スコットランドのハイランド地方の中でも、スペイ川流域は最も蒸溜所が集中しており、スペイサイドと呼ばれています。

そのスペイサイド地区の行政の中心である、エルギンの街にロングモーン蒸溜所はあります。

創業はスペイサイドが空前の蒸溜所建設ラッシュに沸いた19世紀の終わり、1894年~1895年と言われています。

創業者はグレンロッシー蒸溜所を建てたジョン・ダフで、ニッカウイスキーの創業者である竹鶴政孝氏がスコットランド留学中に、一週間の実習をさせてもらった蒸溜所としても知られています。

一般的にはあまり知名度が高いといえない蒸溜所ですが、ブレンダーからの評価が高く、またウイスキーマニアの中ではフェイバリットにあげる方も多い蒸溜所の一つです。

特に1960年代や1970年代前半に蒸溜されたものは、トロピカルフルーツのフレーバーがするものも多く、今ではそういったボトルはオークションで高値で取引されています。

私も思い出深く記憶に残るロングモーンは数多く有りますが、そのうちの一本がこのボトル。

ドイツのインディペンデントボトラー(蒸溜所やブローカーなどから樽を買い、自社のラベルでボトリングして販売する業者)である、ウイスキーエージェンシーの1972ヴィンテージです。

1972はいいものが多いといわれるヴィンテージで、数多くの名品を排出していますが、このボトルもそんな名品の一つです。

シリーズはウイスキーエージェンシーのフラッグシップである『パーフェクトドラム』で、日本のインポーターであるスリーリバーズとのジョイントボトル。

ちなみに、スリーリバーズの詰めたボトルはフラッグシップシリーズである『THE LIFE』としてリリースされており、個人的にはシリーズ中ベストボトルだと思っています。

ヴィンテージは前述しましたが1972年、熟成は37年でアルコール度数は51.3%、リフィルのシェリーウッド(ライフはリフィルシェリーバットと記載有り。総本数からしてもバットと思われます)からボトリングされています。

ダークラム&フルーツカクテルと銘打たれていて、記憶の中ではロングモーンらしいフルーティーさに溢れていた印象があります。

飲んで感動し、結構無理をして海外のオークションで落札した思い出のボトルですが、今やその価格の三倍くらいの値段になってしまっています。


久しぶりに飲む機会を得たので、じっくりとテイスティングしてみました。


【テイスティング】
パッションフルーツ、妖艶な桃のシロップ、溶剤のニュアンス、プルーンのようなドライフルーツ、ミントのニュアンス、ランシオ香。
ダークチェリー、長熟コニャック、完熟マンゴー、マンゴーのヘタ、グレープフルーツのワタ、カシスのリキュール、スパイシーなメルロー、ダークシェリーの苦味。
長く続くフルーティーな余韻。

香りからトロピカルなフルーツが溢れていて、飲んでもさまざまなフルーツが現れる、長熟フルーティーモルトの最高峰。

パッションフルーツ、マンゴー、桃、チェリー、プルーンなど麦で作ったお酒がなぜここまでフルーティーになるのかと驚嘆するまさにフルーツカクテルのようなロングモーン。

ロングモーンはフルーティーだと聞くけれど、今一つわからないという方がいたら、これを飲めば一撃でそのフレーバーが理解できると思います。

長熟のコニャックのようで、瓶内での8年という時間経過はこのボトルをさらにフルーティーにさせたのではないかと思わせられます。

反面少し過熟気味で、麦のボディや厚みは失われていますが、アルコールのパワーは維持しており、このボトルにそれを求めるのは野暮というものでしょう。

ウイスキーエージェンシーの一番勢いがあった時期にリリースされた、ウイスキーエージェンシーの最高峰といっていい、素晴らしくまた非常に思い出深いロングモーンでした。


【Verygood!/Excellent!!!】