アイラの女王、ボウモア蒸溜所。

創業は1779年と古く、現存するアイラ島で最古の蒸溜所。
アイラの行政の中心であるボウモアの街にあります。
ボウモアとは『大いなる岩礁』という意味で、街の中心にはキラロウ教区教会という円筒状の教会があります。

なぜ円筒かというと、悪魔が隠れる角をなくすという目的だそうで、通称ラウンドチャーチと呼ばれています。

オーナーはビームサントリーで、サントリーが資本参加してからは、設備や樽にしっかりと資本を投下したため、1989年の資本参加以降の蒸溜は、原酒が非常によくなっていると言えます。

これはボウモアの蒸溜所で手詰めする、いわゆるハンドフィルのボトル。
樽からウイスキーを汲み出す器具の名前から、ヴァリンチとも呼ばれます。

蒸溜は2006年と非常に若いウイスキーかと思いきや、10年間熟成しています。
樽のスペックが変わっていて、1stフィルのワインバリックと表記されています。

バリック(Barrique)とは、ボルドー地方やコニャック地方でワインを熟成させるために使われる、小型の樽のこと。

バリックの内容量はボルドーでは225リットル、コニャックでは300リットルで、フレンチオークやアメリカンオークを使用するそうです。

小樽と言ってもウイスキーにあてはめると、小さいボルドーの方でもホグスヘッドと同じくらいの容量ですから、それほど小さくはありません。

2006年というヴィンテージ、ワイン樽表記ということで、恐る恐る飲みましたがこれが実に面白いボトルでした。

ベリージャムの甘さ、赤ワインのジュレ、陽を浴びた干し草、スモークした木片、苦みを伴うスパイスやピート、昆布出汁。

味を支配するのは、ベリージャムやワインの甘さ。
複雑さはなく余韻も短めですが、熟成が短い2006年ヴィンテージのボウモアとしては非常に面白い仕上がりです。

ボルドーの赤ワインのバリックで、フィニッシュ(後熟)ではなく、マチュアード(熟成)したと言われたらしっくりくる味わい。

ピートの効いたウイスキーと赤ワイン樽は相性は悪くないと思っていましたが、それを改めて実感しました。

また2000年以降のボウモアは少し紙っぽいニュアンスがあり、個人的には苦手なのですが、さすがにワイン感にマスクされたのかそれほど気になりませんでした。

今後このバリック熟成のボウモアは商品化されそうな気がします。
テンペストやデビルズカスクのように10年カスクストレングスで出て来そうです。

そして、ワイン樽熟成の最高峰が、いずれ『レッドボウモア』という名前で出てきそうな予感がします。

ワイン樽熟成の可能性を感じる面白いボトルでした。


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