先日家族にとってのお祝い事があった。

こういう時に開けるお酒は、やはりシャンパーニュだろう。

景気よくポンッ!という音を立てて開栓するとなおさら、シャンパーニュは祝いの場にはもってこいとなる。

そういう時には、少しいいシャンパーニュを開けたくなる。

まだちょっと早いかな?と思いながらも、飲んでみたい気持ちに勝てずに選んだシャンパーニュが、このワインだ。


作り手はアンドレ・クルエで、キュヴェはアン・ジュール・ド・1911だ。

このキュヴェは、1本ずつデゴルジュマン(澱引き)の日付けとシリアルNo.が入っている。

デゴルジュマンの日付はちょうど約1年前、2023年の3月だ。

本当は少し熟成させてから飲むつもりで買ったシャンパーニュ。

しかし、飲んでみたい誘惑には抗えなかった。

お祝い事でもあるし、まあいいかと思い切って栓を抜いた。


アンドレ・クルエは、モンターニュ・ド・ランスにあるブジィ村、アンボネイ村に畑を所有する。

そこから取れたブドウだけ、つまりグラン・クリュのブドウを使ってシャンパーニュを作る小規模生産者だ。

しかし、アンドレ・クルエのラベルにはグラン・クリュの表記がない。

ラベルデザインの変更を要求されたがそれを拒否し、ならば一切変えるなというのを承諾したからだという。


アンドレ・クルエとは現当主の祖父の名で、それまではスティルワインを作っていた家系で、初めてシャンパーニュを作り始めた人らしい。

スウェーデンの国王が愛飲し、60歳の誕生日パーティーで振る舞ったという逸話を持つ。

また、様々なメディアでも称賛され、そのコストパフォーマンスに定評がある生産者だ。

私もその評判を聞き付け、シルバー・ブリュットを飲んだが気に入り、以降愛飲している。

そのため上級キュヴェを購入し、熟成させてから飲もうとしていたのがこのアン・ジュール・ド・1911だ。


1911といっても1911ヴィンテージという訳ではない。

祖父のアンドレが残した80年以上熟成したシャンパーニュが見つかり、それを飲んでインスパイアされて作られるようになったという。

このボトルには小冊子がつけられていて、シリアルNo.とデゴルジュマン(澱引き)の日付、どこ向けに出されたのかなどの記載がある。

古きよきフランスの黄金時代の宴に供された素晴らしいシャンパーニュ。

この冊子には、先人への感謝や慈しみが溢れているし、黄金時代のグレイト・ヴィンテージにちなんで名付けられたワイン。

情熱をもって愛情深く丁寧につくられた、一度に1911本という小ロットでしか仕込まれないこの酒が、うまくないはずがない。


お祝いのシャンパーニュにふさわしいこのワインを開栓し、食事を楽しんだ。

その後、残ったものをじっくりとテイスティングしてみた。

なお、輸入元はヴィントナーズ、グラスはザルトのユニバーサルを使用した。


【テイスティング】

青リンゴ、淡く白桃の果実味、マンゴーやパッションフルーツのトロピカルフレーバー、澄みきった美しい果実味が魅力的。

ミネラルはしっかりしていて、クリーミーで繊細な泡立ち、ブリオッシュ香、コクがあり濃厚、巨峰の半生のドライレーズン。

樽由来なのかバニラが品よく香り、溶かしたバター、フレッシュチーズ、ジャスミンのフローラルさ。


クラシカルで美しくフルーティーなシャンパーニュ。

フルーツ感の美しさが、ウイスキーに例えると60年代蒸溜のバーボン樽の長熟ロングモーンの銘品のよう。


デゴルジュマンは2023年3月のため、まだまだフレッシュだが、相当な期間瓶内で熟成したのか、こなれていてほどよい熟成感がある。

繊細で美しくピノ・ノワールの魅力に溢れた、素晴らしいブラン・ド・ノワール。


ちなみに、アンドレ・クルエのシルバー・ブリュットは『死ぬまでに飲みたい30本のシャンパン』という本に掲載されているらしい。

それは私も愛飲している素晴らしいワインだが、個人的にはこのワインはそれより数段上にいると思う。

にもかかわらず、今の相場からみると信じられない低価格だ。

今ロングモーンの60年代蒸溜をbarでショットで飲むより、ボトル1本の値段が安い。

これからも訪れる家族の記念日に開栓するシャンパーニュとして、信頼できる店でケース買いをした。


ロットによって微妙に味わいは変わるのだろうし、熟成や個体差によっても1本1本味は違うだろう。

しかし、きっといつ飲んでも期待を裏切る事はないだろう。

そう思うくらい気に入ったシャンパーニュだ。


このワインとの出会いに感謝したくなる、素晴らしいシャンパーニュ、素晴らしいブラン・ド・ノワール。

偉大なる先人アンドレ・クルエに乾杯!


【Verygood/Excellent!!!!+】