ワインはわかってないと、違いがわからないものが多い。

同じ作り手でも、キュヴェによって使われてるブドウがとれた畑が違ったりする。

このクリスチャン・モローのシャブリ、プルミエ・クリュのヴァイヨンもその一つだろう。


以前このblogでも、同じヴィンテージ同じヴァイヨンのキュヴェ・ギィ・モローを紹介した。


https://ameblo.jp/zgmf-x10a19730730/entry-12829097239.html

今回のものはキュヴェ名のない、ノーマルなヴァイヨンだ。


シャブリはブルゴーニュ北部の地区で、シャルドネでつくった白ワインを生み出すAOCだ。

ブルゴーニュゆえに畑で格が決まり、グラン・クリュ(特級畑)を頂点に、プルミエ・クリュ(一級畑)、村名シャブリ、プティ・シャブリという順に格付けされている。


ヴァイヨンはプルミエ・クリュの中でも大きな畑で、気候もいくつかにわかれるため、生産者や区画により味が違う。

シャープで熟した柑橘のような果実味が特徴といわれる畑だが、ブラインドでは区別しづらい。


そのヴァイヨンの中でも、1934年に植樹された樹齢90年ともいわれる古木を使ったのが、キュヴェ・ギィ・モローだ。

要するに古木から採れたブドウを使ったヴィエイユ・ヴィーニュなのだが、植樹した祖父の名をキュヴェの名前にしている。

それは素晴らしいキュヴェで、その当時このキュヴェもほぼ同時に飲んだが、キュヴェ・ギィ・モローとの間には差があると感じていた。


キュヴェ・ギィ・モローは飲みきってしまい、このノーマルなヴァイヨンもラストの1本になった。

セラーリングしていたものを自宅で開栓してみた。


なおヴィンテージは2019で、輸入元はファインズ。

グラスはシュトルツル・ラウジッツのクアトロフィル ホワイトワインを使用した。


【テイスティング】

酸味のあるグレープフルーツ、青リンゴ、熟した果実味が強くかなりフルーティー。

粉っぽい石灰様のミネラルは柔らかくなり、スイカズラやジャスミンの花のフローラル、グレープフルーツの皮。

潮っ気がありヨード感があり、純米の日本酒のような旨み、無花果の皮。

グレープフルーツ様の柑橘のワタ、ミント、酸味のあるチーズタルト。


美しい酸とシャブリらしいミネラルや旨みはあるが、強く黄色い柑橘系のフルーツ感がある。

13.5%とアルコール度数も高く、今飲んでもかなりおいしいし、熟成しても良さそう。

古木を使ったキュヴェ、ギィ・モローの方がいいと思っていたが、これも変わらず素晴らしい。

セラーリングでカドがとれたのか、丸みがあり食中酒として相当にうまい。


なおこのドメーヌのリンクを下記に貼るが、ワインはこういう情報がウイスキー並みかそれ以上に充実している。

特にエノテカの情報はわかりやすく、初心者にはありがたいし、飲んだ後に作りを確認すれば似たようなものを探す一助となる。


https://www.enoteca.co.jp/producer/detail/1162



例えばこの生産者だと、テロワールを大事にしているらしく、そのための手法として


■リュット・レゾネ(減農薬農法)からビオロジック(有機栽培)に移行した。

→ 畑に除草剤を撒かないことで、畑の土壌を傷めず、ブドウ本来の生命力を高めている。


■凝縮感を高めるため収量を抑えた栽培を実践。収穫は全て手摘み。

→ 一粒毎に栄養が行き渡り、ブドウが傷つかない状態で醸造できる。


■ブドウは全房のまま圧搾され、自然酵母を用いて、区画毎に小さめのタンク内で発酵を行う。

→ 発酵は茎などが入った全房発酵。対して茎を除く発酵方法もある。

自然酵母を用いるため、地域や作り手の特色が出る。

樽ではなくタンクで発酵するため、オークのニュアンスより、ピュアな果実味を大事にしている。


■グラン・クリュでは50%、プルミエ・クリュでは30%のオーク樽が使われるが、新樽率は低め。

→ 樽感が薄くなり、よりブドウの風味が味わえるが、長命さは弱まる。


これに、畑の位置や向き、標高などが分かれば、近い味が探せる。


というのも、私が買った値段は税前でも5,000円弱だったが、今や8,000円位はしてしまう。

1.6倍という結構な上がり方は、飲む頻度が高い身としてはかなりのダメージだ。

なので、より安い近い味のものを探せないかと、いろいろ勉強するようになる。


しかし、こういう過程がウイスキー同様楽しく、どんどん深みにはまっていく。

ウイスキーloverの中には、ラムやブランデーなどの蒸溜酒は飲む人が多いが、ワインはそうでもないという人が多い印象がある。


しかし世界観の拡がりなどは、ワインもウイスキーを越える魅力があるし、もっとワインを楽しむ人が増えるといいな、と思う。

私も以前、夏でも食事を早めに済ませて、すぐにBarでウイスキーをストレート、という感じだった。

今は食事に合わせてワインを楽しみ、食後にウイスキー、に変化した。

その方が個人的には何倍も楽しいと思うので、ワインの楽しさがウイスキーloverにもっと広まってほしい。


そういう意味では、こんなに果実味がリッチでかつ食中酒にいいのか、と思うこのシャブリ。

食事で楽しんだ後、樽のきいていない長熟のモルトや、逆に短熟で樽のしっかりきいたモルトを飲む。

そうすると新しい気付きが生まれるのではないかと思う。


【Verygood!!!】