皆さんこんにちは。

今回も、〖聲の形〗の考察をしていきたいと思います。






※〖聲の形〗とは……




~聲の形とは~

世界的にも話題となった〖聲の形〗です。
マガジンでも1巻から7巻までコミックスが出ております。(既に漫画は完結しております。)

〖君の名は〗と同時期に、映画化もしておりました。

「耳が聞こえない」というヒロインがいることで、パッと見ると〖障がい者について理解を深める〗がテーマだと思われるのですが、実際は〖コミュニケーション〗がテーマとなった物語である。












今回考察していくのは、


西宮さんは植野さんに、腹を割って話していたのではないか?


という考察です。



どういう事かと言うと、植野さんは西宮さんが本音で話さない事に、とても腹を立てていました。

西宮さんを感情的にさせようとして、敵意剥き出しの態度で挑発しても、彼女は自分を責めるだけ……。

植野さんとしては「不満があるならハッキリ言えよ!本音出せよ!」と、イライラMAX状態です。

……しかし、西宮さんをネガティブ思考&自己肯定が低い目線で見ると、

西宮さんはちゃんと腹を割って話していたのではないか?
と、思える点が幾つかあるのです。




その点についてを、考察していきたいと思います。






























①観覧車内での話し合いの時。







5年前の蟠り(わだかまり)を払拭しようとした植野さんが、西宮さんを観覧車へと連れて行き、面と向かって話をしましたが……。

話し合いの結果は、大失敗。
5年経っても変わらない西宮さんに対し、怒りを抑えられなくなった植野さんが、彼女に思いっきりビンタをかましてしまいました。



植野さんとしては、西宮さんの本音を引き出せなかったと、思い込んでいますが……。
植野さんはちゃんと西宮さんの本音を引き出していました。


それが、西宮さんが言ったこの台詞。



「わたちは、わたちが、きあいでつ(私は、私が、嫌いです)。」



口で喋るのが困難な彼女が、筆談に逃げずに、振り絞って言った言葉です。


ネガティブ思考で自己肯定が低い人というのは、
自分が嫌いで仕方がないけど、それを表立って言葉にはしないものです。

人付き合いに対して、挫折感や恐怖を抱いている人は、何度か経験された事があるのではないでしょうか?

失敗した時に「自分は駄目だ!駄目人間だ!消えてしまいたい!」と、感情が爆発して、自分を責めまくって、ふと周りを見ると、ドン引きしたような友人達の姿があった……。
という経験、ありませんか?


これが一番怖いんですよ。
自己嫌悪に陥っている場面を、
人に見られて気持ち悪がられる瞬間が、とても怖いんです。






「皆に馴染まないといけない……。」「完璧にならなきゃいけない……。」「こんな事言ったら嫌われる……。」
非の打ち所のない、皆の間に波風立たない、友人達から慕われる人間にならないと……じゃないと、周りから見捨てられる。

本当は自分の感情を抑え込むのがしんどい……。
でも、マイナス思考な自分を出したら嫌われる、我慢しないと……。

自己肯定感が低い人程、
ネガティブの後ろに隠れているプライドが、弱音を吐くことを許さないんです。

「自分はこういう人間だから、これでいいや!」
とは、どうやっても思えないんです。




周りの空気を読むことに必死で、笑顔を絶やさないようにしていた西宮さんが、
初めて人に向かって、「自分は自分の事が嫌いで仕方がないんだ。」と、打ち明けたんです。

植野さんの「腹を割って話したい。」という声に応えて、家族にすら言えなかった「自分が嫌い」という事を伝えたんです。


ですが、意見の食い違いと言いますか、早とちりと言いますか……。
回りくどい言い回しが理解出来ない植野さんには、「コイツまた逃げやがった!」と、取られてしまったのです。



自分の事が好き、自分の事が嫌い……。

好きや嫌いの度合いは、個人によって様々です。
度合いや重さは違うけど、それに共感が出来るのは、同じ境遇で育ってきた、または過去に経験した事のある人だけではないでしょうか?

共感性がどれだけ高くても、実際の現場を見ていないと、想像出来ないのが人間というものです。

植野さんと西宮さんの暮らしてきた境遇は、全く違いますし、二人の思っている「自分が嫌い」も全然違うものです。

西宮さんは、
「人に迷惑ばかりかけ続けて、人を不幸に落とす自分が嫌い。」
植野さんは、
「素直になれない、直ぐに感情的になる自分が嫌い。」


同じ「自分が嫌い」でも、中身は全然違います。





植野さん、感情的になる自分が嫌いって言ってる割には、直ぐに暴力や暴言ばっかり言うじゃん。
と、思うじゃないですか?

