ウイスキーもそうだが、ワインの世界にも紛らわしいものが存在する。

シャンドンという発泡性のワインと聞くと、モエ・エ・シャンドンというシャンパーニュ、と思う方が多いのではないか。


しかし、実はシャンドンはオーストラリアのスパークリングワインだから、シャンパーニュではない。

シャンパーニュ地方で、決められた作り方により作られたワイン以外は、シャンパーニュを名乗れない。


しかし無関係ではなく、シャンドンはモエ・エ・シャンドン社がシャンパーニュで培ったノウハウや、シャンパーニュの製法で作ったワインだ。


ウイスキーに例えると、ペルノ・リカールがインドで『リベット』というインディアン・ウイスキーを作るようなものだろうか。

もちろん例えであって、そんなウイスキーは存在しない。


シャンドンは、オーストラリア以外でも何ヵ国かで作られているが、日本で見かけるのはオーストラリアが圧倒的に多い。

ちなみに、価格帯もシャンドンは2,000円台、モエ・エ・シャンドンは5,000円前後と結構違う。


私は夏前に毎年『安泡チャレンジ』と名付け、安めのスパークリングを買い込んでテイスティングするのを楽しんでいる。

シャンドンは当然対象になる価格帯のため、何度かトライしようとはした。

しかしテイスティング段階で、買って家で飲むほど好みではないため、買ったことは1回しかない。

どちらかといえば、チリやアルゼンチン、南アフリカの方が味も好みだ。


とはいえ、シャンドンは気を遣わせない持ち込みワインとしては、とても使い勝手がよい。

そこまで味を突き詰めていない人には、なんといってもシャンドンのブランドは刺さる。

アルゼンチンやチリのおいしいスパークリングより、ありがたみがあるだろう。

しかもシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で作られ、使われるブドウもシャルドネとピノ・ノワールだ。


そのシャンドンをお目当てのワインを送料無料で送ってもらうために、久しぶりに買った。

それを自宅で開栓してテイスティングしてみた。


なお輸入元はモエ・ヘネシー・ディアジオ(MHD)の正規品、グラスはザルトのユニバーサルを使用した。


【テイスティング】

レモンやグレープフルーツの柑橘、ドライな酵母感、クリーム、オークのウッディネス。

洋梨、舌にあてた銀のスプーン、ラムネ、粗めの泡。

よくいえばスッキリしているが、余韻も短くプレーンでシャープ。

ふくよかさではなくドライさ方向に振れたスパークリングで、ブラインドで飲んだらシャンパーニュとは言わないだろう。

ブドウ品種は何となく当たりそうだが、瓶内二次だとも思わないかもしれない。


同価格帯ならグラハムベックの方が全然好みだし、改めて飲んでみて、家で買って飲むワインにはならないのを再確認した。 

しかし、前述したように気を遣わせない持ち込みワインとしての使い勝手は抜群だ。

シャンドン・ブランドの威光で、これは立派な使い道だと思う。

キリキリに冷やして夏飲めば、それなりに好評を得られだろうし、ラベルも主張が強い。


ブランドって偉大だなと思う、モエ・エ・シャンドンがつくるスパークリングだ。


【Good/Verygood】