ブラインド・テイスティングというものをご存じだろうか。

地域や銘柄や年数など、その酒に対しての情報を全て伏せて、銘柄などを当てていく飲み方だ。

これが好きな人とそうでもない人がいると思うが、私はブラインド・テイスティングがかなり好きだ。


グラスに注がれたそのウイスキーの味わいや要素を分析し、どのようなウイスキーかを絞っていく。

銘柄を当てることが目的というよりは、先入観をもたずにその酒を評価する事、また自分の現在の引き出しを確認する事を目的としている。

したがって、銘柄だけが当たるよりは自分がそのウイスキーの持つ姿に迫れた時の方が、納得感がある。


私の場合はウイスキーを飲み始めたときに既に、一杯のウイスキーからそのウイスキーの姿や作り手の意図がわかるようになりたい、という想いがあった。

なので、Barでもよくブラインドで注文していたし、それによって樽や地域の特徴を比較的早く捉える事ができたと思う。

特徴がわかるようになると楽しさが増し、ますますウイスキーが好きになった。

それもあって、ブラインド・テイスティングに気軽にトライする事を推奨している。


先日そんなブラインド・テイスティングのイベントに参加してきた。

ブラインド・テイスティングは、ブラインドに対しての考え方やレベルが近い人同士でやる方が、より身になる。

今回のイベントはKing of Kings(KoK)と銘打たれていて、錚々たるメンバーで構成されている。


主宰はマスター・オブ・ウイスキーの有資格者である、東京八重洲のリカーズ・ハセガワの店長倉島英昭さんだ。

倉島さんはブラインド・テイスティングに真摯に取り組まれていて、ブラインド・バイ・ザ・フィアを定期開催しているが、その一環としてKoKも開催されている。


https://whiskyconnoisseur.jp/masterofwhisky/mw004/



そして、ブラインドの鍵を握るのは出題者だ。

出題は闇雲に選べばいいわけではなく、蒸溜所の特徴、樽による特徴、適切な熟成だと思われるものを選択する必要がある。

適切な考察をしても、そのウイスキーにたどり着かない問題だと、あまり経験としては蓄積されない。

このイベントでは、出題者は酒育の会代表で神楽坂フィンガルのオーナーバーテンダー、谷嶋元宏さんに受けていただいている。


谷嶋さんは以前はウイスキーワールドのテイスターもされていて、新旧のウイスキーだけでなくワインにも造形が深い。

いつも着眼点が素晴らしく、勉強になる出題を出していただいている。


https://liqul.com/entry/author/yajima


出題対象は今まで世に出たウイスキー全てで、完全ノーヒントでブラインドをやる。

砂漠の中から一粒の石を探し出すようなものだ。

そんなものは漫画でもあるまいし、当たらないだろうと思うかもしれない。


しかし、結果として今回もほぼ全てのウイスキーで正解に迫ったパネラーがいたし、蒸溜所も5問中2問は正解者がいた。

非常に濃いイベントとなったが今回は出席者が少なく、いつもスコアがいいパネラー主体だったのも一因かもしれない。


出題は5問で、度数、熟成年数、熟成された樽、ウイスキーのタイプ、生産された国、蒸溜所名を回答する。

その後その回答に至った考察を述べる。

ヒントは、いつ開栓されたものかとグラスの中の色だけ。


今回の出題は以下の通り


1.グレンリベット 18年 40% オフィシャル現行品

2.ノーススター ベガ ブレンデッドモルト 1990 28年 シェリーカスク 46.7%

3.秩父 ワインカスク

4.アードモア 1998  22年 49.7% 酒育の会

5.ポートエレン 1975 23年 59.1% ウィルソン&モーガン


私の回答は

1.40~43%で12~18年の最近のオフィシャルスタンダード。

シェリー樽主体で少しもっさりとしているため、磯感は薄いがアイル・オブ・ジュラかブナハーブン。

【Good/Verygood!!】


2.46~50%で、25~31年のシェリー樽熟成。

赤い果実、石灰っぽいミネラル、チョコレート、ほんの少しのソープ。

フレーバー構成が特定の蒸溜所ではないため、少し前のブレンデッドモルト。

ブラックブルかメインパライル。

【Verygood!!!】


3.強いアルコール度数のカスクストレングス。

6~13年熟成で、ワイン樽熟成。

非常にスパイシーで甘やかさとべたつき感が強い。

最近人気の味で、スコッチではない新し目の蒸溜所。

アイリッシュのティーリングや新し目の蒸溜所。

【Good!!!】


4.47~52%の穏やかなカスクストレングス。

樽はバーボン樽で熟成は16~22年のシングルモルトスコッチ。

ピーティーだがアイラのような強いヨードや潮っぽさはなく、フェノール感が強い。

印象としてはベンローマック一択、押さえでアードモア。

【Verygood!】


5.55~60%の高度数のカスクストレングス。

プレーンな樽感でバーボン樽系。

熟成は13~19年のアイラモルト。

ディアジオ系列の味だが、カリラのような軽さはないためラガヴーリン一択。

押さえでボトラーズのアードベッグ。

非常にうまい!

【Verygood/Excellent!!!】


得意ではない3以外はウイスキーの姿はほぼ捉えるとことができ、テイスティングとしては納得感はあった。

パネラーが少なかったためか、会費以上にいいサンプルを出していただき、谷嶋さんには感謝感謝だ。


個人的な課題は、得意ではない新し目の蒸溜所やスコッチ以外だと認識しているが、そこはあまり興味がなく当たるようになるために飲み込むのは辛い。

おいしく感じ、楽しんで取り組めるぐらいがちょうどいいと思う。


ブラインド・テイスティングは、ウイスキーの違いを認識でき、自分の課題や状態も認識できる。
たまには取り組んでみるのも悪くないのではないだろうか。

参加された皆様、場所を提供し自らもパネラーで参加された、Bar Boushu蔵前の大久保亮さん、ありがとうございました。

お礼もかねて、改めて飲みに行こうと思う。