スパークリングワインの王者である、フランスのシャンパーニュ。
その製法は世界中で手本とされるが、味わいにおいては続くものを見つけるのは難しい。
しかし、それゆえにシャンパーニュは価格が高くなりがちだ。
安くていい他のものを探すため、インポーターは努力を重ね、様々なスパークリングが市場に出ている。
スパークリングワインは世界中で作られているので、私もいろいろな国や地域のスパークリングを試した。
その中で、個人的には品質ではイングリッシュ・スパークリングと、イタリアのフランチャコルタが次に位置すると思う。
ただ、シャンパーニュを上回るには、それぞれ課題がある。
また、プレステージクラスでは価格はシャンパーニュより安いが、エントリークラスは価格的にも大きな差がない。
やはりシャンパーニュが王者であり続けるのには、理由があると実感する。
しかし、今や大手メゾンのエントリーキュヴェでも5,000円を軽く越える。
個人的には5,000円台なら推せるシャンパーニュはまだたくさんあるが、ある愛好家はその価格で選ぶのは困難になりつつあると嘆いていた。
そういう人に試してほしいスパークリングが、南アフリカのグラハム・ベックだ。
価格的にはエントリーキュヴェのノンヴィンテージ(NV)のブリュットだと、税前2,000円を切る
また、同じくNVのロゼでも税前2,200円ほどとかなり求めやすい価格だ。
にもかかわらず、対抗馬であろうカリフォルニアのスパークリングと比しても、クオリティは上だと思う。
また、下位互換であるチリやアルゼンチンとは値段以上の差がある。
個人的嗜好だが、ペトロール香と呼ばれるオイリーなテクスチャーが苦手なので、カヴァやドイツの泡は選から漏れる。
そのため、グラハム・ベックはテーブル・スパークリングとしてかなり重宝する。
グラハム・ベックは南アフリカのロバートソンという地で作られている。
製法はシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵、ブドウ品種もシャルドネとピノ・ノワールを使う。
ネルソン・マンデラが歴史的な勝利をおさめた後の勝利の美酒に選び、バラク・オバマも大統領に選ばれた日にグラハム・ベックで祝杯をあげたという。
ブリュットを飲んで気に入ったため、上位のキュヴェも試した。
トップキュヴェは、ヴィンテージが入ったクライヴというキュヴェで、価格は安いと税前4,500円強。
5,000円台で売っている店も多く、シャンパーニュのエントリーキュヴェとほぼ同じ価格帯だ。
クライヴまだ数本しか飲んでいないが、個人的にはそれなら5,000円台のRMシャンパーニュを買うかな、と思う。
しかし、結論を出せるほど飲み込めていないため、違うヴィンテージも試してみたい。
そしてこのヴィンテージ入りのブラン・ド・ブランは、エントリーキュヴェとトップキュヴェの間の価格帯だ。
私が買ったのは税前で3,000円強。
その価格帯のスパークリングとしては素晴らしく、何度かリピートしている。
ちなみに、ブラン・ド・ブランとは、白ブドウ100%でつくる白スパークリング(ロゼではない)の事だ。
このグラハム・ベックのブラン・ド・ブランはシャルドネ100%で作られている。
個人的にはこの作り手の生命線は、質の高いシャルドネだと思う。
それ100%で作られているだけに、グラハム・ベックらしさに溢れている。
そのブラン・ド・ブランの2018ヴィンテージを改めてテイスティングしてみた。
なお、輸入元はモトックスの正規品で、グラスはザルトのユニバーサルを使用した。
【テイスティング】
完熟レモンのような柑橘、青リンゴ、果実味は少しネットリとしていて、熟成を感じる。
パリッと香ばしく焼いたブリオッシュの香り、柔らかくほどけたミネラル、ハッカのキャンディ。
ホエーや酵母のニュアンス、クリーム、ライムの皮の苦味。
洋梨の果実味、カマンベール・ド・ノルマンディ、淡くパイナップル様のトロピカル。
泡は繊細できめ細かく、果実味は陽性だが甘くなくエレガント。
ミネラル感はシャンパーニュとは違うし、果実味も少し温かい印象。
だが、ヘタな低価格帯のシャンパーニュよりクオリティは高いと思う。
このワインを輸入しているモトックスは、今勢いがあるインポーターだ。
安くても選ぶ理由のある面白いワインを入れているが、このワインもまさにそうだと思う。
税前3,000円のスパークリングとしてはかなり秀逸だし、3,000円のワインとしてもかなりいい。
丁寧に作られたワインで、南アフリカのシャンパーニュとも呼ぶべき、ハイクオリティのスパークリングだ。