• 「前例はない」かも知れないが、「まっとうな判決」であろうが。ー【沖縄タイムス社説】[工藤会トップ裁判]首謀と認めた異例の極刑


 私(ZERO)は、ヤクザってヤツを信用していないし、基本的に嫌いだ。ある種のピカレスクロマン(悪漢小説)の主人公となり、任侠映画なんてモノが結構作られていることは知っている。(見れば面白いのかも知れないが、見たことはないし、見ようとも思わない。)だがそんな英雄的というかヒロイックなヤクザなんてのは基本絵空事で、同じくピカレスクロマンの主人公である[義賊」、アルセーヌ・ルパン(三世じゃぁ、無いよ。(*1)
)や鼠小僧と同じぐらいに「非現実的な存在」だと思っている。

 であるならば、「特定危険指定暴力団」などと言う、結構な分類をされた工藤会なるヤクザの親分が「子分に指示した殺人の罪」で死刑判決を受けようと、全く「情状酌量の余地」は感じないのであるが、どうも沖縄タイムスは違うらしい。

 まあ、森羅万象皆我が師。異論異説異端は「思考の水平線を広げる」可能性がある。当該死刑判決に対する沖縄タイムス社説を、先ずはじっくりとっくり見ていこうではないか。
 

  • <注記>

 ルパン三世は結構好きだし、あれもピカレスクロマンの一種だが、彼は義賊となることは滅多に無い。私利私欲ないし趣味やロマン、或いはヒョッとして芸術として[盗み」をやっている。 



【沖縄タイムス社説】[工藤会トップ裁判]首謀と認めた異例の極刑

【沖縄タイムス社説】[工藤会トップ裁判]首謀と認めた異例の極刑

 

[工藤会トップ裁判]首謀と認め異例の極刑

2021年8月25日 06:57

 

【1】 直接証拠がなくても、間接証拠の積み重ねで暴力団トップの関与を認定した異例の判断だ。

 

【2】 一般市民を襲撃した四つの事件で、殺人などの罪に問われた特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)の総裁、野村悟被告に福岡地裁が死刑判決を言い渡した。検察側証人の信用性を認めて「首謀者として関与し責任は誠に重大だ」と、4事件全てで関与を認定したのだ。

 

【3】 1998年の元漁協組合長射殺や2012年の元福岡県警警部銃撃など4事件について、実行役の組員らに犯行を指示したとされ、殺人と組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)などの罪に問われた。

 

【4】 直接的な証拠がない中、裁判所がトップの関与をどう判断するかが注目されていた。

 

【5】 検察側はこれまで62回の公判で、元組員らの証言、状況証拠を積み重ねてきた。工藤会の上意下達の組織性が強固であることを踏まえ、「組織力や指揮命令系統を利用した」と断じた。

 

【6】 死刑適用の可否を判断する「永山基準」に沿えば、1人殺害での死刑判決は異例だ。 だが、判決は巨額の利益を継続的に得るために市民を殺害した射殺事件は、利欲性が高く、暴力団が計画的に実行している点で、極刑を選択するべきだとした。

 

【7】 ただ、死刑という量刑が妥当かどうか議論を呼ぶのは間違いない。死刑廃止論もあるだけに、なおさらだ。

 

■    ■

 

【8】 暴力を後ろ盾に一般市民を脅し、利益を得る行為は断じて許されない。

 

【9】 03年に、北九州市で暴力団追放運動のリーダーだった経営者の店舗に、工藤会系組員が手りゅう弾を投げ込み、従業員ら11人が負傷する事件が起きた。飲食店関係者らは巡回を強化。12年には、暴力団組員の立ち入りを禁止する「標章制度」が導入された。

 

【10】 不当な要求を断る店の従業員が切りつけられたり、ビルが放火されたりする事件が相次いだが、市民の暴力団追放運動は粘り強く続いた。工藤会は、暴力団対策法に基づく「特定危険指定暴力団」に全国で唯一指定されている。 

 

【11】 暴力団対策法や全国で成立した暴力団排除条例、地域の運動の広がりによって、関係者の経済活動が制限され、資金源が押さえられてきた。

 

【12】 指定暴力団のトップに死刑判決が言い渡されたのは、全国初のケースとみられる。警察が狙う工藤会壊滅だけでなく、全国の暴力団捜査への追い風になるものだ。

 

■    ■

 

【13】 警察庁のまとめによると、2020年末時点の全国の暴力団構成員や準構成員数は、前年比2300人減の2万5900人で16年連続して減少。工藤会もピーク時の730人から220人に減っているものの、解散の動きはない。

 

【14】 暴力団が地下に潜り、法の網をくぐる活動を強める可能性もある。

 

【15】 今回の死刑判決に、工藤会側が報復行動に出る動きへの警戒も欠かせない。警察には、市民に危険が及ばないよう警備を強化してもらいたい。

 

  • 3つの「編」で、言うことがバラバラではないか。

 さて、如何だろうか。

 全体は3つの「編」になっている。「■ ■」で区切られて、【パラグラフ1】~【パラグラフ7】が「前編」。【パラグラフ8】~【パラグラフ12】が「中編」。【パラグラフ13】~【パラグラフ15】が「後篇」を成している。

