お酒の世界では、小規模な生産量のものが人気が出ると、世界中で奪い合いが始まる。
そうなると、価格が信じられないくらい上がるものが出てくる。
そういうものが生産から時間が経ち、飲まれて世の中にある本数が減る。
そうすると1本あたりの金額がさらにはね上がる。
ブルゴーニュだと神様と呼ばれるアンリ・ジャイエのワインがそれに当たるだろう。
グラン・クリュ(特級畑)であるリシュブールなどは、1本あたり800万円というアンビリーバブルな値段が付いている。
当然、私は飲んだことはない。
https://www.adv.gr.jp/blog/legends-henri-jayer01/
アンリ・ジャイエほどではないかもしれないが、シャンパーニュで神格化されている生産者といえば、ジャック・セロスだろう。
アンリ・ジャイエもそうだが、栽培から醸造まで自らが手掛けるため、年間の生産量は大手メゾンに比べごくわずかだ。
両者に共通するのだが、本人の評価はもとより教えを受けたという関係者まで値段が上がる。
高くなり気軽に飲めないとなると、ファンは当然ポスト・セロスを探すからだろう。
ワインの世界ではウイスキーの世界より評価の基準が確立され、飲み手が名前やイメージだけではなくきちんと味を評価する下地がある。
そのため、生産者もやりがいを感じてか多様化し、自らの理想の道を追求してクオリティがあがる。
その潮流の中にあるため、今シャンパーニュは相当面白い生産地ではないだろうか。
そんなシャンパーニュでいま人気の生産者として知られるのが、ジャック・セロスと同じレコルタン・マニピュラン(栽培から手掛ける小規模生産者・以下RM)である、フレデリック・サヴァールだ。
シャンパーニュの代表的な産地であるモンターニュ・ド・ランスのエキュイユに拠点を置く。
エキュイユはプルミエ・クリュ(一級畑)の村のため、当然グラン・クリュ(特級畑)よりは格的には劣る。
しかし、その味わいはグラン・クリュに勝ることはあっても劣りはしない。
ブルゴーニュを愛するフレデリック・サヴァールは、エキュイユのテロワールを自ら作るワインで表現する。
ブルゴーニュのようにフィネスとエレガンスをもつ、地域に根差したワインづくりを心がけている作り手だ。
先日そのサヴァールのセミナーに参加し、そのワインの素晴らしさを堪能できた。
そして、参加者特典としてなかなか買いづらいサヴァールのワインを買うことができた。
開けるタイミングを見計らっていたところ、知り合いから同じワインを安価に譲っていただけた。
それがこのサヴァールのエントリー・キュヴェであるルーヴェルチュールだ。
ルーヴェルチュールは英語だとoverture、つまり序曲という意味で、エキュイユのピノ・ノワール100%でつくるブラン・ド・ノワールだ。
ちなみに、ブラン・ド・ノワールとは黒ブドウでつくる白シャンパーニュを意味する。
デゴルジュマンは2023年1月で、ドサージュは3.5g/Lと裏ラベルに記載されている。
2本目が手に入ったため、1本じっくり味わいたいと思い自宅にて開栓した。
なお、輸入元はフィラディスで、グラスはザルトのユニバーサルを使用した。
【テイスティング】
すりおろしリンゴ、柔らかいミネラル感、ライムの皮の苦味、ブリオッシュ香。
スイカズラの花、クリーミーなテクスチャー、天然酵母のニュアンス、パイナップル様のトロピカル。
佐藤錦、赤い果実のジャミーなニュアンス、塩味のある藁、柔らかい純りんご酢。
立体的で、フレッシュ感のある果実味が素晴らしいシャンパーニュ。
表現が難しいが鮮やかさがクリアでフレッシュ、温度が上がってくると表情は変わるが骨格は維持されている。
理屈抜きに好きという人も多い味わいだと思うし、RMシャンパーニュを飲む醍醐味が味わえる。
欲をいえばもう少し安いとさらにいうことはないが、それはなかなか難しいのだろう。