗ったポプールに

言葉で反撃


「なんだよぉ~う 死ねはないんじゃん~」


「消えろ・・・」


「なにそれ屁理屈じゃん」


セロはもう何もいわなかった

もともとあまりしゃべらないセロにとって


しゃべるのが生きがいのようなポプールに

口でかなうわけがない


まさに天敵だった



「さて・・・っと行こうか~」


こう言ったときポプールの目が

さっきのイタズラっぽい目から

しっかりしたような キッとした目に変わった


(やっぱりやるときはやるやつなんだな)

セロは少し感心する



「もう行くのか?」


その言葉とともに木の陰から

アズアが出てきた


「お前は・・・」

と、セロが言ったところで



「ロンペッペ!!!」

と、ポプール


「こらポプール、一番いいところをとっちゃだめでしょ!」


「は~い」


クラナが母親のように叱り

ポプールが素直に謝った


なんだかこのごろ息が合っているようだった


「ところで・・・なにしにきたんだ?」


「お前らが卑弥呼を助けに行くんだろ?

 だったら俺もついていこうと思ってな」



なるほど

そういわれてセロは

アズアが卑弥呼と仲がよかったことを思い出した


「よ~しじゃあみんなで行こうよっ!」


ポプールは簡単にアズアも連れて行くことに決めたようだった



城下を再び翔けるものがいた


前は5人だったが今は6人


勿論

セロ、イギリ、ポプーツ、クラナ、ガデイン、アズアの6人


「は~いみんなストップ☆」

先頭を走っていたポプールが急に止まる


セロはあと少しでポプールに激突するところだった


「あぶねーよ・・・いったいなんで止まったわけ」


「ここで飛ぶんだ」


なるほど

そういわれてみるといい位置だった


卑弥呼がいるのが一番上に見えるところだというならば

ここは門からちょうど反対側



「ふぇ~い ガデインさ~ん」


ポプールがそういうと

ガデインがノッシノッシとこちらに歩いてきた


それに続いてイギリたちも集まる


ポプールが胸をはってしゃべり始めた


「こほん・・・ではこれより卑弥呼奪回作戦を開始する

 進入方法は作戦Dでいこう!」


「AとかCとかもあるのかよ?」


そんな突っ込みは無視した様子で

ポプールは続けた


「じゃあまずガデインのハンマーで僕が侵入するから

 その後続いてきてください~以上」


ガデインが準備運動をしているわずかの間に

セロたちが進入方法を知らないアズアに説明した


「いき・・・ます・・・」


ひさしぶりにガデインがしゃべった


たったの4文字だったが・・・



「うお~しバッチコーイ!」


「ぬあっ!」


ポプール ハンマーにて



奇声にも似た声がガデインから発せられると同時に

ポプールの体は遥か高く


城壁を軽々と超えていた


セロたちは耳をすませポプールの着地する音を聞いていた


しかし、物音は全然しなかった

上手に着地したのだろうか


それは今はわからないが


猫のようなポプールのことだ怪我はしていないだろう


「さて次は誰が行く?」

クラナはそういってセロのほうをチラリと見た


「う・・・俺に行けって事かよ?」


コクリとうなずかれた


コレはもういくしかない



あくまで平然を装ってガデインのハンマーを握る

実は内心少し怖かった


さっきのポプールを見ていたがかなりのスピード

安全性も定かではないし・・・


しかしセロの口から出てしまった声は

それの反対だった


「いつでもこいよ」


いってから しまった と思った

いつでも来れれるのはまずい


やっぱり掛け声くらい必要じゃないか・・・?


「やっぱr


「フングッ!」


ジェットコースターのような感覚だった

飛び上がった瞬間に叫びそうになったが

隠密活動中にそれはいくらなんでもまずい


そんなことを考えているうちに

もう下降体勢にはいっていた


意外に高い・・・

こんなとこから落ちたらただですまないんじゃ・・・


(下手すりゃ・・・死・・・)


ドタッ

セロが着地したところは一応地面ではなかった


と、いうことは城内ということになるのだろう


「ここはどこだ・・・真っ暗ジャン・・・」


セロが落ちたところはなぜか真っ暗だった


まるで深い深い奈落のそこのように

第十四話 悲劇の女王様を救うために

いつからこんな風に

 なってしまったのだろう


金で動く国

 そして人


これが正しい世の中なのか?





