仕事が終わり20時過ぎ、最寄り駅までの徒歩の中、携帯が鳴る、昔えらい世話になり色々と知恵をくれた俺にとってのフィクサーである
(注) このオヤジ、ド裏家業だが堅気である
あっ久しぶりっす あー〇野君久しぶりだね~、出てきてから顔みてないからさ、ちょっと遊びがてらに家においでよ
この紳士的な優しさの裏に見え隠れする物が恐ろしい事だと理解は出来る
断り切れずお洒落な街、自由が丘に向かう事とした
今はなんの価値もない俺に用があるとすればろくなことではない
電車を降り駅前のケーキ屋で糞高いケーキを4つ買い足を速めた
確かこの学校の裏の豪邸だよな~、正面に立つと地下に降るガレージに俺の大好物なF50 ロールスロイスコーニッシュⅢ アニメの影響で子供が好きだと言っていたパンダトレノが置いてある
この実業家は20代そこそこでフェラーリとランボルギーニ専門店を開業し、永年儲け続けた
しかしそれは彼の表の顔、数々の政治家パーティーで司会をこなし、恐喝も神業、ブレーンも半端ではない
他にも金融、地上げ、貿易と言うか密輸、なんでもこなす
殺人と放火以外、もみ消す時はなんでもいいなさいと良く言われたもんだ
しかし1度頼むと背は水、己も恐喝のターゲットに代わる事を幾度となく見てきている
味方なら頼もしいが、最終的にケジメを取る相手が誰でもいいのが良くわかる
このジジィ、12年くらい昔、某裏稼業に嵌められ、商売全てを失い更に5億以上の借金を抱えたが、わずか10年足らずで今の地位までのし上がった言わばゾンビである
人を力以上に引き出す事に関しては天才的だ
チャイムを押しドアが開く、これお口に合うか分かりませんが、お子さんと奥様にと綺麗な包箱を手渡すと優しい顔がさらに笑顔になる
〝ふっ、弱点はかわりないな 嫁と子供か〟
やはり俺も一線を敷き構えてしまう
談笑後、コーニッシュに乗り込み、我が物顔で転がし麻布十番の洋食屋へ
このオヤジ、俺に3億くらいかさねーかなと本気で思ってしまった
足はロールス、遊びはフェラーリか、闇金融時代の俺の夢じゃねーか
いや過去形ではない、何を諦めている、今もまだ実現させるべき夢だった…
食った後の乗り物が嫌いな俺に気遣い、軽く食べたいものだけどうぞと言われ、ローストビーフとナポリタンをつつく
相変わらずこの店は美味い、マスターは○ッ○○○の元師匠の業界人
〝そうだ〇野君、仕事をしないかい?〟 やっぱりそんな裏か
当然体のかかる仕事である事は聞くまでもない
普通ならばこんな仕事でいくらもらえると伝えるのが一般である
なんの説明もない時点で、命や身の保障は一切ないと感じ取れる
どうせ中国やロシアに行かされたり、計画倒産の手伝いやら、地上げ、ブルトーザーやらトラックとかの密輸だろ・・・
今真面目に仕事してるんですよ~と切りかすと、そんな事はみればわかるよ、だから聞いてるんだよ
無言が恐ろしく話し始める
現在の仕事でしっかりとした結果を残した後、評価されない時でも構いませんか?
わざとガキの言うようなセリフで返して見る、そんな時間が相手に無い事は百も承知の断り文句
そして場所を骨董通りに経営するカフェに移動した
猶予も5年ある保護観察の身、何の罪にせよパクラれれば4、5年は塀の中、危険な橋は渡らんけどな、心で呟く
昔絶対に芝公園のコーンズで買うと決めたF50
F50ならば練馬、川越インター間をポルシェティプトロ996で5分で走りぬいた記録を塗り替えられるかもしれない
しかし今だ5000万以上値がつくF50 死ぬほど欲しい
F50ならば頭をからっぽにし、東名道を甲高い音楽をまき散らしレーサーになれる
車好きは金を残さない、とはまさに俺の事だ
貰える物と勝手に馬鹿な瞑想をしながらオムレツに箸を伸ばした
夢は叶える物で、いつか身近な目標に切り替えてやる
先は見えないくらい長いが、いい目標ができた1日であった