ピーター・マックスというエントリーキュヴェが超絶エレガントで、かなりの衝撃だった南アフリカのワイナリー、クリスタルム。

そのピーター・マックスは、私が買った値段は税前5,400円を切っていた。

今どきそこそこ知られたブルゴーニュの生産者なら、ブルゴーニュ・ルージュでもそのくらいはする。

最近案内が来たジャン・マリー・フーリエなどは、ブルゴーニュ・ルージュで税前10,000円を越えていた。

そのピーター・マックスはブルゴーニュ・ルージュ同様、マルチ・ヴィンヤード(単一畑ではなく複数の畑のブドウを使う)のワインだったが、コストパフォーマンスの高さは群を抜いている。

そうなると上位のキュヴェも飲んでみたいと思い、シングルヴィンヤード(単一畑)のキュヴェも買ってみた。

それがこのキュヴェ・シネマの2021ヴィンテージで、私が買った額は税前8,100円ほどで、価格的にはピーター・マックスの1.5倍位だった。

ちなみに、ピーター・マックスは私が買ったヴィンテージは2022だった。

キュヴェ・シネマは、ヘメル・アン・アード・リッジ地区の中で、最も涼しい風が入るシングル・ヴィンヤードのブドウを使うらしい。

冷涼な畑のブドウということで、クラシカルなエレガントさを期待したくなる。

なおキュヴェ名の由来だが、ナポレオンの生涯を描いた映画の撮影に、このブドウ畑の風景が使われたという。

そのため「シネマ」と名付けられたとの事。

2022ヴィンテージのピーター・マックスが素晴らしかっただけに、1.5倍の価格差があるのをどう感じるかが最大のポイントだろうか。

そのキュヴェ・シネマを自宅で開けてテイスティングしてみた。

なおヴィンテージは2021で輸入元はラフィネ。

グラスはリーデルのヴィノム、ピノ・ノワールを使用した。

【テイスティング】

フレッシュなストロベリーやラズベリー、佐藤錦、少し焼いた炭のようなタンニン、赤いベリー系の果実感。

きめ細かい黒土、フレッシュなハーブ、湿った枯れ葉、マッシュルーム、晩秋の曇り空のよう。

バラの花びらやラベンダー様のフローラルさ、ナチュラルな酵母感、ルビーグレープフルーツの果肉、煮出したダージリン。

ブラインドで飲んだら薄ウマ系のブルゴーニュ、シャンボール・ミュジニーのプルミエ・クリュというのではないか。

若いワインなのでフレッシュで、赤いベリー感が強いが、反してこなれ感もある。　

栽培がビオでSO2の添加が少ないか、半分ぐらい全房発酵で早飲み路線に舵を切った、モダンなつくりだと感じる。

マルチヴィンヤードのキュヴェ、ピーター・マックスと比較すると、骨格がしっかり目で個性は強く出ている。

とはいえ、ブルゴーニュほどヴィンテージやテロワールを感じるセンサーがない。

それについては、単純に私の南アフリカのワインへの経験不足で、数多く飲めば深めていけるだろう。

シングルとマルチのヴィンヤードの違いは、優劣ではなく表現の違いと感じる。

価格の違いを考えると、気軽に飲めてコストパフォーマンスが高いマルチヴィンヤードのピーター・マックス。

熟成の変化や個性を楽しみたいシングルヴィンヤードのキュヴェ・シネマという印象。

ちなみにコルクは双方ともDIAMの10を使っていた。

価格はピーター・マックス3本と、キュヴェ・シネマ2本がほぼ同じ。

しかし個人的にはその値段なら、買う比率はピーター・マックス3本、キュヴェ・シネマは1本という割合だろうか。

私の中では両者は同じレートで、このレベルまで来ると買いやすくてたくさん飲めるものを買うからだ。

とはいえ素晴らしくエレガントなピノ・ノワールで、クオリティの高さは相当なもの。

8,000円強で買ったブルゴーニュの村名クラスはまだまだストックがあるが、それがなくなったら重宝するだろう。

熟成もさせてみたいし、ボナ・フィデという違うシングル・ヴィンヤードのワインも飲んでみたい。

また、ヴィンテージの違いも追いかけてみたいものだ。

そう思える、南アフリカ最高峰のピノ・ノワールだ。

【Verygood/Excellent!!!】

南アフリカ最高峰のシングルヴィンヤード クリスタルム キュヴェ・シネマ ピノ・ノワール 2021