真っ赤に燃える太陽が

心地よく体をなでる


3001年では想像できないほどの


緑に囲まれた森

青く澄んだ湖


「こんなキレイなとこがあんなになっちまうんだもんな」


あんなになる

ほかでもない3001年の地球


ビルが立ち並び、そのせいで太陽はあまり当たらない


森など国宝に指定されているところ以外では

見る影もない


水がきれいなところなどもってのほかだ


しかし二酸化炭素を酸素に変える装置をある科学者が作り出したため

地球温暖化の心配はなくなったわけだが・・・


それでも(これでいいのか?)と思うことはたくさんある


二酸化炭素が出なければ排気ガスをドンドン出してもいいのか



法律もほとんど無意味なものとなっている


形上、法律はあるとされているが

はっきりいって金しだいでどうにでもなる


金のないものは、法律に縛られ

金のあるものは、法律を操る


人を殺したって無罪になれる

ひったくりで死刑にだってなる


これが今の実態である


もはや正義なんてものがあるのか


セロ自身殺し屋をやっているので

人のことは言えないわけだが・・・




しかし目の前に広がる光景はそれを忘れさせてくれた


この空が・・・大地が・・・永遠に続けばいいのに



そんなことを柄にもなく考えているとセロは

みんなから大分離れてしまっていることに気づいた


先頭はポプールがはしゃぎながら歩いている

なにやら流行っている鼻歌を歌っているようだ


続いてイギリがいる

さきほどの惨劇は目に焼きついて離れない

あれだけの血を見たのは久しぶりだった


なかったことになったわけだが・・・


次にクラナがいた

てっぺんで軽くたばねた髪は左右に揺れ

肩辺りまで伸ばした髪は激しく揺れている


その後ろにいたガデインはなにやら挙動不審

チラチラとクラナを見ている


(なに考えてるんだ?こいつ)


しかしその秘密はすぐにわかった

ガデインがみているのはクラナではなかった


クラナの持っている銃


ヴァリにもらったあの不思議な銃

やはり気になるようだ

相当なオタクなんだ



しかしセロは不意にあることに気付く


「ちょっとまって!」

前にいた4人が振り返った


「今・・・どこにむかってんの?」


ぷっ  とポプールがふきだす


「あはは セロどこに向かうか知らずについて来てるの!?

 さっき説明したジャン!」


愉快そうに笑いながらポプールが答える


「まぁしかたないよ セロはなんかブツブツ言ってたし」

そこまで言い終わったとたん

クフッっとクラナまでふきだした


「なんで笑うんだよ」

セロはちょっと不愉快になった


「だ・・・だって」

クラナはよっぽど可笑しいのだろうか

言葉がゆれている


「二酸化炭素とか死刑とか正義とか法律

 顔ににあわないことぶつぶついってるんだもん」


「な・・・」

(俺つぶやいちまってたのか・・・

 ていうか 顔に似合わないってどういうことだよ・・・)


すこし恥ずかしくてセロの顔が火照る


「とっところでどこに向かってるか教えて」


あわてて話題をそらす このまま会話が弾むといやだった


「さっきの丘だよ 森の近くの」

「あぁ~そこでなんかするの?」

「もうちょっと作戦を立てたほうがいいかなって卑弥呼もさ

 すごい強かったし あれじゃ倒せないよね 簡単には」


「ああ!!!!!!!!!!!!!」


「どっどうしたのセロいきなり叫んだりぶつぶついったり

 今日おかしいよ?インフルエンザ?」


大事なことを言い忘れていた

こいつらはまだ卑弥呼を倒せばゲームクリアだと思っている


「あのな・・・」

セロは問いかけるように話し始めた




卑弥呼は悪いやつではないこと


黒幕は弟のミコトで卑弥呼を殺し土葬するとき


その際に村人を人柱にして一緒に生き埋めにすること


そしてこの国を完全に自分たちのものにして新しい国を作ること


そしてその作戦が今日、明日には行われること




「な・・・・そんなこと・・・・」

クラナはショックを受けている感じだった


「でもでも!まだ殺されてるんじゃないんだろ!?」

ポプールも焦っているようだった

セロはうなづく



そういえばポプールは卑弥呼が美人だ とかいってたっけ・・・


美人というより魅惑につつまれている感じだと思う

不思議さで出来た女・・・


それが卑弥呼


悲劇の女 卑弥呼

女王    卑弥呼


それが利用されているとも知らずに

ずっと国をおさめてきたんだな・・・


「じゃあさ!すぐに助けようよ!卑弥呼さん!かわいそうだよ!」


「あぁそうだな・・・ミコトを・・・殺さないと・・・」


殺さないと・・・その続きは言わないでもわかるだろう

殺さなければ卑弥呼が殺され そして多くの犠牲がでる


さらに・・・俺たちもゲームオーバーだ


「じゃあひとまず城に侵入する方法からだな

 城のまわりはずっと衛兵が見張っているからな

 正面突破じゃこの前みたいになるのがオチだ」


「う~ん・・・・」

みんないい考えは浮かんでこないようだった


そんなときセロの頭に一つ 過去の記憶で気付くことがあった


「ポプール・・・お前俺が追われているとき あの城壁の上にいたよな

 んで短いロープ投げて・・・」


「ひぇっ!」

ポプールはクラナの後ろに逃げるように隠れた


「なんでにげるんだよ!」


ポプールがおびえながら答えた

「だっていまさらそんなこと言って・・・まだ怒ってるんだ!

