生まれ年に蒸溜されたウイスキーにどれくらい思い入れがあるかは、人によって異なるだろう。

私の周りでも積極的にストックしている人、全く関心がない人、両極端に分かれている気がする。


ウイスキーを飲み始めた時期やその時の年齢により、買えたり飲めたりできるかもかなり違うのではないか。

また、いい年だと言われるヴィンテージが生まれ年だとコレクションに力も入るだろう。


私の場合、買い始めた頃でもまだ生まれ年蒸溜のウイスキーは簡単に手に入った。

それゆえ無理して買った訳では無いが、既に高騰していたバルヴェニーやロングロウ、あまりいいリリースがないラフロイグやグレンドロナック以外はお気に入りの蒸留所はだいたい生まれ年のウイスキーをストックしている。


そんな私の生まれ年は1973年だが、良年の1972と1975、1976の間に挟まれた微妙なヴィンテージだ。

アイラでは名品が少なく、強いて言うならロングロウの記念すべき1stヴィンテージ、クラインリーシュは少しいいヴィンテージというところだろうか。


しかし、今1973ヴィンテージが出て来ようものなら、熟成47年以上となるためびっくりするような値段となっているウイスキーが多い。


そして名品とまではいかないが、その蒸溜所にとっては秀逸なヴィンテージと言われる蒸溜所があり、リンクウッド、ティー二二ック、そしてグレンマレイなどは1973は比較的いいヴィンテージと言われているのではないだろうか。


私がウイスキーを飲み始めた10年くらい前、グレンマレイの1973や1974が複数リリースされていた印象がある。

そのうちの生まれ年1973ヴィンテージでは、ダンカン・テイラーやウイスキー・エージェンシーから出たものを買った。

ウイスキー・エージェンシーは当時ダンカン・テイラーからよく樽の供給を受けていたため、おそらく出処は同じダンカン・テイラーだろう。


当時それなりの数あったような印象があるが、今ウイスキーベースで改めて調べると1973は実は3種類しかない。

そのうちのダンカン・テイラーの一本と、ウイスキー・エージェンシーのパーフェクト・ドラムは、熟成年とアルコール度数が全く同じだ。


それぞれアウトターンが328本と301本だが、36年熟成と考えたらホグスヘッドの樽としては本数が多すぎる気がする。

また、シェリーバットとしたら相当少ないが、まだそちらの方が数の辻褄はあう。

樽番は、ウイスキー・エージェンシーの方は記載がないが、ダンカン・テイラーの方は7037番とある。


そしてもう1本がこの1973年ヴィンテージで、樽番は7050番。

蒸溜は両方とも1973年10月のため、1973の36年樽番7037とは、シスターカスクだといっていいだろう。

ちなみに熟成年は1年長い37年で、アルコール度数は49.3%、アウトターンは257本だ。


リリース当時は1973のグレンマレイは、ピーチ系の味わいのウイスキーだと言われていた。

しかし、当時人気のあったベンリアック1976ほどは露骨なピーチ味ではなかった印象がある。


確か14,000円くらいの値段でコストパフォーマンスが高く、結構な人気だったためか、国内ではそれなりに争奪戦が繰り広げられていた。


このボトルは、まだビッグ築地という名前で池袋の少し先の千川に実店舗があった、現・武川蒸溜酒販売のオンラインショップで買ったはずだ。


ビッグ築地は当時最安値のショップの一つで、23区の一部内は送料がかからず、自社便で配送してくれた。

また、実店舗には少し前のウイスキーが豊富にある、後発だった私には嬉しい酒屋だった。


やはり生まれ年のジュラの1973のオフィシャルシェリーカスク30年も、ビッグ築地で買った記憶がある。

生まれ年だからと確か4万円弱位で買ったはずだが、今やウイスキーエクスチェンジで£1,750(約27万円)で売っている。。。


また、G&Mの当時としては少し古めのボトルなんかもたくさん売っていて、安かったため結構買ったし飲んだ。

そんな事を思い出しながら10年前にボトリングされたこのボトルを開栓し、久しぶりにテイスティングしてみた。



【テイスティング】

シロップ漬けの黄桃、カラメリゼしたナッツ、三温糖、濃く煮出したハーブティー。

ドライなデラウェア様の葡萄、長熟の麦感、ヴィンテージのコニャック、生姜湯。

樹脂、オイリーなニュアンス、金平糖、オレンジマーマレード。

赤肉メロン、苦味を伴うオーキーなウッディネス、アフターにはいわゆるピアレスフレーバー。

余韻は長く、コニャックのようなフルーツ感にモルトの厚み。


いわゆる長熟味だが、かなりコニャックに寄っていて残糖感のある甘口のウイスキー。

私がウイスキーを飲み始めた頃は、特にボトラーズでは長熟が当たり前で、こういうウッディネスがあるウイスキーはバーボン樽の長熟だと言われていた。


特にダンカン・テイラーはオーク表記は基本バーボン樽熟成で、シェリー樽はシェリーカスクと表記されていたはずだ。


1stフィルのバーボン樽が長熟したらこういう味わいになると信じて疑わなかったが、今飲むと果たしてそれが正しかったのか少し疑問が残る。


今こういう味わいのウイスキーはあまり出てこないし、熟成が過ぎたからか、バーボン樽のバニラ感やアメリカンオーク感は塗り潰され、加水してもさほど感じない。

また、リフィルのバーボン樽だと長熟でもここまで樽感は出ないだろうし、かといってシェリーカスクの特徴があるわけでもない。


コニャックっぽい味だという事もあるが、1stフィルのバーボン樽と言われるより、リムーザン・オークのスパイス感と言われたらしっくり来る味わいだ。

色も長熟だからバーボン樽でもこういう色になると信じて疑わなかったが、もろに琥珀色だ。


かなり特徴的な味ゆえ、ブラインドで飲んだら1973のダンカン・テイラーかウイスキーエージェンシーのグレンマレイ、とピンポイントで当てる人がいそうな気がする。


今となっては珍しいスペックかもしれないが、当時はボトラーズでは長熟のバーボンカスクは珍しくなく、ダンカン・テイラー以外からもたくさん出ていた。


改めて今10年前のニューリリースのウイスキーを飲んでみると、今流通しているニューリリースとはかなり味わいが違う印象だ。


生まれ年モルトが安くストックできたことはありがたいことだし、長熟だからということもあるだろうが不思議と1973ヴィンテージには共通点もあるように思う。


生まれ年だからたくさん買っていた事もあり、まだまだ1973ヴィンテージはストックがある。

定期的に開けて様子をみてみようと思う。

今やおいそれとは買えないものは、開けるのは躊躇しがちだが、マイナー蒸溜所はまだ比較的気軽に開けられる。


しかし、このヴィンテージ当時、グレンマレイはグレンモーレンジと同グループだった。

それゆえか造りは確かだ。


また、1973だけでなく1974ヴィンテージもオフィシャルのマネージャーズ・チョイス、スコッチ・モルトウイスキー・ソサエティなど粒ぞろいのボトルが多い。


それもあってかこのボトルも味がよく、少し懐かしいピアレス味のダンカン・テイラー長熟の、いいグレンマレイだ。



【Verygood!】