スパークリングワインの王者シャンパーニュは、シャンパーニュ地方で作られるスパークリングワインだ。

地方に紐づいた原産地呼称(AOC)による呼び名で、シャンパーニュ地方で一定の作り方をしたものだけがシャンパーニュと呼ばれる。

ウイスキーで例えていうなら、『アイラ・シングル・モルト』みたいなものだろうか。

アイラ島で大麦麦芽を2回以上蒸留して作った酒を3年以上オーク樽で熟成。

そうして作った、アルコール度数40%以上の単一蒸溜所で作ったウイスキーをこう呼ぶ。


しかし、アイラ島でも北と南では作られる酒に傾向の違いがあるように、シャンパーニュも地区によって傾向が違う。

シャンパーニュでよく知られる主要生産地区は、モンターニュ・ド・ランス、コート・デ・ブランだろう。

数多くのグラン・クリュ、プルミエ・クリュを擁し、著名な作り手が軒を並べる。


そして、両地に比べたら少し知名度では劣るが、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ(マルヌ渓谷)もシャンパーニュの主要生産地の一つだ。

栽培される品種はムニエが中心で、シャンパーニュに詳しくない人には馴染みが薄い品種ではないかと思う。

シャンパーニュはアサンブラージュ(ブレンド)のワインといわれ、シャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエの3つをメインとしてブレンドによって作られるのが一般的だ。


ムニエは、かつてはピノ・ムニエと呼ばれた黒ブドウだが、DNAを解析するとピノ・ノワールとは違う系統だと分かったらしい。

そのため、最近では単にムニエと呼ばれるが、霜害に強いシャンパーニュの主要品種の一つだ。

とはいえピノ・ノワールやシャルドネに比べたら、少し劣るような印象は否めない。

しかし、熟した柑橘のようなフルーティーさを付加し、柔らかい味わいに仕上げる役割を担っている。

また、価格的にもムニエが主体だとお手頃感が出る印象がある。


このシャンパーニュはそんなヴァレ・ド・ラ・マルヌにある家族経営のメゾンであるレベック・デュハンのつくるシャンパーニュだ。

アドレというキュヴェのブリュットで、レベック・デュハンのワインは90%がフランス国内で消費されるという。


資料によると、セパージュはムニエが70%、ピノ・ノワール15%、シャルドネ15%だそうで、ヴァレ・ド・ラ・マルヌらしい割合になっている。

輸入元は田地商店だが、これは信濃屋の輸入部門の屋号で、ウイスキーを買った時に同梱してもらったものだ。

価格は税前で4,000円と、価格高騰が続くシャンパーニュとしてはお手頃価格だった。


このボトルはヴィンテージ表記のないブリュットだが、ドサージュが1m/Lのブリュット・ゼロも買ってそちらは到着して少しして飲んでいた。

そっちは結構微妙な味わいだったため、こちらは少し泡を落ち着かせるためにセラーリングして、飲む数時間前に前に栓を抜きストッパーをした。


その甲斐あったのかブリュット・ゼロよりはだいぶいいと思ったので、テイスティングしてみた。

なお、輸入元は田地商店のノンヴィンテージ。

グラスはザルトのユニバーサルを使用した。


【テイスティング】

青リンゴの果汁、煮込んだりんご、オレンジの果実や皮、酵母やクリーム。

焼いたトーストの香ばしさ、バター、甘味がありネットリした柑橘、洋梨の果実味。

スッキリとしていてドライ、岩をなめたようなミネラル、ライムの皮、泡は少し弱目で粗め。


ブリュットにしては少し甘さが気になるシャンパーニュで、ヴァレ・ド・ラ・マルヌらしい味わい。

今時のシャンパーニュとしては悪くないが、ムニエ主体のシャンパーニュは、それでなければダメというわけではない。

これなら、個人的にはピノ・ノワールとシャルドネで作られていて、価格も半値近い南アフリカのグラハム・ベックを飲もうと思う。


しかし、シャンパーニュであることが重要だと考える人もいるだろうし、らしさは味わえながらまあまあお買い得な価格だ。

自社で販売網を持ち、ポートフォリオ的にいろんなものを揃えないと行けない、酒販店らしいチョイスだと思う。


2023年から栽培をオーガニックに切り替えたらしいので、今後に期待が持てるのではないかと思う。

ムニエ主体のヴァレ・ド・ラ・マルヌの味わいを知りたいという向きには勧めやすい、エントリーレンジのシャンパーニュだ。


【Good/Verygood!!】