ウイスキーでは蒸溜所元詰めであるオフィシャルボトルより、ボトラーズものの価格が高くなって久しい。

もっとも、ウイスキーの場合は蒸溜所名が記載されたものなら、結局は製造元は同じだ。

とはいえ、オフィシャルならブレンド用にしたり、スタンダードのものにしか使わないクオリティでも、ボトラーズはシングルカスクのカスクストレングスで出す。


しかし、これだけシングルモルトの価格が上がっていると、自社から元詰で出した方が利益が出るだろう。

なので私が製造元なら、ボトラーズに出すなら高い値段でクオリティの低いものだけを出す。

実際にその傾向は強まっているように思う。


ワインの世界でも、ボトラーズに近いネゴシアンものと呼ばれるものが存在する。

ネゴシアンものにもいろいろあるが、一番生産者と遠いものになると、作ったのではなく選んだだけ、という事になる。

このメゾン・ルロワのコトー・ブルギニヨンもそういうワインの一つだ。


ルロワはDRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)を共同経営する名門一族で、現在の当主はラルー・ビーズ・ルロワだ。

ラルー・ビーズ・ルロワは、マダム・ルロワと呼ばれる稀代の天才テイスターで、今のルロワの名声を築き上げた立役者だといえる。

ワインサーチャーが発表する世界一高価なワインでは、ルロワのミュジニィが1位に輝いている。

その平均価格は1本4万8616ドル(約725万)で、ロマネ・コンティを上回る。


そのルロワのワインには、ドメーヌ・ルロワとメゾン・ルロワが存在する。

ドメーヌ・ルロワは栽培から醸造までを手掛けるが、メゾンはルロワがクオリティを保証したワインを選んでいる。

つまり、メゾン・ルロワのワインはルロワが選んでいるが、作ったわけではない。

他人がつくっているが、自社のラベルを貼ったから価格も評価も高くなるワインだといえる。


そんなルロワは、ワインloverにとって飲んでみたいワインの一つだが、価格の安いワインも世に送り出している。

最も価格が安いのはおそらくボジョレー・ヌーボーだと思うし、ブルゴーニュ・ブランやブルゴーニュ・ルージュも選ぶ。

私が今まで飲んだのはメゾン・ルロワの低価格なものが中心だが、価格は同格の他の生産者よりは大分高い。


このワインは、ルロワのラインナップの中では低価格帯のコトー・ブルギニヨンの白だ。

コトー・ブルギニヨンは、以前はグラン・オーディネールと呼ばれていたAOCに変わり、2011年に登場したという。

ピノ・ノワールやシャルドネ単一でつくるブルゴーニュの中にあって、赤はガメイなどや白もアリゴテなどを混ぜてよく、比率も決まっていない。

かつ、北はシャブリ&グラン・オーセロワ、コート・ド・ニュイ、コート・ド・ボーヌ、南はコート・シャロネーズ、マコネ、ボージョレーの6つのワイン生産地域のどのブドウも使用することができる。

アルコール度数の最低限度も1度低く、自由なワイン造りを可能にしたアペラシオンらしい。


そして、ルロワのコトー・ブルギニヨンはメゾンものとドメーヌものがある。

ドメーヌものは88,000円という、ルロワらしい価格で売られていて、メゾンものでも10,000円前後はする。

コトー・ブルギニヨンとはいえ、シャルドネ100%でつくるらしいが、ブルゴーニュ・ブランより格下のブドウを使うのだろうか?


メゾン・ルロワの安いキュヴェを飲んだ人の反応や感想は二つに割れる。

一つは称賛派で、さすがルロワ!安くても他のワインと次元が違う!という意見。

そしてもう一つは、同じ価格出すならもっといいワインが買える、という微妙な意見だ。


私も飲み始めのころに家で買っていくつか試したが、どちらかというと後者だった。

期待値が高いのもあるだろうし、人気だからかやはり同格のワインよりははるかに高い。

コトー・ブルギニヨンで1万出すなら、確かに村名クラスでもかなりいいワインが買える。

飲み始めの頃に馴染みのソムリエにそれを伝えたら、ルロワの低価格帯のものはルロワだと思わない方がいい、といわれたのを覚えている。


そんなルロワのコトー・ブルギニヨンだが、ある地方都市の髙島屋で2017ヴィンテージが税込3,750円で売られていた。

髙島屋はルロワに出資している株主で、ルロワのワインは日本では髙島屋で売られている。

シャルドネ100%で3,750円ならいいか、と宿に持ち帰り温泉に浸かったあとに飲んでみた。

グラスはリーデルのO to goのホワイトワインを使用した。


色はゴールドに近く、白い和の柑橘、本醸造系の日本酒のような旨味、さらっとした蜂蜜、柑橘の皮の苦味。

しっかりとミネラル、有塩バター、ポカリスエットのような塩っぽさのあるスポーツドリンク、パイナップルキャンディ、柑橘の薄皮。

コクがあるわけでも、果実味が強いわけでもない、クラシカルなシャルドネ。

ブラインドで飲んだらなんと答えるだろうか。


シャブリ、もしくはシャサーニュ・モンラッシェの生産者のブルゴーニュ・ブランと答えそうだが、何を飲んでいるか知っているからこその答えのように思う。

ブラインドで持ち込んで、意見を聞いてみたいと思うワインだ。


今どき税込3,750円でこの味なら全然いいし、赤白セットも何本か安売りされていたので、自宅に送ってもらえるならまとめて買ってみようかと思う。

縁あって偶然出会えたルロワは、メゾンものではあるがこの値段ならありのいいデイリーキュヴェだ。


【Good/Verygood!!】