シャブリという名前は、聞いたことがある人が多いだろう。
シャブリはブルゴーニュの一地区でつくられるワインで、日本で一番飲まれているブルゴーニュワインだ。
シャブリと名乗るには、シャルドネでつくる白ワインでなければならない。
辛口のワインで、キンメリジャンとよばれる土壌から、独特なミネラル感のワインがつくられる。
キレがよくシャープで、和食にも合わせやすいのが日本で定着した理由だろう。
そのシャブリには、ヴァンサン・ドーヴィサというトップ生産者がいる。
しかし、人気のため価格も高くなるし、手に入りにくくなっている。
そこでワインマニアは、ドーヴィサの基で修行したり、ドーヴィサのスタッフが手伝っているものに手を拡げがちだ。
このローラン・トリビューも、そんな作り手の一つだろう。
ローラン・トリビューは、ドーヴィサの娘婿のドメーヌだ。
そのため、ドーヴィサの指導を受け、同じようなスタイルでワインをつくっているらしい。
ドーヴィサといえば、シャブリでは伝統的なフィエットという132リットルの小樽を使う。
また新樽の比率も高いため、長命だが堅牢で熟成させないと本領を発揮しないと言われる。
しかし、ドーヴィサに指導を受けたり、スタッフが手伝ったりしているワインは、私の感覚的にはドーヴィサよりは早飲みできると理解している。
この作り手は飲んだことがなかったが、ドーヴィサ関係者なら間違いないだろう。
ましてや娘婿だ。
ドーヴィサ家の家族構成までは知らないが、いずれ畑も相続し著名になる可能性が高い。
安く買える今のうちに試してみようと、ハーフボトルのプルミエ・クリュ、ボーロワの2018ヴィンテージを購入した。
4本購入したため既に2本飲んでいるが、グラスマネージメントが難し目のワインだった。
ドーヴィサのように堅牢かと思い、大きめのグラスに入れると熟しすぎた印象。
モンラッシェやオークドシャルドネ系の方が合うが、細い白ワイン用の方がよりシャブリらしさは出る。
今回は白ワイン用のグラスでテイスティングしてみた。
【テイスティング】
甘くさらっとした蜂蜜、レモンや八朔のような白い柑橘、そのワタの苦味、青リンゴ。
しっかりしたミネラル、熟している洋梨やメロンのエステリーな果汁、ビリッとしたマスタード、スイカズラの花。
溶かしたバター、カシューナッツのオイリーさ、絞ったライム酸味、石をなめたような塩味。
2018という新しめのヴィンテージのプルミエ・クリュの割に、熟成している。
個体差かと思いきや3本目で全て同じ印象だから、こういう作りなのだろう。
10年熟成させればシェリー香が出てきそう。
この年のこのキュヴェを飲んだだけだと、まだ発展途上の生産者という印象。
ドーヴィサの関係者以外でも、シャブリは優良生産者が多い。
そこに割っては入るクオリティだといえるが、まだ頭一つ抜け出せてるとまではいえない。
もっとも、ボーロワは日照がよく、反射熱からもブドウが熟しやすい一級畑だという。
その特徴を活かしながら、酸のしっかりした華やかな作りを実践していて、高いポテンシャルを持つのがよくわかった。
引き続き、他の年や他の畑も試してみたい。
そう思わせる、シャブリだった。