日中国交正常化の特集記事の中に、書いてくださいました。

 


二胡を奏で 日中結ぶ
来日して20年 名古屋在住の二胡演奏家 張濱さん(44歳)

南京虐殺事件を否定した河村たかし名古屋市長の発言から、日本絡みの行事が次々中止されていた南京市で七月、中部地方に住む10歳~78歳の二胡愛好家約80人とともに演奏会を成功させた。
「二胡に詳しい地元の聴衆も『日本人がここまで演奏できるとは』と涙を流してくれました」。優しい音色に乗せた「川の流れのように」や童謡「紅葉」が南京市民の心をつかんだ。「音楽は人を結び付ける力がある」。あらためて確信した。
来日して二十年。きっかけは、中国で放映された山口百恵主演の「赤い」ドラマシリーズだった。心を引きつけられたのは映像より音楽。「中国にない島国独特の音色。音楽は環境から生まれる。日本に行きたくなった」
7歳から二胡に触れ、既に「国家幹部演奏家」と認められていた。その地位を捨て1992年、24歳で日本の地を踏んだ。「日本語ができない時も二胡を演奏すると、みんなに喜ばれた」
哀調があり、間を重んじる張さんの演奏は、時に「日本のわび・さびを感じる」と評される。「私が日本の環境で暮らしたからでしょう」。中国と日本、二つの国があるから、自分の二胡がある。「赤い」シリーズも、中国が日本文化を知ろうとした時期だったから放送された。それだけに、今の対立状態には「寂しい。本当に寂しい」と繰り返す
10月8日には国交正常化40周年記念コンサートを名古屋市で開く。ゲストで招く予定だった二胡の人間国宝・閔惠芬さんは中国から来られなくなったが、日本育ちの張さんの長女、張日妮さん、日本人の二胡演奏団約100人とステージに立つ。
二胡は、二本の弦の間に弓を入れて演奏する。「一本が日本、もう一本が中国。大きいことはできないけど、弓でつないでいきたい」。逆風が続く中、音楽の力を信じ続ける