現在日本はGW真っ只中だが、久しぶりにGWの大渋滞のニュースを見た気がする。
去年も一昨年も渋滞はあったのかもしれないし、報道もされていたのかもしれない。
しかし、今年は全国のどこにも制限が出されていない3年ぶりのGWで、人の行動が以前のように戻ってきたと私が思いたいのもあるのだろう。
海の向こうでも今年はアイラフェスティバルが3年ぶりに開催されるようだし、暗いニュースの多い中、明るい話題といっていいと思う。
せっかくだし、何かアイラのウイスキーでも開けてみようか、と棚や段ボールを物色してみた。
アイラのウイスキーは結構開いているので、かぶらなそうなやつにしようと考えていたら、このボトルに行き当たった。
2013年から2015年までの三年間毎年ボトリングされた、ヘビーなシェリーカスクのボウモア、デビルズカスクだ。
これ以前に、ボウモアは熟成10年のバーボン樽熟成のカスクストレングス版であるテンペストというウイスキーを出している。
暴風雨という名を持つボウモアで、これまた毎年リリースされてバッチ6まで出ている。
タイミングとしてはデビルズカスクと平行していて、2009年から2015年までボトリングされていたようだ。
私をボウモアにハメたのがテンペストの1stバッチで、カスクストレングスのパワフルさの中に熟したオレンジのような果実味がある銘ボトルだった。
なので、デビルズカスクが出たときはテンペストのシェリー版が出たんだな、と思った記憶がある。
デビルズカスクもテンペスト同様10年熟成表記でスタートしているが、最後のバッチ3だけは熟成年表記がない。
また、このあとに免税店向けに確かデビルズカスクインスパイアという10年熟成が出て、インスパイアなんてラーメン二郎みたいだな、と思ったものだ。
そもそもなぜデビルかというと、確か人間に追い詰められた悪魔がボウモアの樽に身を隠し、命からがらアイラ島から去った、というような伝説があるからだったような気がする。
改めて箱をみてみるとやはりそんな事が書いてある。
ボウモアの街のシンボル、ラウンドチャーチは悪魔が身を隠せるコーナーがないため、蒸溜所の方に逃げたそうだ。
これを手掛けたのは現ベンリアック・グループのマスターブレンダー、レイチェル・バリー女史だったはずだ。
レイチェル氏はグレンモーレンジでビル・ラムズデン氏の右腕として活躍し、次に就いたのがモリソン・ボウモアのマスターブレンダーだった。
ボウモアでの在任期間はそれほど長くなかったように思うが、代表作といっていいのがこのデビルズカスクだろう。
リーズナブルでものすごく濃いシェリーの、良いボウモアだった記憶がある。
このボトルは2014年ボトリングのデビルズカスクのバッチ2で、熟成は10年、1stフィルシェリーカスクで熟成されている。
アルコール度数は56.3%のカスクストレングスで、アメリカ廻りの750ml、サンフランシスコのカンパリ・アメリカが輸入している。
当時メキシコにいた某I氏が、テキサスだったかダラスだったかまで赴き手に入れたものをトレードで譲っていただいたものだ。
今やウイスキー業界に身を転じ、鹿児島の地にいる氏に改めて感謝したい。
久しぶりに開栓して飲んだので、テイスティングをつけてみた。
もちろんグラスはグレンケアンだ。
【テイスティング】
ダークチョコレート、レーズンやドライオレンジのようなドライフルーツ、しっかり焼いた樽の苦味、煎った胡桃様のナッツ感。
スパニッシュオークのニュアンス、マホガニーのまだ新しい家具、ピートスモーク、潮風に少しタール。
少量加水するとクミンのようなスパイス感が強まり、レーズンの入ったブランデーケーキ、みずみずしい黒葡萄の果汁、カカオ。
余韻は長くリッチでスモーキー。
アルコールの刺激も強めでパワフル、ボトリングから8年くらい経っているが開栓したてなのもあり、シェリーの影響は強く、様々なものを覆い隠す。
樽感は同系列の山崎のシェリーカスクに似ていて、クリーム感もあるが、綺麗なドライフルーツ感と苦味やスパイスがスパニッシュオークを思わせる。
また、ボウモアと分かって飲んでいるからピートを感じるが、ブラインドで飲むと樽の苦味と混同しそうだ。
このボトルはボトリングが2014年で10年の熟成ということは、逆算すると2004年くらいの蒸溜のはずだ。
だが、その頃に蒸溜されたボウモアに出がちな紙感も、完全にシェリーに支配されていて感じない。
今から20年くらい経って開けたら、結構すごい事になっているようなそんなポテンシャルを感じるボウモアだ。
やはり良いシェリー樽熟成のボウモアは、特別な何かがある。
レイチェル・バリー女史はそれを悪魔が隠れていると感じたのだろうか。
ゆっくり飲んで、どう変化していくのかを見守っていきたいボトルだ。
【Verygood!!】