 それで復讐を・・・」


「しねぇよ」


「ホントに?」


「ホントだよ」


「よかった・・・え?それでなに?

 なんでそんなこと・・・急に?」


そうそう本来の目的を言うのを忘れていた

やっぱり漫才みたいになって困る・・・


「お前・・・あんな高いとこにどうやって登れたんだよ 

 はい上がれたわけじゃねぇだろ?」


「あぁそれはね この手首のとこから

 超粘膜性伸縮自在の糸を出してね

 それでのぼったんだよ」


そうニコニコしながら答えた

相変わらず幼稚園児のような

屈託のない笑顔


セロはなにも言わずにポプールを小突く


「ふざけんな?」


「ごめんなさい ちゃんといいます はい」


ビシッとポプールがなにかを指差した

その指先をおう


そこにはガデインの姿があった


「ジャッジャーン 正解はガデインでしたー」


「は?」


「ほらほらガデインがヴァリさんにもらったハンマーがあるでしょ

 あれにつかまって ハンマーを上に振り上げて跳んだんだよ!」


「曲芸かよ・・・」

しかし今度のはホントっぽかった


「でもそんなのお前しか出来ないだろ?」


「ちっちっち」

ポプールがウインクをしながら人差し指を左右に振る


「あまーーい このハンマーただのハンマーじゃないよ!

 つかまってるとめちゃめちゃに飛ぶんだ

 一回目は本気で上に振って 跳びすぎちゃったもんね

 小鳥さんとお話が出来るくらい」


「だから2回目は加減して投げてもらったんだ~」


ニヘヘを胸をはるポプール


「じゃあそれで行くしかないな・・・」


4人がうなづいた

なんだか頭の悪そうな作戦だったが

これしかうかばなかったのだから

仕方ない



そんなとき別の場所で一人の女性がつぶやく


「私は何のために生まれてきたの・・・?」

誰に問いかけるでもなく

誰もいない部屋で独り言を言っていた


このシルエット

ほかでもない卑弥呼だった

第十三話 武器の秘密

目を閉じるな

 前を見ろ


耳をふさぐな

 すべてを聞け

 

心を閉ざすな

 自分を見ろ


全ては現実 過去のもの

 振り返ることが許されない





セロはいつのまにか自分が下を見てしまっていることに気がついた

 イギリが人を殺したのは変えようのない事実


そこから目を背けてどうする


ありったけの力をこめてイギリをにらむ

イギリはあくまでひょうひょうとした態度だった

まるで殺しをなんとも思ってないかのように


そういえば前にもこんなことがあったな

あれは・・・


そうだ イギリが門番を銃で殺そうとしたとき

あのときもきまずくなって・・・


そうそうガデインが銃見て興奮してたもんな~

あれのおかげで なんともなかったわけだけど・・・


でも今はそのときと一緒の解決にはならないだろう

今度は本当に殺したし・・・

みんなまったくしゃべってないもんな・・・


そんなことを脈絡もなくボヤボヤと考える


そんなことをしていたら

先ほどの惨劇から10分ほどが経過しようとしていた


「・・・ロ・・・セロ・・・」

うめくような声でハッと我に返った


その声の主を追うとそれはほかでもない

クラナだった


いつの間にかクラナがセロの後ろまできている

「セロ・・・」


クラナはなにかいいたそうなのだが

セロの名前をよぶことしかできていない


もしかしたら自分が

返事をするのも待っているのかもしれない


「ん・・・?どうしたの?」

それだけの返事しかできなかった


こんなときはもっと気の利いたことを言って

クラナを安心させたりすることが必要なはずなのに


それくらいのことができない自分が

不器用な自分がなんとも情けなかった


ふっとクラナの顔を見る

その綺麗で整った大きな目は

うるんでいた


しかし口元はきゅっと結んで

なきそうな雰囲気はなかった


きっと強い人間なのだろう

でも今は自分を頼ってきている


それだけでなぜか嬉しかった


「あの人・・・死んじゃったの?」


「う・・・うん」


またこれしか返事ができない

こんな返事小学生でもできるというのに


「さっきまで生きてたのに しゃべってたのに・・・」

そこまで話すと続く言葉が見つからないのか

口を閉じた


「クラナ・・・」


クラナがなにを言いたいのかはわかっている

なぜ死ななければならなかったのか・・・


そのとおりだ


あいつは確かに敵

それは誰もが承知している


しかし・・・死んだ


俺たちを見つけてしまったばっかりに・・・


申し訳ない気持ちからか溜め息のようにでた言葉だった


「死んじゃったのか・・・」


「死んでないよ」


「は!?」


この声は・・・



誰?