感情を抑えられずに、直ぐにこうなってしまう(暴言や暴力に走る)から、嫌いで仕方がないんですよね……。
直したくてもなかなか直せない、西宮さんの著しく低い自己肯定感と同じです。




植野さんは、西宮さんの腹を割って出した言葉を、その場凌ぎの謝罪だと解釈。
いつも「ごめんなさい」で、争いを避けていた西宮さんが、また逃げるんだと早とちりしてしまいました。

そして「私だってこんな自分大っ嫌いだっつーの!でもどうすれば良いのか解んないんだよ!」という植野さんの中の不器用な感情が大爆発!


結果、西宮さんにビンタを一発を喰らわせて、捲し立てるように吐き捨てます。


「そんなありふれた事を、自分だけの事のように言わないでくれる!?」
「解ってたよ、その方が楽だもんね!弁解するより認めちゃった方が!」
「無理矢理言ってるのバレバレだったよ、ありがとうも、ごめんなさいも。」

「アンタは5年前も今も変わらず、私と話す気がないのよっ!」


と、「西宮さんは私と腹を割って話す気がない!」と、決めつけて西宮さんとの話し合いを終わらせてしまいます。



あの場面で植野さんが黙って、西宮さんが紡ぐ言葉を待っていたら、話し合いの結末も変わっていたのではないか……と、思いました。

そう考えてはみるものの……やはり植野さんから、何かしら攻撃を喰らわせられるのは、変わらないのかな……?
なんて思ったり……。









西宮さんは、家族には相談出来なかったのか?
と、思う人もいるでしょう。

……多分、家族の前でそんな事を言ったら、西宮お母さんに張り倒されそうな気がします。
「強くなれ」と教育している人に対し、マイナス思考を見せたら、責められるのは確実です。
結絃ちゃん(妹さん)には、負担を更にかけてしまうし、おばあちゃんにも心配をかけたくない。
だから、家族の前でも常に笑顔で、気丈に振る舞っていたんだと思います。

西宮さん……高校生とは思えないくらい、気を使いまくってるな……。































②手紙に綴った西宮さんの本音。





植野さんに「アンタは私と話す気がないのよ!」と、言われてしまい、西宮さんは誤解を解くために、植野さんに手紙を送ることにしました。


手紙の内容は、

・幼い頃から、人の空気を壊さないようにと、必死に笑顔を取り繕っていたこと。
・妹がこれ以上虐められてしまわないように、自分が矢面に立つことで、被害が広がらないようにしていた。
・自分は直ぐに気持ちを取り繕って、言いたいことを黙り続けていた事を、気付いてくれていて、とても嬉しかったということ。

この内容は、観覧車事件の時に直ぐに書いたものです。
観覧車内で植野さんに伝えたかった内容を、綴って書いたものなのですが……。

植野さんが手紙を読んだタイミングはいつだったのでしょうか?



私は、植野さんが手紙を読んだタイミングは、

石田くんが入院した病院先で、初めて読んだのだと思います。






橋崩壊事件にて、また孤立の道を進むこととなった石田くんを見て、「やっぱり私は人を不幸にする事しかしないんだ……。」と、完全に生きる希望を無くしてしまった西宮さんが、飛び降り自殺を計りました。

ですが、それは石田くんによって引き止められ、代わりに石田くんが落ちてしまう事に……。

ずっと片思いしていた石田くんを、ショーガイを武器にして良い子を演出しているハラグロ女(植野さん視点)に奪われて、彼を危険な目に合わせて、重篤な状態にした西宮さんを、植野さんが許せるわけもなく……。








