*ジョンフンの話・・・

 

「どこにあるんだ?」

「ここです」

と言って、イルゴンが緑の封筒を差し出した。

 

「この前と同じです。

同じ封筒で、差出人の住所はありません。

 

中にはこの前と同じように僕だけが傷つけられた2人の写真が数枚入っていた。

そしてその中の1枚には

”錯覚するな ハジンが愛しているのは俺だ”

と書かれていた。

 

******(回想)

 

電話をかけた。

「ああ、ソヨン。雪がかなり降って来たぞ。

俺の言うことを聞いて傘を持って行って良かっただろ?」

”本当だな。

今日に限って雪がひどく降ってるな”

 

知らない男の声だった。

 

「もしもし?」

”俺を知らないのか?

俺たち何度も遭ってるのに。

ソヨンと一緒に”

「誰だ?

お前、何でソヨンの電話に出るんだ?」

 

”アハハハ。

錯覚するな。

ソヨンが愛してるのは俺だ。

イ・ジョンフン、お前じゃなくて。

ああ・・・ソヨン。

お前が話してやればいい。

ちょっと待て”

 

「もしもし、もしもし」

 

”イ・ジョンフンさん、切らないで。

ソヨン、ソヨン。

ほら話して。

お前が本当に愛してるのは俺じゃないか。

そうだろ?”

 

「ソヨン、大丈夫か?」

 

”オッパ・・・助けて・・・”

”ソヨン、どうして俺がお前を殺すと思うんだ?

俺がどれだけお前を愛してるか。

俺たち、これから幸せになるんだ

なっ?

お前が愛してるのは俺だろ?

そうだろ?”

 

”オッパ・・・”

 

「ソヨン、大丈夫か?

ソヨン、どこだ?

答えてくれ、ソヨン」

 

”ソヨン、プレゼントを持ってきたんだ。

俺が工場で作った指輪だ”

 

「ソヨン!大丈夫か!

ソヨン!ソヨン!」

 

ガチャガチャ・・と金属音が聞こえて来た。

 

”いやー!

きゃー!”

 

ガタン。

 

”オッパ!

助けて!

私を助けて!

オッパ!”

 

「ソヨン!どこだ?」

 

”オッパ”

 

ガタン、ガチャン!。

 

「お前、ソヨンに手を触れたら殺してやる!」

 

”オッパ!”

”これは全部お前のせいだ。

お前のせいでソヨンがこんな風になったんだ

これは全部お前のせいだ!

イ・ジョンフン!お前のせいだ!”

 

****

 

車でソヨンを探し回った。

ずっと電話をかけ続けたが、応答はなかった。

 

線路沿いの道を走っていると、目の前に女性が落ちて来た。

驚いて車を止めて外に出た。

 

信じられない気持ちでゆっくりと近づいて行く。

雪を踏みしめながら。

 

倒れている女性の顔を見てやっと我に返った。

「ソヨン!しっかりしろ!」

 

「ソヨン!しっかりしろ!

 

「・・オッパ・・・」

 

「ソヨン、ちょっと待ってろ。

オッパがすぐに救急車を呼んでやる」

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・・」

 

「ソヨンしっかりしろ!

ダメだ、ソヨン!

しっかりしろ!

しっかりするんだ、ソヨン!」

 

「オッパ・・・ごめんな・・・・・」

 

「ソヨン、ダメだ。ソヨン、目を開けろ!

ソヨン!ソヨン!」

 

”イ・ジョンフン!”

上から声が聞こえて来た。

 

目の前の建物の屋上でストーカーが笑っていた。

 

*****

 

ストーカーの家を見つけ、中へと駆け込んだ。

 

ストーカーは花を花瓶に差しながら

「思ったより早かったな」

と言った。

 

駆け寄り思い切り殴った。

「どうしてよりによってソヨンなんだ!

どうしてソヨンだったんだ!

どうして!どうして!」

 

そうやって相手を殴り続けた。

 

「どうしてソヨンなんだ!」

 

揉みあって倒れたはずみでガラスの花瓶が落ちて割れた。

そのかけらを手に持ってストーカーが僕につきつけて来た。

 

「どうしてよりによってソヨンだったのか?だと?

俺たちの間を引き裂いたのはイ・ジョンフンお前じゃないか」

 

「何だと?」

 

「でももういい。もう俺たちの仲を誰も邪魔出来ない。

俺たちは永遠に一緒にいることになるんだから。

フフフフフ・・」

 

そう言うと、ストーカーは自分の首にガラスの破片を押し付けた。

 

が、その瞬間、ヤツは走り込んで来た刑事たちに取り押さえられた。

 

「放せ!放せ!

イ・ジョンフン!」

 

******(回想終わり)

 

僕はその足で医療刑務所へと向かった。

ストーカー、ムン・ソンホに会うために。

 

 

・・・・続きます。