 順番に見ていこうか。先ず「前編」は、タイトルである「首謀と認めた異例の極刑」をガッチリしっかり受けていて、「今回の死刑判決が如何に異例か」を強調している、のだが・・・その「今回の死刑判決の異例さ」の根拠は、①「関連証拠の積み重ねである」【パラグラフ1】と②「”永山基準”では一人殺害は死刑に当たらない」【パラグラフ6】の2点ぐらいである。 


 随分と薄弱な根拠に立つ「今回死刑判決異例論」ではなかろうか。上記②「永山基準」ってのがどれ程偉いのか知らないが、【パラグラフ6】に記載ある通り「私利私欲性が高く、計画的に実行」というのは「極刑を選択するべき」充分な理由であろう。


 上記①「関連証拠の積み重ね」は、「直接証拠に比べて法的根拠として弱い」のは事実かも知れないが・・・どうも法理論上の空論と思えてならない。早い話が「屁理屈」だ。「関連証拠の積み重ね」であろうとも、「私利私欲性が高く、計画的に実行」が立証されていれば、そりゃ「極刑を選択するべき」と言うのは「常識的判断」とさえ言えそうだ。

 つまりは、上掲沖縄タイムス社説の主張する「工藤会親分に対する死刑判決の異例さ」は、タイトルにもした通り、「前例はない」のかも知れないが「常識的でまっとうな判断・判決」である、と私(ZERO)には思えるし、主張する。
 
 だが、今回死刑判決を「異例だ」として沖縄タイムスが非難するのは、議論としては理解する。私(ZERO)は同意しない、と言うだけだ。

 だが「前編」の最後【パラグラフ7】に至ると、有り体に言って「訳がわからない」。議論は別にあっても構わないさ。好きなだけ法理論でも何でも論じるが良かろう。だが、死刑廃止論が如何にかますびしかろうが、我が国に死刑制度が厳然としてある以上、死刑判決も死刑執行も「あって当然」であるし「無いというのは、不自然と言うより、違法である」というモノだ。
 況んや、私自身も、世論調査結果も、死刑制度を肯定していると言うのに、「死刑制度廃止論もあるから議論を呼びそうだ。」って、「だから、何?そんな議論は、あらゆる死刑判決の度に呼ばれるモノだろう」である。つまり、ここで「呼ばれる議論」には、大した意味が無い。

 で、だ。此処までが「前編」なんだが、「中編」に入ると・・・「軌道修正」というヤツなのだろうか、「前編」の「死刑判決異例論」はどっかへ吹っ飛んで、暴力団対策の歴史に触れられ、「中編」最後の【パラグラフ12】で、

1>  指定暴力団のトップに死刑判決が言い渡されたのは、全国初のケースとみられる(*1)
2> 警察が狙う工藤会壊滅だけでなく、
3> 全国の暴力団捜査への追い風になるものだ。


・・・コレって、今回の死刑判決を肯定し、賛美さえしているのではないか?「前編」で「異例だ!異例だ!!」と再三非難しておいて??

 ・・・ああ、そうか!判ったぞ!!逆なんだ。上記3>「全国の暴力団捜査への追い風になるものだ。と、非難している、の・か!?
 そうであれば、前編との整合性がとれ、矛盾も齟齬も生じない。警察が、暴力団を壊滅させるとは、国家権力の横暴だぁ!って主張。直接左様には表記表現されていないが、そう考えないと矛盾・齟齬が生じる。

 でまぁ、「警察が、暴力団を壊滅させるとは、国家権力の横暴だぁ!」って「裏主張」を想定すれば、「前編」と「中編」はナントカ辻褄が合うんだが・・・「後編」になるとそれも破綻する。

 「後編」はどう読んでも、「警察に対する要望」であり、「お願い」だ。ある意味「現状の警察の対応に対する非難批判」ではあるかも知れないが、「国家権力の横暴に対する批判」とは、これまた矛盾・齟齬が生じる。

4> 警察には、市民に対する危険が及ばないよう警備を強化してもらいたい。

ってのは、少なくとも一面「国家権力の強化依頼/介入要請」である。「国家権力の横暴に対する批判」との矛盾・齟齬は、明らかだろう。

 って訳で・・・「一本の社説を3つに分割して、3人の記者が別に書いて並べただけ、なんじゃぁ無いか?」と疑えるぐらいに3つの「編」が別のことを主張している、社説なのである。(「中編」を「前編」抜きで単独に読めば「今回死刑判決の肯定」だろう。)

 これで、沖縄タイムスの社説であり、沖縄タイムス紙の公式公的な主張であり、あろうことかあるまいことか「売り物」なのである。沖縄タイムス紙の読者は、斯様な同紙の公的公式な主張を、金を出して買っているのである。
 
 恥ずかしくないのかな。沖縄タイムス紙は。
 「恥を知らないのは、左翼の特徴」って説があるが、本当かも知れないな。

 

  • <注記>
  • (*1) 「前編」で「異例だ」「異例だ」と散々言っているくせに、ここに来て漸く「全国初のケースとみられる」かよ。 
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