場面は代わり、病院の駐車場にて……。



植野さんは西宮さんをフェンスに投げ付けて、顔面ギリギリを狙って、蹴りを入れていました。

「何でテメーの代わりに石田が傷つかないといけねーんだよ!」と、怒髪天モード全開で、怒りのままに彼女へ暴力を振るいました。

駆け付けた所で唖然とする佐原さんと、結絃ちゃんの前で、植野さんは

あの手紙を取り出したのです。



どうやら植野さんは、受け取って直ぐには読んでいなかったようです。
その証拠に、手紙の封を閉じているシールに、剥がされた形跡がないからです。





最初に書いておりましたが、この手紙の内容は、観覧車内での植野さんの言葉に対して応えたもの。

ですが、植野さんが手紙を見たタイミングは、自己肯定感の低さや、取り繕った行動が原因で、石田くんが大怪我を負って、入院することになった時です。

何ともタイミングが悪過ぎます……。

手紙を見た植野さんは「この悲劇のヒロイン気取りの害悪女!」と、西宮さんをますます嫌悪する事になります。




「コイツは皆の気持ちも知りもせず、勝手にそれが良いって判断して飛び降りやがったんだっ!」
更に激高して、西宮さんを何度も何度も叩き続ける植野さん……。


違うんですよ、植野さん……。
その手紙は、観覧車内でのあなたに向けて綴られたものなんです……。

もしかして植野さんは、西宮さんが『こういう内容』で、手紙を書くだろうと思っていたから、敢えてその時が来るまで、見ようとしなかったのでしょうか……?



植野さんが西宮さんに求めていたのは、
「私を恨んでいるでしょ?だったらその不満を吐けよ!私の事が嫌いなんでしょ?だったら嫌いって言えよ!」
という、決して人を嫌いになろうとしない西宮さんからの「あなたが嫌いです。」という拒絶と嫌悪の感情だと思います。


ネガティブ思考・自己肯定感の低い人が、自身の抱えている悩みの種を吐いてくれる、というのは、「この人になら話しても良い」と、認識して貰えたことではあるんですが……。

複雑な心境を理解するのが苦手な植野さんには、上手く伝わらなかったようです。


何とも歯痒いです……。






























③観覧車に乗る相手が違っていたら?





これは、以前に書いていた『聲の形のもしもルート』に、似通ったものになりますが……。

もしも、
西宮さんと観覧車に乗る相手が、違う人だったら、どうなっていたのか?
という考察です。







・石田くん
西宮さんとの二人きりの空間に、しどろもどろで、ちょっとズレた話題ばかり出して、西宮さんと上手い具合に会話は出来なさそう……。

・永束くん
「僕はこういう映画を作りたいと思っていて……」と、映画についてのコンセプトを、西宮さんと筆談で話し続けていそう。

・佐原さん
学校生活の事や、次は何処に遊びに行くか?を、二人で相談したり、将来の目標や夢について話していそう。

・川井さん
恋愛モードに浮かれている時期だから、西宮さんに「気になる人はいるのか?」みたいな恋バナトークを始めそう。

・真柴くん
「あ、鳥が飛んでる。」「今日はいい天気だね。」と、当たり障りのない会話で終わりそう。

・結絃ちゃん
姉妹仲良く観覧車からの景色を楽しんで、はしゃいでいそう。







植野さん以外の人達は皆、
西宮さんの過去を掘り返そうとはしないでしょう。

遊園地に遊びに来ているから、普通に楽しんでいる、というのもありますが……。

相手のプライベートに飛び込んで行く植野さんとは違って、むやみやたらに過去を詮索するタイプの人達ではないからです。




石田くんは、彼女をいじめていた過去を思い出させたくないと、思っているから話題には出さない。

永束くんは、自分の過去が人に自慢できるものじゃないから、過去を掘り返したくない。

佐原さんは、どれだけ親しい相手にも、一歩引いた接し方をしているので、相手が話してくれるタイミングまで待つ。

真柴くんも、佐原さんのように一歩引いた対応をしている。

川井さんに至っては、相手の過去になんて興味がないので、話題にも出さない。



『過去の楽しかったあの頃』
『石田くんとの楽しかった時間』
にずっと囚われている植野さんだからこそ、過去を振り返り続けてしまうんでしょうね。



西宮さんとは観覧車以外でも、二人になったタイミングで「私はアンタの事が嫌い。」と、話していそうな感じもします。





























コミニュケーションって難しい。






いくら血の繋がった家族であっても、家族の考えている事なんて解らないように、他人の考えている事なんて解らないもの。

仮に相手の思考が読めるようになったら、それはそれで相手に対して疑心暗鬼になって、誰にも心を開けなくなってしまうでしょう。

人が十人いれば、似ている趣味や特技があっても、一人一人の思っている「趣味」、「好き」、「嫌い」は全く違います。



だからこそ、意見が食い違って関係が破綻したり、良縁な仲に深まったりと……不思議な事が様々起こります。

まさに、事実は小説より奇なり、という言葉がピッタリですね。






ここまでの閲覧、誠にありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。