*ジョンフンの話・・・

 

「お二人は本当によくお似合いですね。

でしょ?監督さん?」

とファン作家が言った。

 

「ああ・・、ええ・・・」

 

「アンカーは今日時間はよろしいですか?

ついでに気になることを全部聞かせていただきたいと思っているんですが」

「はい、大丈夫です」

「いえ、取材はいっぱいしたんですが、台本を書いていると、またどんどん気になることが出てきてしまって。

こんなにあるんです。アンカーに聞きたいこと」

と言って、作家がノートを僕に見せた。

「ああ、はい」

 

「それで、ハジンさん、映画を見ましたよ」

と、作家が続けた。

「ああ、はい」

「オープニングからすごく綺麗に登場しましたね。

演技もとても良かったですし」

「ああ、そうですか?」

「正直、心配していたんですが、映画を見た後は確信しました。

私は、ハジンさんのおかげでいっぱい稼げそうだなって。

フフフ」

 

「信じてくださってありがとうございます。

私、本当に一生懸命やります」

 

「ゆっくり食事をしながら話をしてはどうですか?

食べ物が出て来てだいぶ経ちますし」

と僕が提案した。

 

「あら、ごめんなさい。

私が長く話をし過ぎましたね。

どうぞみなさん、気楽に食事をしてください。

ハジンさん、これすごく美味しいのよ」

そう言って、作家は料理の大皿を彼女の近くに置いた。

 

「ああ、はい」と言って彼女が料理に手を伸ばした。

僕は思わずその手を捕まえた。

 

******

 

昔、ソヨンと海鮮料理を食べていた時、ソヨンが話したことがあった。

”ハナなんだけどね、小さい頃は自分がエビアレルギーがあるって知らなかったんだって。

それで、エビって最高の味だな・・と思ってたらしいの。

緊急で医務室に運ばれてもまだエビのせいだとは思わなかったんですって。

笑えるでしょ?”

 

******

 

「エビを食べたらだめじゃないですか」

「ああ・・・、エビだったんですね。

気が付かなかったわ」

 

「どうして?

エビアレルギーなんですか?」

「はい。食べるとノドが腫れちゃって、しばらく大変なことになるんです」

「まあ、ごめんなさい。大事になるところだったわ。

ホントに良かった。

やっぱり彼氏はハジンさんのことをよく知ってるのね。

羨ましいわ。

監督さん、これは私たちで食べないといけませんね」

 

彼女が小声で

「どうして分かったんですか?

私、話したことありましたっけ?」

と聞いた。

 

「・・・・・・・・。

あっ、ちょっとトイレに・・・。

申し訳ありません」

 

そう言って僕は席を外した。

 

 

*ハジンの話・・・・

 

「やっぱりニュースの場面の練習は早ければ早いほどいいですよね?監督」

とファン作家が言った。

「はい」

「ハジンさん、ニュースのシーンについてはアンカーに個人教授をお願いするでしょうから、心配しなくても大丈夫よね?」

「そうですね。きっと厳しく指導してくださると思います」

「フフフ」

 

その時、ファン作家の電話が鳴った。

 

「すみません。ちょっと電話を・・・」

そう言って、ファン作家も部屋を出て行った。

 

監督が

「飲みなさい」

と、ワインを勧めてくれた。

 

「はい」

 

「自信はありますか?

僕たちのドラマは簡単ではありませんよ」

「自信はありませんが、一生懸命やり・・・」

「自信がないんですか?

じゃあ、やめなさい。

放送は遊びじゃないんだから」

 

「えっ?」

 

「ファン作家が気に入ったと言ったからOKしたんだけど、実は僕は気に入らないんだ。

僕たちのドラマのヒロインはもっと気品ある人にしたい。

ヨ・ハジンさんは・・・分かるだろ?

僕たち、正直に話をしよう。

アンカーの役が本当に自分に合うと思いますか?

恥ずかしくはないんですか?

立派なアンカーと付き合ってると言うだけで、こんな大役を手に入れて。

まあ、良い男を捕まえるのも才能と言えば才能なのかもしれないけど」

 

「それはちょっと言いすぎではありませんか?」

 

「ああ。良かった。

俺のこと嫌いだろ?

お互い嫌いなんだから、無理はしないで適当なところでやめにしよう。

ファン作家も今はイアンカーのせいで舞い上がってるが、ヨ・ハジンさんの演技を1・2回見たら、すぐ我に返るはずだ。

だから適当なところで手を引きなさい。

突然スケジュールが合わなくなったとか、体調が悪くなったとか。

分かったね?」

 

ちょうどそこにアンカーが戻って来た。

 

「ああ、ごめんなさい」

と言って、ファン作家も続けて戻って来た。

 

「ああ・・・私たち、何の話をしていたかしら?

ああ!アンカーはハジンさんに特別レッスンをしてくれるだろう・・って話をしてたんです」

「そうですね。

ちゃんと指導させてもらいます。

リーディングの時にきっと驚かれると思いますよ。

ハジンさんがあまりにアンカーらしくて」

 

「まあ!どうしましょう

今から期待が膨らむわ」

 

「それで・・、ひょっとしてハジンさんが僕と付き合ってるのがキャスティングの理由という事はないですよね?」

「違いますよ」

「ああ、ちょっと気になったものですから。

アンカーの彼氏のお陰で役をもらえたと、誤解する人がいるかもしれないって」

 

「そんなこと!あり得ないわ。

キャスティングでそんな事あるわけないですよ。

演技はハジンさんがするんですから」

「そうですよね?

バカな質問をしてしまいました。

では、そんなバカな考えをする人がいるとすれば、その人がおかしいってことですね」

 

「そうですよ。

そんな事夢にも考えないでください。

そうですよね?監督?」

「・・はい」

 

「ハジンさん、もしもそんな事があっても気にすることないわよ」

「ああ・・、はい」

 

 

・・・・続きます。