インターネットが普及し、ウイスキーもワインも海外から気軽に個人輸入できるようになった。

円が高くポンドやユーロが安い時期には、私もよく海外から購入していた。

しかし、為替の変動や輸送費の高騰などもあり、今年は特に信頼できるインポーターが輸入した国内流通品を買う機会が増えた。

ウイスキーのインポーターは代理店としてウイスキーを国内に輸入する以外では、自社向けのプライベートボトル用の樽の選定も行う。

また、近年はbarや酒屋もプライベートカスクを多く詰めがちなため、その樽を供給したりもする。

それゆえ、目利きの確かさはそのインポーターの評価に直結する重要なファクターだ。

そんな中で目利きが素晴らしく、私の中で安心して買える鉄板の国内のインポーターがいくつか存在する。

もちろんその目利きと、自分の好みが合うかも重要だが、『いい酒』の基準がしっかりしているのが私にとってのいいインポーターだと思う。

そんな鉄板のインポーターのうちの一つが、東京は練馬に拠点を置くスリーリバーズだ。

そのスリーリバーズは今年めでたく設立20周年を迎えた。

20周年を記念したボトルはいくつか出ているが、私が購入したのはそのうちの一つ、アードナムルッカンのシェリーカスクだ。

アードナムルッカンはマル島北部に位置する西ハイランドの半島の僻地にある。

インディペンデント・ボトラーであるアデルフィ社が設立した、2014年創業の新興蒸溜所だ。

アデルフィは高品質なボトルをリリースする中堅ボトラーで、日本の正規代理店はスリーリバーズが務めている。

その繋がりもあり、アードナムルッカンもまた、スリーリバーズが正規代理店となっている。

そのため、スリーリバーズの20周年を祝い、このアードナムルッカンがボトリングされたわけだ。

スペックとしては2017年と2018年の蒸溜で、使われているのは100％シェリーカスク熟成の原酒。

ちなみにアデルフィは裏ラベルにQRコードが記載されていて、それを読み込むとボトルの詳細が表示される。

↓↓↓このボトルの詳細はこちら

https://ardnamurchan-distillery.co.uk/products/646de97b721951725b31d9af/86

AdelphiAdelphi

ardnamurchan-distillery.co.uk

それによるとアメリカンオークとスパニッシュオーク、バットやホグスヘッド、オロロソ樽やペドロ・ヒメネス(PX)樽をミックスしたカスクストレングスだそうだ。

アルコール度数は58.2％、日本市場向けに1,500本ボトリングされている。

また、ピーテッドとノンピートのモルトを半分ずつブレンドしていて、2023年6月にボトリングされている。

2017と2018のヴィンテージというと、2017年1月から2018年12月までの蒸溜があてはまる。

つまり熟成期間は4年半から6年半の熟成ということになる。

私が買った価格は税前で10,500円と、熟成が短いのはあるにしても今時かなり良心的な値段だ。

そのウイスキーを近所のbarで飲んだが、ちょっとビックリする味わいだった。

すぐに追加で買おうとインターネットを探し回ったが、日本市場向けに1,500本もあるにも関わらず売り切れていて、買える店はなかった。

あまりウイスキーを買わなくなったため、お願いできる酒屋も少なくなっているが、いくつかあたり何とか1本は追加できた。

そのボトルを家で開栓し、改めてテイスティングしてみた。

【テイスティング】

ダークチョコレート、プルーンやレーズンなどのドライフルーツ、ニスを塗ったマホガニーの古時計、焼いた鉛筆の芯。

ヨード感、荒い波飛沫、ブラックペッパー様のスパイス、カカオパウダー。

ローストしたスモーキーなコーヒー豆、プリニーなニュアンス、黒胡椒をふったカリカリベーコン、甘味控えめなPXシェリー。

アフターにはソルティーな塩味、チョコレートや焦がしたカラメルの苦味。

さすがに熟成の深みはそんなにないが、未熟感がほぼない短熟シェリーカスクのウイスキー。

2017や2018ヴィンテージの原酒ということなので、前述した通り4.5年～6.5年の熟成だ。

しかし、そう思えないくらい飲み口が柔らかく、シェリーカスクのシングルモルトの魅力に溢れている。

プルーフの高さや熟成の短さは酔い方には表れるが、開けたてにも関わらず既に完成している。

この短い熟成でこれだけ仕上がったシェリーカスクのウイスキーはそう経験がない。

しかもそれがシングルカスクではなく、多樽のバッティングで1,500本あるというのがすごい。

奇跡の一樽ではなく、アベレージの完成度がとんでもなく高いという事だからだ。

長きにわたるパートナーシップを結ぶ会社の20周年を祝い、よっぽどいいシェリー樽を厳選しバッティングしたのだろうか。

もしブラインドで飲んだとしたら、おそらく熟成期間は間違うだろう。

今後多樽ヴァッティングでこのクオリティがコンスタントに出せ、このスタイルがこの蒸溜所の目指すものだとすると末恐ろしい。

順調にいけば、古きよきハイランドパークやタリスカー、スプリングバンクにいずれ肩を並べるのではないか。

ちなみにUKではアデルフィの30周年で、2014ヴィンテージ、9年熟成のPXシェリーのシングルカスクがリリースされている。

それも飲んでみたいと思い当たってみたが、これまた売り切れまくっていて、まだ手に入れる事ができていない。

それもぜひ飲んでみたいし、できればこれと並べて飲んでみたいものだ。

スリーリバーズの20周年だけあってさすがのクオリティで、味も価格も満足度が高く、将来どうなっていくのかも追いたくなるボトルだ。

やはりアードナムルッカンのポテンシャルはとんでもなかった。

それを思いしらされる、素晴らしき20周年記念ボトルだ。

【Verygood/Excellent!!】

616.アードナムルッカン 2017&2018 スリーリバーズ20周年シェリーカスク 58.2％

616.アードナムルッカン　2017&2018　スリーリバーズ20周年シェリーカスク　58.2％