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「結論ありき」の「規模ありき」は、防衛費1%枠の方だろうが。ー【毎日社説】防衛力整備の議論 規模ありきにならぬよう 【東京社説】防衛有識者会議 結論ありきで論じるな
来年度予算で防衛費が増えるってんで、毎日や東京新聞が、騒いでいるらしい。
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(1)【毎日社説】防衛力整備の議論 規模ありきにならぬよう
防衛力整備の議論 規模ありきにならぬよう
https://mainichi.jp/articles/20221009/ddm/005/070/099000c
朝刊政治面
毎日新聞 2022/10/9 東京朝刊 English version 815文字
国際情勢が激変する中、日本はどのような防衛力を持つべきか。年末に予定される国家安全保障戦略などの改定に向け、政府内の議論が本格的に始まった。
政府は外交・安保だけでなく、経済、科学技術の専門家らも加えた有識者会議を設置した。自民、公明両党の協議も並行して進められる。
焦点は装備、金額、財源の三つだ。議論の結果は、来年度の防衛予算にも反映される。
相手国がミサイルを発射する前に発射拠点などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有について、岸田文雄首相は「あらゆる選択肢を排除せず検討する」と説明してきた。
憲法に基づく専守防衛との整合性が問われ、日本の防衛政策の大転換となりうる問題だ。透明かつ慎重な議論が不可欠である。
政府・自民党内では、防衛費を国内総生産(GDP)比2%まで増額すべきだとの声も強い。2%は北大西洋条約機構(NATO)加盟国の目標水準だが、海上保安庁などの予算と合わせて達成する案も浮上している。
防衛費は、明確な戦略の下にどんな装備が必要となるか、個別に積み上げて決めるのが筋だ。「規模ありき」に陥っては本末転倒である。
裏付けとなる財源の確保には、国民の負担が避けられない。
コロナ禍が収束せず、物価高が生活を直撃する経済状況では、増税に国民や企業の理解を得るのは容易でない。
少子高齢化への対応が日本の優先課題となる中で、社会保障費などを削減して捻出するのは現実味を欠いている。
自民党内には「国債で賄えばいい」との意見もあるが、長期債務残高は1000兆円を超えており、財政を一層悪化させかねない。
そもそも防衛力整備は、政府が負担のあり方も含めた全体像を示した上で、国会などで幅広く議論すべき課題である。
ところが、年末まで3カ月を切る時期に至っても、首相は「防衛力を抜本的に強化する」などと抽象論を繰り返している。
形ばかりの議論で、国の将来を左右する重大な政策を決めることがあってはならない。
(2)【東京社説】防衛有識者会議 結論ありきで論じるな
防衛有識者会議 結論ありきで論じるな
https://www.tokyo-np.co.jp/article/206899?rct=editorial
2022年10月7日 06時44分
政府が「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の初会合を九月三十日に開いた。敵基地攻撃能力の保有など個別の政策は主要議題とせず、予算が議論の中心となる見通しだ。
年内に予定する「国家安全保障戦略」など三文書改定に向けた作業の一環で、数回の会合を経て十二月上旬にも提言をまとめる。
自民党は防衛費を現在の国内総生産(GDP)比1%から五年以内に2%以上に増額するよう求めている。これを念頭に、有識者会議では、防衛省所管に限ってきた「防衛予算」の範囲を拡大する提言をまとめる方向だという。
しかし「国力」という重い言葉を使いながら、短期間、結論ありきで議論を進める手法には疑問を抱かざるを得ない。日本周辺の国際情勢が厳しさを増していることは理解するが、数字ありきではなく、真に必要な装備や予算を積み上げ、国会論戦を通じて国民の理解を得るべきではないのか。
岸田文雄政権の検討作業は、こうした視点を決定的に欠く。
政府は三文書改定に向け、今年一月から有識者計五十二人に個別に意見聴取したが、主な意見が九月に匿名で公表されただけで議論の過程は明らかにされていない。
安倍政権が二〇一三年に現行の安保戦略をまとめた際、有識者会議の議事要旨をその都度公開したことと比べても透明性を欠く。
そもそも自民党が求める防衛費の倍増が適切か徹底議論の必要がある。なぜ倍増という数字だけが独り歩きするのか。日本と状況が異なる北大西洋条約機構(NATO)と比較しても意味はない。
財政状況は厳しく、年間五兆円超の財源をどう確保するのか。大幅な増税や社会保障費の大幅削減は国民の理解を得られまい。「防衛国債」を野放図に発行すれば膨大な借金を後世に残すだけだ。
国民の理解を要する安全保障政策は開かれた形での徹底した議論が必要だ。それができないなら三文書改定を急いではならない。
有識者会議が、国民を顧みない岸田政権や自民党の目指す方向や手法にお墨付きを与えることにならないよう望みたい。
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(3)防衛費の「対GDP比1%縛り(1%枠)」こそ、「規模ありき」の「結論ありき」であったろうが。
防衛費の「対GDP比1%縛り(1%枠)」ってのは、もう30年以上昔に遡れる。何しろ閣議決定したのが1976年の三木内閣だったってんだから、半世紀近く前。その後「一応撤回」されたりもしているが、「事実上の防衛費上限」として君臨し続けて、今日に至っている。上掲の通りアカ新聞どもが非難して止まない、今次ウクライナ侵略を受けての「防衛費大幅拡大宣言」が出るまで、「防衛費1%枠」は「規模ありき」且つ「結論ありき」であり続けてきた。
なればこそ、一部では、「日本のGDPは、防衛費の百倍とする。」ってジョークがあったくらいだ。左様なジョークが出来るほどに、「防衛費1%枠」は厳然として存在し、存在感を放っていた。
であると言うのに、今次「防衛費大幅拡大宣言」による「規模ありき」や「結論ありき」は、上掲の通り非難批判されるのだから、笑わせてくれる。「規模」は未だしも、「防衛費大幅拡大」って「結論」は、とうの昔に出て居ろうが。
「規模ありき」且つ「結論ありき」であった「防衛費の対GDP比1%縛り」を「撤回している(と言うよりは、そんなモノは無かったかの如き扱いだが)」という点では、上掲毎日社説も東京社説も「評価すべき」かもしれない。
が、長年「規模ありき」且つ「結論ありき」であった「防衛費の対GDP比1%縛り」に賛同し続けてきた両紙が、今次「防衛費増額」を、「規模ありきだぁ!」「結論ありきだぁ!」と非難するのは、理解しがたい。
どうせ両紙のことだから、Jos某並みに「日本の防衛費は、少なければ少ない程良い。」ぐらいに思っているのだろうが、ならばその様に主張すべきであろうが。