野球の日本代表がWBC2023でアメリカ代表を3ー2で下し、世界一の栄冠を勝ち取った。
ニュースもその話題でもちきりとなり、シャンパンファイトが行われたワインの銘柄も出ていた。
Korbelというカリフォルニアのスパークリングワインのため、シャンパンではない。
Korbelには申し訳ないが、高額なシャンパンが使われていなくてちょっとホッとした。

このような勝利を祝うときにも欠かせないシャンパンは、フランスのシャンパーニュ地方産で定められた製法でつくったものだけに与えられる呼称だ。
先日素晴らしいシャンパンを並べて飲む機会があったので、今回はそれについて書こうと思う。

先日いつもよく行く店で、『いいワインを開けるから予定を入れておいて』と言われたワイン会に参加した。
最初に3つのグラスに入ったスパークリングワインがブラインドで提供された。
どれも香り立ちからシャンパーニュだろうと思われた。
他の国や地方でつくられるスパークリングワインにもおいしいものがあるが、香りやミネラル感がシャンパーニュは唯一無二だからだ。

内容を当てるようなブラインドというよりは、違いを感じてどれが好みかを示してほしいという意図でのブラインドだった。
どれも並々ならぬワインだったが、かなり明確に違いがあった。

一つ目は樽の香りが綺麗にのっていて、温度帯は一番低かったのに香りの上がり方がよく、その樽のバニラやクリーミーさ、シャルドネの印象が強いシャンパーニュ。
二つ目は緻密で透明感があり、赤い果実のチャーミングさやコクがあり、黒ブドウの使い方がうまく華やかなシャンパーニュ。
三つ目は少し熟成した香りがあり、この世の飲み物の中で最も神々しいといわれる、熟成シャンパンの魅力に溢れた至高のシャンパーニュ。

どれもスタイルが違いそれぞれに素晴らしい味わいだったが、どれが一番好きですか?という質問には、私は迷わずに三つ目と回答した。
しかし、優劣ではなく好みの差なのはいうまでもなく、参加した私を含む7人の回答結果も、一つ目が2票、二つ目が3票、三つ目が2票と分散した。
その後、どの銘柄だったか一つずつ発表されたが、全て大手シャンパーニュ・メゾンのヴィンテージの入ったプレスティージュ・キュヴェだった。

一つ目がモエ・エ・シャンドンのドン・ペリニヨン2012、二つ目がルイ・ロデレールのクリスタル2013、そして三つ目がボランジェのR.D.1996だった。
こんなに贅沢な飲み比べが出きるなんて思いもよらず、飲み比べたからこそのそれぞれの良さが体感できる素晴らしい経験だった。


■ボランジェR.D.1996
ボランジェのトップキュヴェといえば、特殊な立ち位置のフランセーズを除けばこのR.D.だろう。
R.D.とは“Récemment Dégorgé”「最近デゴルジュマン(澱引き)された」という意味で、長きにわたり澱とともに熟成された特別に選ばれたキュヴェだ。

これだけが1996ヴィンテージと他の二つより16年以上前につくられているため、熟成したシャンパンが好きな人は圧倒的にこれが好きだと思ったのではないか。
違うヴィンテージも含めて飲むのは2回目だが、今回は特に心に深く刻まれるワインとなった。
どうやったらこんな味の飲み物ができるのかと思うような味わいで、特別な味わいだと思う。
熟成の美しさという点では今まで飲んだ熟成シャンパーニュの中でもトップクラスの味わいだったし、言葉で表現するとその素晴らしさを表せる気がしない。
またいつか飲んでみたいし、とにかく記憶に焼き付くとんでもないワインだった。

【Excellent!!!!】 


■ルイ・ロデレール クリスタル 2013
ロシア皇帝に供されたという歴史があり、高級シャンパーニュの代表的な銘柄の一つになっている、ルイ・ロデレールのクリスタル。
少量のテイスティングでしか飲んだことがなく、こうやってきちんと飲むのは初めてだった。
輝きや気品、透明感はその名に恥じないまさに宝石のようなシャンパーニュ。
赤い果実感はこれが一番印象的で、高額だがこのトップキュヴェが今の値段で買える時代は、今後ないのではないか。
私の経験値では熟成した姿が想像できないが、買っておいて熟成させて飲んでみたいと思った。

【Verygood/Excellent!!!】


■モエ・エ・シャンドン ドン・ペリニヨン2012
あまりにも有名な高級シャンパンの代名詞であるドン・ペリニヨン。
その名声ゆえに、飲む機会が多いのか過小評価されがちなワインで、真の姿は長い熟成期間を経ないと出てこないともいわれている。
ちょっと飲む機会はあったが、その姿がよく分かったのは今回が初めてかもしれない。
ヴィンテージが2012のため、まだまだ本領は発揮されていないながら、リッチでクリーミーで熟成する姿も想像しやすいかもしれない。
これも高額ではあるが、最新のものを買って手元で10年以上待てるならコストパフォーマンスは素晴らしいと思う。

【Verygood/Excellent!!!】

同じヴィンテージではないので、比較するとレートに差はあるがどれも素晴らしいシャンパーニュだった。
熟成をしたものを今買おうとするとかなり高額になるため、今から新しいものを仕込んで熟成させるのが得策だが10年以上は寝かせたいところだ。

澱を引いてしまうとそこから劣化が始まり、あとは酒としては痩せていくだけだという意見も耳にするが、熟成したシャンパーニュにはそれにしかない魅力があると思う。
知らずに生きていても何も問題ないが、嗜みとして知っておいていただければ、という事で出してもらえたが本当に感動的な体験だった。

贅沢で違いが理解できる素晴らしい企画で、機会をもうけてくれたお店に感謝したい。