• 巧遅は拙速に如かず。ー【朝日社説】安保文書改定 拙速では理解広がらぬ

  「拙速(せっそく)」ってぇと、普通は否定的な意味合いで使われる。「速いが拙い」と書くのだから、左様な意味で使われるのも無理は無い。
 
 だが、「兵は拙速」となると、肯定的な意味合いだ。「兵は拙速を尊ぶ」であり、タイトルにもした通り「巧遅は拙速に如かず(巧遅は拙速に及ばない=拙速の方が巧遅より良い)」とも言う。「兵法の要諦は、拙くても速いことであり、巧みでも遅いのは良くない。」と言う「教え」である(*1)。

 無論、「兵法の教え」にどれ程の普遍性・汎用性があるかには疑義の余地がある。なればこそ「兵が尊ぶ拙速」が「速い」よりも「拙い」が先に立つ否定的な意味で使われる、のであろう。

 下掲朝日社説もまた、「拙速」を否定的な意味で使っている。が・・・
 

  • <注記>
  • (*1) ロバートAハインラインのSF「宇宙の戦士 Starship Troopers」にも、同様な「教え」があったなぁ。「後になって最善の手を思い付くよりもあ、その場で何らかの手を打った方が良い。」だったかな。主人公が咄嗟に「30秒爆弾」を使うシーン。
  •  「30秒爆弾」とは、時限信管の手榴弾のような兵器で、敵の異星人語で「俺は30秒爆弾だぜ!俺は30秒爆弾だぜ!30、29、28・・・」とカウントダウンする(喋る)と言う。なかなかインパクとのある「SF兵器」だったので、良く覚えている。 

 

  • 【朝日社説】安保文書改定 拙速では理解広がらぬ

 

 

https://www.asahi.com/articles/DA3S15433812.html?iref=pc_rensai_long_16_article

 

2022年10月3日 5時00分

 

「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の初会合=2022年9月30日、首相官邸、上田幸一撮影

 

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 戦後日本の安全保障政策の大きな転換になりうる文書の改定が年末に迫っている。

 

 岸田首相が見直しを表明してから1年。専守防衛との整合性が問われる敵基地攻撃能力の保有については「あらゆる選択肢を検討」。バイデン米大統領に「相当な増額」を伝えた防衛費の水準については、内容、財源と「3点セット」で決める。この間の国会でも参院選でも、あいまいな説明に終始してきた。

 

 このまま期限が来たからといって、拙速に結論を出しては、世論の幅広い理解や納得につながらず、首相自身が掲げた「国民と共にある外交・安保」にももとる。透明性のある徹底した議論が不可欠だ。

 

 国家安全保障戦略など安保3文書の改定に向け、政府が「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の初会合を開いた。首相はあいさつで、省庁の縦割りを排した「総合的な防衛体制の強化」と、それを支える「経済・財政のあり方」について検討を求めた。

 

 自民、公明による与党協議も近く始まる見通しで、有識者会議では、敵基地攻撃能力の是非などは主要テーマにならないとされる。増税で賄うとなれば、国民負担が避けられない財源論議が大きな焦点になりそうだが、外交や経済を含む総合的な戦略の構築と、そのなかでの防衛力整備のあり方についての議論からまず始めるべきだ。

 

 政府が1~7月に計17回行った元政府関係者や学識者らとの意見交換の内容は、すべてが終わった9月にまとめて要旨が明らかにされた。今回の有識者会議では、原則として、その都度、議事要旨を、全体の終了後に、発言者名も付した議事録を、それぞれ公表するとした。

 

 透明性が高まるのは歓迎できるが、大切なのは議論の中身である。東アジアの安全保障環境は厳しさを増しており、防衛力向上の必要性は、多くの国民が感じることだろう。ただ、それが本当に日本の安全につながるのか、かえって地域の緊張を高めないか、いまの日本の国力に照らして持続可能か、については多角的な検討が必要だ。

 

 有識者会議が、政府の進めたい方向性にお墨付きを与えるだけの場になってはならない。活動期間は実質2カ月となりそうだが、集中して議論を尽くしてもらいたい。

 

 国の施策により多くの国民の支持を得たいのなら、反対意見にも正面から向き合い、納得を得る努力を避けてはならない。それを欠いたまま、いくら予算を増やし、装備を整えても、真に強い防衛力にはなるまい。きょうから始まる臨時国会で、首相の姿勢が厳しく問われる。

 

  • (2)「朝日が否定していると言うことは、我が国益に違いない。【経験則】」

 有り体に言って、章題にした「経験則」は、少なくとも「かなり乱暴な議論」である。仮に朝日新聞が、我が国に仇為す事を目的とした、「死ね死ね団(*1)」「ショッカー(*2)」(我ながら、喩えが古いね。)張りの「悪の組織」であり、我が国を弱体化し滅ぼそうと言う悪意に満ちていたとしても、全ての言動が「日本を弱体化し滅ぼそう」という意図の現れ、とは限るまい。

 第一、剣客商売の主人公・秋山小平の名科白にもある通り、「善を為そうとして悪を為し、悪を為そうとして善を為す」事もあるのが、人というモノ。従って、「朝日が否定・非難している」からと言って、それが直ちに「我が国益である」と即断するのは、「少なくともリスキー」である。

 ・・・とまあ、一般論としては言えるのだが、「理屈の上ではそうだけどさぁ。」と言う、感情論というか浪花節というか、「理外の理」が働くのは否めない。

 急いで付け加えよう。上掲朝日社説は、「私(ZERO)が当初予想したほどには、安保文書改定を批判も否定もしていない。」モノだった。安保文書改定に「慎重な議論」を求めるばかりで、改定の延期も延長にも触れず、否定すら(明確には)していない。私(ZERO)としては、「想定外」と言えそうなぐらい。

 従って、章題にした「経験則」に則ったとしても、「安保文書改定こそが、我が国益である。」と断じることは出来ず、精々が「早急な安保文書改定こそが、我が国益である。」としか、言い得ない。

 だが・・・「朝日新聞は、本当は/本心は、『安保文書改定の否定、ないし延期』を主張したいのだが、諸事情は流石にそんな状況に無いから、『慎重な議論を求める』に止めた/止まった。』という気がして、仕方ないんだが、如何であろうか。
 

  • <注記>
  • (*1) 特撮ヒーローモノ「レインボーマン」の敵役である悪の組織。「日本と日本人を弱体化させ、滅ぼすこと」を目的とした「反日団体」だった。チョウセンジンで構成されているかは、不明。 
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  • (*2) やはり特撮ヒーローモノ「仮面ライダー」の敵役である悪の組織。明示的な「反日団体」では無かったが、「人類の自由の敵」ってことになっていた。