デヴェロン川の川岸に建つマクダフ蒸溜所は、地域区分では東ハイランドに分類される蒸溜所です。

創業は1962年と比較的あたらしく、ブレンデッドウイスキー、ウィリアムローソンに原酒を供給しています。

また、1992年からはバカルディの傘下に入っていますが、バカルディは系列の他の蒸溜所とともに『ラストグレートモルト』と銘打ち、シングルモルトとしてオフィシャルボトルを展開しています。

そのため露出も増えていますが、その中にあってマクダフはグレンデヴェロン、もしくはデヴェロンというブランド名で販売されています。

シングルモルトで蒸溜所名とブランド名が違う事は珍しいのですが、ボトラーズから出されるものは蒸溜所名であるマクダフと表記されます。

かつて、著名なウイスキーライターである故マイケル・ジャクソン氏は、その著書であるモルト愛好家のバイブル『モルトウイスキーコンパニオン』でこう書いています。
『モルトの本当の香りと味を習得したいと願う初心者は、幾晩か12年物のグレンデヴェロンと共にすごすべきだ』と。

このボトルはそんなマクダフのボトラーズもので、ダグラスレインの最高級レンジ『エクストラ・オールド・パティキュラー(XOP)』シリーズでリリースされたもの。

ダグラスレインは現在フレッド・レイン氏が経営していますが、フレッド氏の兄であるスチュワート氏が分社してハンターレインを立ち上げ独立しています。

その際にシングルモルトのブランドであるオールドモルトカスク(OMC)とオールド&レアは、ハンターレインが引き継いでいます。

それに代わるシリーズとして、ダグラスレインはオールドパティキュラーとXOPを立ち上げます。
両社とも鑑定眼には定評があるため、二つのシリーズの間にはクオリティ的には大きな差があると言えます。

このボトルはモルト愛好家の巣窟、有楽町にあるbar、キャンベルタウンロッホさん向けに詰められたXOPで、熟成は27年という長熟レンジのマクダフ。

ヴィンテージは表記されていませんが1990年蒸溜ということです。
アルコール度数は52.9%で、カスクRef:11493のシェリーバットからアウトターン102本でボトリングされています。

その本数の少なさからいろいろな憶測を呼びそうですが、以前リリースされたカスクRef:10954の54.1%、25年熟成をボトリングした際、カスクに残ったウイスキーをさらに熟成させたものだそうです。

ダグラスレインではカスクRefという表記を使っていますが、管理番号のようなもので、同カスクでも違う番号がつくというのを初めて知りました。

25年のものも素晴らしいウイスキーでしたので、さらに約2年熟成が延びて、度数が1.2%さがったものがどうなっているか、楽しみにテイスティングしてみました。


【テイスティング】
濃い口のシェリー、みたらしのたれ、麦の旨味、熟したアプリコット、ブラッドオレンジ。
オールドっぽいピートスモーク、オイルを塗ったレザー、べっこう飴、ミネラリーな白ワイン、長時間煮詰めたブラックベリーのジャム、スパイシーなウッディネス。

トップにまずは濃いシェリー、そして多彩なフルーツ、ミネラリーな白ワイン。
スパイシーでレザー感もあり、さまざまなフレーバーが次々に現れる複雑なマクダフ。

記憶の中の同カスクの25年より熟成が延びた影響かより柔らかくなっている印象で、同じような規格(同カスクの熟成期間違い)の他のボトルに比べるとその変化が大きい気がします。

できるなら25年とこの27年を同時に開けて、比較テイスティングをしてみたいと思いました。

スケールが大きくフルーティーなシェリーカスクで、これが某酒屋さんからは17,380円(税別) で案内が来ていましたが、今の相場からしたら破格の値段ではないでしょうか。

短熟濃厚シェリーとはひと味違うさすがのセレクト。
マイケル・ジャクソンではないですが、いく晩かともに過ごすとモルトウイスキーの深遠が味わえる、そんなボトルでした。


【Verygood!!】