*ジョンフンの話・・・

 

 

医療刑務所に着くと、所長が迎えてくれた。

 

「こんにちは、所長さん」

「こんにちは。テウン君から連絡をもらいました。

ここは初めてでしょう?」

「はい、初めてです」

「では、行きましょうか?」

 

ソンホの部屋へ向かいながら所長が聞いた。

「理由を聞いてもいいですか?

8年間一度も訪ねて来なかったのに、今になって来てみたくなったのはどうしてなのか」

 

確認したかったからです。

好きなように死ぬことも生きることも出来ないまま、ここに閉じ込められていることを。

今、ヤツに出来ることは何もないと言うことを。

二度とヤツにあんなことをされる人はいないという事を。

 

ゆっくりとムン・ソンホの部屋に入って行った。

僕に気づいたヤツはベッドから起き上がり・・・そして笑った。

 

******

 

「頼みを聞いてやるのはこれ1回きりだぞ。

次は絶対にダメだ。

あそこに行くのはお前にとっても良くないことだぞ」

とテウンが言った。

 

「分かってる。

でもアイツじゃないことを自分の目で直接確かめたかったんだ」

「お前が何を心配してるのかは分かるが、違うよ。

あんな事はもうない。

あそこにいるのをちゃんと見て来たんだろ?

ハジンさんは芸能人だから、過激なファンがそんな事をすることもあるんだろう。

今後は気を付ければいいんだし。

だからあまり深刻に受け止めるな」

 

「8年前、あの時は俺もそうだった。

単なる偶然なだけだと。

何でもないと。

コンビニで・・・、カフェで・・・

何度も遭ったが気に留めなかった。

近所の人だからそういう事もあるんだろうと。

もしもあの時俺が一度でも疑っていたら・・・

きちんと調べていれば・・・

防げたはずだ。

ソヨン・・・、俺が殺したんだ。

もしもまたあんな事があったら、耐えられる自信がない。

ハジンさんまで失うわけにはいかない」

 

 

*ハジンの話・・・・

 

おかしいなあ・・・

テーブルの下を覗いてみる・・・

どこにもない・・・

 

「どうしたの?」

とハギョン。

 

「ピアスの片方を探してるの」

「揃えて置いてなかったの?」

「置いてたと思ったんだけど、片方が見あたらなくて・・・。

作家さんとのミーティングに着て行く服と合うのになあ・・・」

 

「よく探した?」

「あなたが付けて出かけたんじゃないの?」

「つけないわよ」

「うーん。。これがぴったりなのになあ・・・」

 

*****

 

家の外に出てみると、アンカーが待っていた。

 

「あっ!アンカー!

早く来られたんですね」

 

「オンニ!

しようかどうしようかと悩む話はしないでね。

聞かれてもいない事は言わないでね。

つまらない話はしないでね」

「ウン」

 

「では僕は8時頃に迎えに行けばいいですか?」

とチョロが聞いた。

 

「いいえ。

終わったら僕が送って来ます」

とアンカーが言ってくれた。

 

「僕はそうしてもらえると有難いです」

 

「じゃあ、行きましょう」

「はい」

 

アンカーの車でミーティングへと出発した。

 

 

・・・・続きます。