くもぐった声・・・不思議な声・・・

低いのに聞こえる声・・・


あっ!


「ヴァリ・・・」


「うんうん よく覚えていたな」


「お前・・・どこだよ・・・」


「さぁなぁ」


「殺すよ?」


「いや・・・すいません うごいてないっす

 さっきのところっす」


「じゃあなんで俺に聞こえるわけ?」


「いやお前だけでない 

 そこにいる時代チェンジャース全員 きいとるよ」


「へ?」


セロはあたりを見回す

イギリは後姿なのでよくわからないが

隣にいるクラナも少し上を向いた姿勢で静止している


ポプールも口を少しあけて なぜか手を合わせている


ガデインはなぜか頭をたたいていた

幻聴とでも思っているのか



セロはさきほどの疑問をぶつけた


「死んでないってどういうことだよ」


「おぉ!そこじゃ 実は秘密があってのぅ」


「秘密・・・」


「よく聞けよ

 これがその武器のすごいところなんじゃ

 その武器は全部にトリガーがついているじゃろう?」


トリガー・・・

確かにそうだった

はじめに持ったときの疑問

なぜかついているトリガー


剣なのに・・・


その時はヴァリの冗談だと思って気にもしなかったけど

これがそんな重要な役割をするなんて・・・


「それを引いた状態  つまり引いてから切ったものが

 影響するということだ

 ややこしいけどわかった?」


クラナの顔には?が浮かんでいる

よくわからなかったのだろう


「つまりそのトリガーを引かなければ全く意味はない

 本当に殺したい相手

 そのときに引くだけじゃよ・・・」


セロはヴァリにもらった武器を見る


確かに

トリガーがあった説明を受けてもう一度見ると


あのときは気にもしなかったトリガーが

とても重要なものであるように感じる






(そうか・・・これを使うのか・・・って!)


「何で早くいわねぇんだぁ!!!」

セロが思い切り叫ぶ


「ひっ・・・」


ヴァリが引きつったような声を出す

おびえているのか


「ごめんなさい・・・だってだって・・・」


「だってじゃねぇ!!」


(全くこいつは・・・いつも重要なことはいわねぇんだ・・・くそ・・・)


「ちょっとまって」

クラナだった


「私の武器・・・銃なんだけど・・・」


確かにそうだった

銃にはトリガーがついていて当たり前


と、いうよりトリガーがなかったら銃じゃない


「おぉ クラナちゃんだけは特別でな」


(ちゃん?)


「見てみろ その銃」


ヴァリはクラナにだけいったようだったが

セロもクラナの銃を見た



「その銃の場合はトリガーでなくトリガーの先にあるところ

 そこをスライドさせることによって

 殺傷能力を得ることになる」


試しにスライドさせようとしたクラナをヴァリは

慌ててとめた


「ま!まった!」


クラナは手を止める


「殺傷能力を得ちゃうとホントに殺せちゃうから駄目だってば」

ヴァリは赤ん坊をあやすようにクラナにいう


「つーことはイギリはトリガーを引いてなかった

 イコール・・・しんでないってことか?」


みんなが一斉に衛兵を見る


血は流れていなかった

気絶・・・でもしているのだろうか


「お前らさっきから何をしとるんだ・・・」

アズアがいかにも不思議そうに言った


(そっかアズアはこの時代のやつだから

 全く聞こえてないんだよな・・・)


「でもまぁなんにしてもよかったよな みんな」


セロがみんなにさとすように問いかけた


「うんっ」と元気に返事をしたのはクラナ


「ふぁああ~~~どうなることかとおもったぁあ」

その場にべたっと倒れこみ

眠そうにしたのはポプールだった


オーバーなアクションだったがなんだか

どっと疲れた気がする


そしてガデインは  というと

クラナの持っている銃に集中していた


やはり銃に興味があるのだろう


それに気付いたクラナがさっと銃をしまう


それを残念そうに見たガデインをみて


みんなで見合わせて笑った


久しぶりの笑顔だった