フランスのソーテルヌ地区でつくられるその地名を冠したワイン、ソーテルヌ。

世界三大貴腐ワインの一つといわれる、極甘口のデザートワインだ。

その空樽がウイスキーの後熟(カスク・フィニッシュ)に使用される事もあるため、ウイスキーファンにも馴染みのあるワインではないだろうか。

ソーテルヌはワインの銘醸地である、ボルドーの一地区にあたる。

特別な環境下でないとブドウに貴腐菌はつかないらしく、貴腐ワインをつくれる場所は限られる。

また、完全に貴腐化したものを選果するため収量も少なく、ブドウの樹一本からグラス一杯分しかつくる事ができないと言われる。

そのため自ずと高価になるが、いいソーテルヌは非常に長命で、100年以上でも保つという。

ゆえに、子供の生まれ年のソーテルヌを買い、成人した時に贈るというワイン愛好家も多い。

かくいう私も、子供の生まれ年のシャトー・ディケムを買って保管している。

そんなソーテルヌだが、極甘口ワインの需要が低下しているため、辛口の白ワイン、ブラン・セックを多く作るようになっているようだ。

唯一の第一特別級に格付けされるソーテルヌを代表する名門シャトー・ディケムも、イグレックという辛口白ワインを世に送り出している。

そして、ソーテルヌの第一級に格付けされるシャトー・スデュイローも辛口の白ワインを出している。

それがこのブラン・セック・ド・スデュイローだ。

シャトー・スデュイローはシャトー・ディケムと地続きの好立地にあり、ソーテルヌの最高峰の一つに数えられるシャトーだ。

今はメドック2級のピション・ロングヴィル・バロンと共に、フランスのアクサグループ、アクサ・ミレジムの傘下にとなっている。

スデュイローの作付割合は、90％がセミヨン、ソーヴィニヨン・ブランが10％となっていて、辛口白ワインが占める割合は30％になるという。

先日生産者を招いて開催された、アクサ・ミレジムのセミナーに出席した。

そこではスデュイローの極甘口ワインとともに、辛口白ワインのリオン・ド・スデュイロー・ブラン・セックの2021ヴィンテージが提供された。

講師を務めたアンバサダーのアナ・カバーロ女史は、熟成させずにフレッシュな状態で飲んでほしいと話していた。

秀逸なボルドー・ブランで、気に入ったため調べたらお手頃価格だった。

そのリオン・ド・スデュイロー・ブラン・セックは2020年ヴィンテージから名称変更がなされたらしい。

その前まではブラン・セック・ド・スデュイローという名でリリースされていたようだ。

税前1,600円強くらいで売っている店があったため、2017ヴィンテージを購入し家で開栓して飲んでみた。

【テイスティング】

カマンベール・ド・ノルマンディー、グレープフルーツキャンディ、フローラルな水仙の花、小石をなめたようなミネラル感。

汐っぽさ、フレッシュな洋梨の果実味、少し埃っぽく、パイナップルのような果実味。

細かく挽いた白胡椒、ナツメグ様のスパイスの苦味、完熟した八朔のワタ、マンハッタンのマラスキーノチェリー。

ソーテルヌの辛口白ワインは、AOC上はボルドーとなるが、セミヨン比率が高いためかソーテルヌの地理的な特徴か、他のボルトーブランと違う独特なニュアンスがある。

どことなくカクテル的で、スパイシーさも強めの印象がある。

この2017ヴィンテージは、先日飲んだ2021より少し熟成したからか、チーズっぽさやオリエンタルなスパイス感が強い.。

スデュイローの辛口は上位キュヴェも出ているため、このエントリー・キュヴェは価格もお手頃だ。

新しいヴィンテージのものは1,600円よりもう少し高いが、その値段で買えるデイリーワインとしては秀逸だ。

個性もあるし、ボルドー・ブランの飲み分けのバリエーションの一つとするにもいい。

今後甘口ワイン離れがさらに進めば、いずれはソーテルヌといえば辛口の印象が強くなっていくのかもしれない。

余談だが、ソーテルヌは一般的にはフォアグラやブルーチーズと合わせて提供される。

しかし、地元では冷やした極甘口のワインを食中酒として普通に料理に合わせて飲むらしい。

ボルトー白ワインの法王と呼ばれた故ドゥニ・デュブルデューは、生牡蠣にソーテルヌを合わせるのを勧めていたらしい。

確かに合う料理はいろいろありそうだし、そこにこの辛口ワインを加えれば、幅広く様々な食事に寄り添いペアリングの可能性も拡げてくれるだろう。

特にブルゴーニュの白ワインは価格が高騰しているし、安価で新たな可能性を示してくれるこういうワインはありがたい。

じっくり飲んでみると、いろいろな場面で活躍しそうな面白いワインだと思う。

そう感じるソーテルヌの辛口白ワインだ。

【Good/Verygood!!】

ソーテルヌの最高峰がつくるデイリーな辛口白ワイン ブラン・セック・ド・スデュイロー 2017