ブルゴーニュの価格は高騰の一途をたどっている。

しかし、それでも飲みたいと思う特別なワインだ。

ブルゴーニュといえば、ピノ・ノワールでつくる赤ワインのイメージが強いが、シャルドネでつくる白ワインも素晴らしい。

赤と白、両方で世界最高峰のワインをつくっている地域は多くない。

両方が素晴らしい至高の銘醸地として、確固たる地位を築いている。


白ではブルゴーニュ南部のコート・ド・ボーヌという地域が特に有名で、モンラッシェやコルトン・シャルルマーニュなどの有名ワインもここから産み出される。

両者はグラン・クリュ(特級畑)だが、グラン・クリュをもたないため知名度では劣るが、ムルソー村もまた世界的な白ワインを生み出している。


ムルソーは石灰岩の産地として知られ、そのワインは独特なミネラル感を有する。

前述したようにグラン・クリュを持たないが、それは高くなる税金を敬遠し自ら格付けを下げる道を選んだためだ。

ゆえに品質的にはシャサーニュやピュリニィのモンラッシェ村とも遜色はない。

そのムルソーにあって、昇格を申請中でグラン・クリュに最も近いといわれる最上のクリマが、モノポール(単独所有畑)であるクロ・デ・ペリエール。

そして、そのクロ・デ・ペリエールを単独で所有する名門ドメーヌがアルベール・グリヴォだ。


アルベール・グリヴォは現在は孫であるミシェル・バルデ夫妻がドメーヌを運営している。

引き継ぐとドメーヌを自分の名前に変える作り手も多いが、祖父の名前をそのまま使用している。

値付けも良心的で、少し前まではプルミエ・クリュのレ・ぺリエールでも1万円強、クロ・デ・ペリエールでも1万代後半くらいだった。

今や高騰していてクロ・デ・ペリエールは1本3万円前後はするが、内容を考えたら相場的には高くはない。

しかし気安く買えなくなっていて、手持ちのものは熟成させて特別なときに開けたいと思うようになっている。


そんなアルベール・グリヴォは村名のムルソーもリリースしている。

ブルゴーニュ・ブランを除けばこれが一番格下のキュヴェだが、丁寧につくられていてクオリティは素晴らしい。

最近国内ではムルソー・クロ・デュ・ミュルジェというリューディー名を冠したキュヴェの流通が多い。

それだと1本1万を超えてくるため、手が出しづらいワインになったし、ブルゴーニュ・ブランですら7~8千円はする。


好きなワインだが飲む機会が減って寂しい想いをしていた折、バックヴィンテージの案内が来た。

ヴィンテージは2011と収穫は12年前で、価格は税前で1本約8,000円だった。

輸入元は正規代理店のファインズのため、残っていたバックストックを年末年始用に出したのだろうか。

少し熟成をしたムルソーを久しぶりに飲みたくて注文し、開栓してテイスティングをしてみた。


【テイスティング】

少し熟成していたため、細長い白ワイン用のグラスでサーブ。

少し埃っぽさ、柔らかく砕けたミネラル、熟したホワイトグレープフルーツ、洋梨のヨーグルトタルト。

ホエー、キラキラした暖かい海面のニュアンス、妖艶なマスクメロンの果汁、蜂蜜をかけたリコッタチーズ。

溶かしたバター、カシューナッツのオイリーさ、カルダモンの様なスパイス、甘いパイナップル。


12年の月日でムルソー特有のミネラル感が昇華し、柔らかくほどけている。

そこに柑橘や洋梨の果実味、チーズのニュアンスが加わる。

1980年代前半蒸溜のカリラのような、キラキラした海面やマスクメロンの様な妖艶な果実味もある。

フルーティーな長熟カリラが好きなウイスキーloverは、近いフレーバーが味わえるのではないか。


ブラインドで飲んでもムルソーと答えるであろう、優しく甘やかな味わいで、黄金の雫と呼ぶにふさわしい。
やっぱりブルゴーニュ、コート・ド・ボーヌのシャルドネは特別感があるし、アルベール・グリヴォーはうまい。
このくらいほどよく熟成したこのクオリティのムルソーが、7~8,000円でいつも飲めたらいうことがないのだが。
少しピークを下る局面に入りつつあるが、まだグラスの力で充分にピークを味わえる。
飲み頃に入った素晴らしいムルソーだ。

【Verygood!!!】