私はアイラモルトの中でも、特にラフロイグが好きなラフロイグLoverだと自認している。


アードベッグやラガヴーリンのスペシャルなものに比べると、価格も手に入れやすく味わいも私好みなフルーティーなウイスキーが多いからだ。


また、ボウモアに比べたら年代に起因する好不調の波も少なく、ヨードもしっかりと感じることが出来てアイラモルトらしいパワーがある。


しかし、ラフロイグは平均点は高いが突き抜けているボトルが少ない、と言われるとそれは確かに否めない気がする。

突き抜けているボトルが一番多いのはやはりボウモア、次にアードベッグだろうか。


ラフロイグが突き抜けないとしたら、その原因の一つとしては、シェリーカスクのものが少ない事が挙げられるのではないかと思う。


突き抜けたラフロイグの一つに、フランスの酒類商社、ラ・メゾン・ド・ウイスキー向けの1974ヴィンテージ、31年がある。

しかし、あれは名品には違いないが特殊過ぎて異端だ、というウイスキーloverは意外と多い。


個人的にはそういうものを超越しているボトルだと思うのだが、ウイスキーファンは私も含め、時に面倒臭い事をいうのだ。


あともう一つ、サマローリの1967の15年があるが、これは飲んだことがないためよく分からない。

WhiskybaseのAVG Valueでは、€46,375(今のレートで約612万円)というとんでもない価格がついているため、飲める事は今後も無さそうだ。。。


また、ブラックラフロイグと呼ばれる1980や1981も何度か飲んだが、私はそこまで突き抜けているとは感じられなかった。

瓶内の変化で今後変わっていくか興味はあるが、これまた高額で検証する機会は無さそうだ。


良質なシェリーカスクのラフロイグはニューリリースでもあまり多くはないため、これは!と思うものは、できるだけ買うようにしている。


シェリーカスクのラフロイグloverといえば真っ先にあがるのが、ウイスキー・エクスチェンジのスキンダー・シンだろう。

スキンダー氏の目利きはつとに有名だが、シェリーカスクのラフロイグでも、凄まじいものを詰めてくる印象がある。


ちょっと思い出すだけでも、サヴォイ・ホテル向けの17年、シングルモルト・オブ・スコットランド  ディレクター・スペシャルの20年、マスターピースの1996ヴィンテージ20年などがあげられる。


また、ダグラス・レイン、ハンター・レイン系も豊富なストックから、良質なシェリーカスクのラフロイグを多くリリースしているように思う。


瓶熟によってそういうものの中から、次代の名品といわれるものがきっと出てくるに違いない。


そんなシェリーカスクのラフロイグを代表する一本といえば、ウイスキーフープがシグナトリーの樽を詰めた、この2001ヴィンテージのシェリーカスクも挙がるのではないか。


カスク№318のリフィル・シェリー・バットで熟成されたこのラフロイグは、ヴィンテージは2001年2月14日、ボトリングは2018年3月8日の17年熟成だ。


アルコール度数は55.7%で、アウトターンは388本のこのボトルは、ウイスキーフープのフラッグシップである和紙のラベルが貼られている。

和紙のラベルのボトルの中では、個人的には一番好きなボトルだ。


シグナトリーとラフロイグの関係といえば、ラフロイグの蒸溜所を辞したイアン・ヘンダーソンを招聘し、ピーテッドタイプのエドラダワーを作り出したことで知られている。


そのイアン・ヘンダーソンのコネクションなのか、奇しくも2001年はイアン・ヘンダーソンの集大成的な年なのかもしれない。


ニューリリース時からすごいボトルだったが、飲む度にやっぱりうまい、と思う。

約三年前に開けたボトルで、もうすぐなくなってしまうが、三年の間にどのように変化をしたのだろうか。

改めてテイスティングしてみた。



【テイスティング】

土の香り、モカチョコレートやクリーミーなバニラ、コーヒー、焼いた土の香り。

潮やヨードの香り、魚介を燻したようなスモーキーさがありうまみが強い。

アルコールのパワーは健在だが丸みを帯び、クリーミーなニュアンスが強くなっている印象。


フルーツ感は熟したプラムやアプリコットのように甘酸っぱく、プルーンのようなドライフルーツの甘みもある。

また、インターバルで水を口に含むと、ライチやマスカットのような白いフレッシュな果汁が表れる。

1997のフルーティーなバーボン樽なラフロイグにもあるようなニュアンスで、瓶熟でシェリーの影響が弱まるとそれが強調されそうだ。


ウッディネスはしっかりめだが嫌味がなく、磨き上げたアンティーク家具のよう。

フェンネルやクコの実のようなスパイス、フェノール、甘酸っぱいドライフルーツ、レッドペッパーのようなホットな余韻。


シェリーはネガティブな要素がなく、綺麗にアイラのピートが乗っている。

フルーティーさや甘さ、スパイシーさやクリーミーなさがあり、厚みがあり非常に複雑。


リフィルシェリーといえどシェリーの影響は非常に強いのに嫌味がないのは、絶妙な熟成期間によるものだろうか。

まだ強くフルーティー側に振れるている訳ではないが果実味は増し、クリーミーなニュアンスが強まっているのが予想外だった。


素晴らしいラフロイグで、このボトルを20年後くらいに開けた時にどうなっているのか、非常に楽しみだ。

ラストショットはあえて瓶底に残し、空気との接地面を広く取り、その擬似体験をしようと思う。


手元にはあと2本しかないので、大事に開け時を見計らいたいボトルだ。

過去の名品とも立ち位置やベクトルが違う。

独自の個性を持っている点でも、替えがたい魅力がある。


前回の記事では、ニューリリースとしての採点で、ちょっと評価が甘かったかな?と思っていたが、そうでは無いことに気付く。

スキンダー氏の詰めたボトルなどと共に、次代の名品候補のトップランナーだと思う。


素晴らしいシェリーカスクのラフロイグだ。



【Excellent!!】